読聴見聞録

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さらば、冒険小説の伝導者

 大晦日である。
 その今年最後の日に訃報を聞く。内藤陳。コメディアンである。ただ、コメディアンと言うよりは冒険小説・ハードボイルド紹介者としての功績の方が大きいだろう。
 数年前に直腸ガンを患って手術したというのは聞いていたが、食道ガンで亡くなったとのことなので、既に全身に転移していたのであろう。

 1980年代の冒険小説大ブームにおいて、この人の果たした役割はあまりにも大きい。当時あった「ザ・ベストセラー」という番組で内藤陳特集があり、その破天荒な生活っぷりと愛読の冒険小説を次々と紹介し、これが日本における冒険小説勃興の契機となった。特に仲間が「ジャック・ヒギンズ」の名前を出した時の

「バカヤロウ。ヒギンズなんて言うんじゃねぇ。ヒギンズ『様』と言え」

という一言は、日本におけるジャック・ヒギンズの位置を確立するセリフとなったと言っていいだろう。
でも一番驚いたのは、内藤陳の家からのそのそと小泉喜美子が出てきて、同棲しているというのがわかった事だったけど (^^;)。

内藤陳が月刊プレイボーイに連載した「読まずに死ねるか!」は、北上次郎の『冒険小説の時代』と共に、今なお冒険小説読みにとっては永遠のバイブルである。どれほどこの本に助けられたか判らない。
経営する日本冒険小説協会公認酒場の「深夜プラス1」にも行ったことがある。残念ながらその日は内藤陳は来なかったので会えなかったが、これも今年亡くなった俳優の原田芳雄が来ていたっけなぁ。

時は流れ、冒険小説ブームもめっきりと下火になり、刊行数も激減した。デズモンド・バグリィが死に、ギャビン・ライアルが死に、ディック・フランシスが死に、ジャック・ヒギンズは見る影もないほど落ちぶれ果てた。
ただ、冒険小説の日が消えたかというとそんなことはない。今年、感謝の年間ベストミステリを席巻した『ジェノサイド』は冒険小説の流れで語られる作品であるし、ここ数年のベストミステリの上位は冒険小説優勢が続いている。もう冒険小説はブームではなく、定着したと言える段階なのかもしれない。

内藤陳が死去したのは12月28日だったそうだが、29日に開催予定だった恒例の日本冒険小説協会の忘年会は予定通りに行われたとのこと。誰よりもその宴会を楽しみにしていた陳さんを偲び、ドンちゃんちゃん騒ぎで送ったそうだが、多分、陳さんは喜んだであろう。
ありがとう、内藤陳。さようなら、いつまでも安らかに。

というわけで、今年最後の更新。皆さま、良いお年を。

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