フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が新聞広告になった、と思いきや……。
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広告は「鬼面人をおどかす」のが常套ですから、びっくりさせられるのは慣れているとはいえ、きょう5日付け朝日新聞の全ページ広告にはうれしい驚きを感じました。私がもっとも好きな絵画のひとつフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が拡大されて載っていたからです。しかも、私の持っている、よく見ればひびだらけの印刷物より、はるかに精密に。17世紀オランダが生んだ傑作が「生まれ変わったのか」と、一瞬思ったほどです。
むろん、これは私の錯覚、いや冗談。よくよく見るまでもなく、鼻の高さ具合からして東洋人のお顔、日本人らしきタレントさんが「真珠の耳飾りの少女」そっくりに扮しています。東京・上野の東京都美術館で6月末に開幕する「マウリッツハイス美術館展」の前宣伝だったのです。芸能情報に疎い私には、このタレントが誰なのか分かりません。ページをめくるうちに回答記事を35ページの社会面に見つけました。女優の武井咲(えみ)さん(18)という方なのだそうです。
「耳飾りの少女」に日本人が扮してみる……これはいつぞやNHKBSで放送された「極上美の饗宴」からヒントを得たのかもしれません。その番組は写真家・篠山紀信さんが絵画そっくりに撮る、という趣向でした。モデルを替え、証明を替え、さまざまな試みをしているうちに、これぞ篠山版「耳飾りの少女」に選ばれたのは、奇しくもオランダの血を引く方だったのです。発想の面白さに加え、オチまで付いて「さすがNHK、低予算であろうBSでも手抜きはない」と、いたく感心したものでした。
写真どころか、映画からもヒントを得たのかもしれません。2003年制作「真珠の耳飾りの少女」(英=ルクセンブルク)には、今をときめく女優スカーレット・ヨハンソンが少女に扮しました。フェルメール家の小間使いになった主人公が、画家から「絵のモデルになってほしい」と頼まれ、それが画家の妻の嫉妬を招き……といったストーリーは、かなりの部分創作なのでしょうし、映画としては特段の傑作とも言えないでしょうが、何はともあれフェルメール好きの私には珠玉の一本となりました。
今回「耳飾りの少女」に扮した武井咲さんという女優さんを、私は全く知りません。知らないけれども、全ページ広告を見る限りは、本物の絵よりも親しみのもてる笑顔を浮かべているように、私には見えます(日本人が欧米人より日本人の美少女に親しみを感じるのは当たり前でしょうが……)。では、すぐにファンになったのか、と問われれば、答えは「保留」としか言いようがありません。
「真珠の耳飾りの少女」は、私にとっては「モナリザ」に並ぶ傑作です。「耳飾りの少女」に扮した限りは「極上美」を永遠に体現してほしい……勝手な言い草でしょうが、ゆめゆめ妖艶な大人の女にはなるな、と言いたいのです。少しトウが立つと、次々に忘れられる現代日本の芸能界において、清純無垢のままでいることは不可能に近いことでしょう。おそらくは、武井さんも「耳飾り少女」には似ても似つかない役柄を強いられるときが来ることでしょう。将来がっかりしないよう、まだファンにはなれない、といった気分です。
それと言うのも、映画版「耳飾りの少女」のS・ヨハンソンのその後の主演作を見ると、ベッドシーンあり、ヌードシーンあり。そしてプライバシーの交遊録などを見聞きしているうちに、私の「耳飾りの少女」は結局、絵画の中にしかいない、と気付かされたからです。
「美少女よ、永遠に清純であれ」と願うのは男のエゴと知りつつ、武井さんという魅力的な女優さんの行く末が気になる広告ではありました。開幕したら、必ず会いに行く、と心に誓いつつ。
「耳飾りの少女」に扮した女優さんに敬意を表して?わが家の花を再度……。
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