|
暗闇の中でぽつんと座り、祈るようなしぐさで目を閉じている女の子。
そっとふさがれた瞳、かすかに震える睫毛。
そして、今日も彼女は悲しそうな声で言う。
『どうか……どうか許してください。もう、私には止める事ができない。私には止められないのです。
滅べるべきは私達、立ち去るべきは私達。
この世界はあなた方子供達のものなのに。
待ち続けた永き刻の、その暗闇の冷たさがすべてを狂わせてしまった。
どうか……力なき私を許してください……』
しかし、今日も彼女の言葉を忘れてしまっていた。
「っつぅ……また、あの夢か」
頭を抑え、ベッドから起き上がる。
水が欲しいがここは俺の部屋で、昨日の夜に枕元に水を置く事もなかった。
ベッドから這い出して、1階までヨロヨロと下りてキッチンまで行く。
「こうとき、一人身っていうのは辛いよな」
現在、紫雲家には俺一人しかいない。
両親は既に死んでいるし、身寄りもなかった。
よく「自由でいいよな」と言われるが、そんな事はない。
だが、俺は慣れた孤独を悲痛に感じる事をせず、それよりも今日の夢について考えていた。
「あの子……どっかで見た事があるんだよな……覚えていないんだけど……いい思い出がなかったんだろうな」
たまに、だけど結構な回数見てきた”あの夢”を見るたびに体調を崩してしまう辺り、ロクな思い出がなかったのだろう。
「夢っていうのは、過去の出来事が元になるっていうしなぁ」
結構可愛い子だとは思うのだけれど、夢を見るたびに体調を崩していくうちにそう思ってしまう。
一人分の食事を用意し、倦怠感と一緒に口の中にそれを放り込む。
「さて、と。そろそろ学校に行くか」
一人暮らしの寂しさを紛らわすために、勝手に独り言が出てしまう。
そして、そこで気がついた。
「………………止まってるじゃねーか、時計っ!」
※ ※ ※
「あぁ、もう! どこにいるのよ、紫雲統夜って人は!」
なんとか大気圏突入し終えて街並みが見えてきたが、後ろからは相変わらず追っ手がついて着ている。
紫雲統夜という人の所に向かうように設定されているが、本当に辿り着くのか心配になってくる。
そう思っているとコンソールの一部が点滅し、それに合わせてアラートが鳴り響いた。
「え、何? 見つけたの?」
どうやらそうだったようで、ラフトクランズが眼下の風景の中で目立つ建物へと向かった。
※ ※ ※
「ねぇ、本当に大丈夫? 顔色悪いわよ」
「大丈夫です。いつもの事なんで」
神楽坂先生が本当に心配してくれているようで、何度もそう聞いてくれた。
「そう……でも、一度カウンセラーにみてもらった方がいいわよ」
「そうします……警報音?」
木星トカゲや機械獣などの襲撃に備えた警報音がけたたましく鳴りだした。
すると、背後から何かが”落ちてくる”ような気配がした。
振り向くと、スカイブルーの人型ロボットがこっちに突っ込んでくる所だった。
「な、なにあれ?!」
「なにやってんですか、神楽坂先生! 伏せて!」
ぼうっとしていた神楽坂先生を押し倒して、自分もその上に覆い被さった。
「う、うぅぅ……助かった、のか? くそ、いったい何が落ちてきたんだ……」
落ちてきた衝撃で巻き上がった砂煙で視界が悪くなってしまい、何が起きているのか分からなかった。
その砂煙が落ち着いてくると、そこにあるモノが視認できるようになる。
そして驚いた。
そこにあったのは蒼い騎士の姿だった。
「な、なんだ……うわっ!?」
コックピットと思しき部分が上下に展開すると、中から人の声が聞こえる。
「人……? あんたたち、軍の人か!? なんだってこんなところに落ちてくるんだよ! こっちはもう少しで死ぬところだったんだぞ!」
「ご、ごめんなさい。でも、私達もわざとやった訳ではないのよ」
「お、女の子?」
黒髪の少女が中から出て来た。
とてつもなく、魅力的な女の子だった。利発そうな、だけど優しそうな人の子。
その姿に見とれて「あの……」と女の子から声を掛けられて我にかえった。
「紫雲統夜さん……ですか?」
「なんで俺の名前を!?」
「貴方なんですね! 貴方を探していたんです!」
女の子が転がり落ちるように出てくると、抱きつくように俺の両手を握りに来た。
「お願い、私と一緒にラフトクランズに乗って! 私だけでは、どうにもならないの」
さっきとは違った意味で呆けた。
「……は? いきなり何を……」
「この機体は、絶対に壊すわけには行かないの。でも、私だけじゃ動かすのが精一杯なんです。だから、私と一緒に……」
「そ、それに乗って戦えていうのか!? 俺に?! いきなり落ちてきといて、その上訳の分からないことを言わないでくれ! なんで俺がそんな事をしなくちゃならないんだ!」
「貴方じゃないと駄目なんです!」
「無茶言わないでくれ! 車すら運転したことないっていうのに、こんなもんい乗れる訳がないだろ。その上戦えって? 何の冗談だよ」
「大丈夫です。このラフトクランズなら、貴方は戦えます。私がサポートします。わかるんです、私」
大変だ、電波系とかいう奴だ。
だが、電波さんよりもやっかいなのが来ていた。
木星トカゲだ。
「なっ、こっちにくる!?」
「お願いします、統夜さん!」
「そんな事出来るか!」
すると、彼女は「怖いんですか?」とか言ってきた。
「そ、そうだよ、怖いよ! 悪いか? だけど、そういう問題じゃないだろ! 出来るならやってるよ!」
「じゃあ、お願いします」
「…………へ?」
いきなり女の子にコックピットの中に引っ張られてしまった。
「う、うわあ!」
それだけならまだしも、コックピットのハッチを閉められてしまう。
「凄い……サイトロン・コントロールのリンゲージ率が、こんなに高くなるなんて……これならいけます!」
「無理だよ! 話を聞いてくれ!」
俺が座らせられた座席の後ろにある座席でコチャコチャとやってる女の子に叫ぶ。
「あー、もう! やる気があれば十分です!」
「やる気でどうにかなる……か……?」
何故か、前にここにいた事があるような気がした。
それどころか――
「あれ……なんで? カティア・グリニャール……君の名前? なんでこんな事が分かるんだよ、俺」
「そうです、カティアです! とにかく、動きを考えながら手足を動かしてください。 後は私がフォローします!」
彼女は凄く嬉しそうにそう言ったが
「考えろって言っても……うわっ!」
いつのまにか木星トカゲが接近して、攻撃してきた。
シートベルトをつけていないので、座席から放り投げだされる。
ハッチが閉まっていなかったら、今頃死んでいた。
「くそっ、こうなりゃヤケだ。 どうなっても知らないぞ!」
座席に座りなおし、両手でバーのようなモノを握り締め、立ち上がるイメージを浮かべる。
「いけよ、動けぇぇぇぇ!」
駆動音と共に、重力を受けて自分が、ラフトクランズが立ち上がるのを実感する。
「そうよ、統夜! まずは目の前の敵を!」
「ぶ、武器は? どうすりゃいい?」
「まかせて! エクストラクターの出力は十分、貴方と一緒ならコントロールしきれる! オルゴン・クラウドを起動します……攻撃してください!」
そのとき、頭の中にこの機体の情報が流れ込んできた。
俺はその中から武器の項目を選び、そこからさらにオルゴン・ソードの使い方を引き出す。
「やれっていうなら……やってやるさっ!」
ラフトクランズの右手に持たせたオルゴン・ソードを両手で振り上げ、そのままいっきに木星トカゲに振り下ろす。
木星トカゲは真っ二つになって、その残骸を残すだけだった。
「や……やった……俺が?」
「そうよ、統夜。貴方がやったの。ほら、次が来るわ」
「い、行くぞ? 行くからな!」
俺は勢いに任せ、数機残る木星トカゲに突撃をかけた。
「ふぅ、ふぅ……やっと終わった……」
「お疲れ様です、統夜」
大した損害もなく木星トカゲとの戦いを終えただけでなく、後からやってきたあしゅら男爵一味をも撃退する事に成功した。
『おーい、そこのロボット。大丈夫かー?』
一段落したところで、一緒に戦っていたロボットから通信が来た。
「たしか……マジンガーZとかいうロボットか」
「マジンガーZ? とりあえず通信開きますね」
頷き返すと、サブモニタにクラスで何度か見かけた顔が映った。
『あれ……お前、紫雲じゃねーか?』
『え! 紫雲君ってウチのクラスの紫雲統夜君?』
陣代高校の有名人、兜甲児と弓さやかだった。
『どうしてお前がロボットのパイロットやってるんだよ』
「俺が聞きたいなぁ、それは」
『お前、そのままだと連邦軍にひっ捕まるぞ』
突然 兜にそう言われて仰天する。
「と、統夜! 連邦から投降命令が来てます!」
「いぃ?!」
『連中、木星トカゲの事で躍起になってるからな。大方、ザフトか木星トカゲの新兵器とでも思ったんだろ』
「俺はナチュラルだぞ!?」
『そんな事は関係ないさ。最近もよく光子力研究所に徴兵命令が来てる。無駄に敏感になってるな。っと、弓博士だ』
『二人とも、よくやってくれた。それで甲児君、そのロボットは?』
兜側から中年の男性の声がした。
「俺は味方です!」
そう切り出して、今までの経緯を説明する。
『ふむ……光子力研究所に来るかい? 一番いい選択肢だと思う』
「他に選択肢は……」
「ないみたいですね」
|
久しぶりのSSきましたね!!
また楽しみにしています
2010/10/4(月) 午前 7:36 [ 映姫 ]