ウチの口調
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毎年の事なので、言われても「ああ、やっぱりか」と思うのだが、言われたくはない事はある。 |
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毎年の事なので、言われても「ああ、やっぱりか」と思うのだが、言われたくはない事はある。 |
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中学時代、私には友達がいなかった。
いや、できなかった、という方が正しいのか。 私、大崖香澄は引っ込み思案なところがあり、クラスの輪に入れなかった。 そもそも、クラスの輪に入れてもらえなかったというか。 それだけ聞いたらいじめかと思う人もいるかもしれないが、そうではないし、原因もわかっている。 6歳のとき、私は事故に遭った。 バスとトラックの衝突事故だ。 その事故は、割れたガラスでバスに乗っていた私に傷を残した。 こう、顔を斜めにばっさりと。 他にも多くの傷をつけた。 傷だけじゃない。 顔の筋肉もやられてしまい、上手く表情が作れなくなっていた。 それが原因で私はよくからかわれた。 中学校になってからは、周りが大人になった事もあって、からかわれることはなくなったが、それでも彼らは近づいてこなかった。 この傷がなければ、私の生活はよかったと思う。 フランス人の母親譲りで、顔は整っている方だし、プロポーションや長い髪にもそれなりに自信がある。 「傷がなければ喜んで付き合う」とは、初恋の子の弁だ。 もちろん振られてしまったが。
金曜日の入学式を終え、土日をはさんで月曜日。
「いや、だからさ。 君なら絶対できるって!」私はとあるゴタゴタに巻き込まれた。 「でも……その……私……」 ゴタゴタの中心は私の隣の席、高校生とは思えない程小柄な少女がクラスの連中から根拠のない励ましを受けている。 高校、しかも選択授業の割合が多く、クラスにいることが少ない総合学科の白翼高校にも、委員長をはじめとする学級委員が必要になる。
「どうみたって一番落ち着いてるし、倉井さんが一番あってるって」
まぁ、要するに責任の押し付け合いだ。「無理です! 私……、そんなことできません!」
担任の北神先生は教室の隅で昼寝をしている。
(それでいいの?)無論、私の他にもこのゴタゴタをよく思っていない人間はいるようだ。 北神先生の妹だと言っていた琴音さんやその友達らしい男の子二人は眉をひそめ、不満を顔に出していた。 私もこの状況はよく思っていない。 でも、高校生活の最初に悪い印象を残したくない気持ちがある。 私の中の私が問いかける。
その質問が、その意図があまりにも気に入らなかった。
『貴女なら彼女を助けるわよね?』と暗に意味をしているのは明白だからだ。倉井さんは、どこか守ってあげたくなるような娘だった。
小動物みたいに小柄で、かわいい目をしている。
教室が気まずい沈黙に包まれる。そんな彼女を放っておくのは、間違っていると思う。 高校デビューに失敗したくない気持ちと守ってあげたい気持ちの板ばさみで混乱していた私は、思わず手を机に叩き付けて「いいわけないでしょ!」と叫び、立ち上がった。 「大崖さん? どうしたの?」 「え? え……え?」 自分でも何をやったのか、よくわからなかった。
ただ、倉井さんの困ってる顔を見るのが辛かっただけなのだ。
それがどうして、こんなことになってしまったのか。「ひょっとして、大崖さんがやってくれるの?」 「ええ?!」 思わず驚くが、他のクラスメイトたちはそれでもいいらしい。 「やってくれるなら、別に構わねーよ」 「そうだな。 大崖さん、しっかりしてそうだし」 (どーしよー! 矛先がこっちに向かってきたよー!) 冷静に自分がおかれた状況を分析しようとするが、どうやっても頭はテンパったまま……というか、素の自分に戻ってる。 だから、気がついたときには 「わかった。 やる」 なんて言っていた。 (ナニ言ってるのよー!!) 頭の中の私を尻目に、私はあろうことか、さらに恐ろしいことを言っていた。 「こんな一方的に決められた学級委員にまとめてもらうのも癪。 虐めじゃない、コレ」 (なんで自分が自分に虐められてるのよー!) ああ、表情が表に出てこれない、この顔の傷をこれほどまで憎いと思ったことはあっただろうか。 いや、ない。 (ああ、終わっちゃった。 私の高校生活、終わっちゃった) まだ表情が作れる私の心の顔は、涙でくしゃくしゃになっていた。 「……そうよね。 ちょっと酷かった」 「俺も。 ごめんな、倉井さん」 なんと、さっきまで倉井さんに委員長を押し付けようとしていた彼らが謝罪の言葉を述べているではないか。 「大崖さんも、注意してくれてありがとう」 深々と頭を下げられて、逆にこっちがすまない気持ちになってしまった。 「いい。 わかってくれれば、それでいい」 ただ、無事にゴタゴタが片付いたのには、ほっとした。 「やっぱり、クラス委員長は大崖さんがやるべきよね」 ……え? 「そうだな。 期待してるぜ、大崖さん!」 …………え、え? 「なにか面白いことになってきたな」 琴音さんの隣に座っていた男の子が立ち上がってこちらに歩いてきた。 「よし、君が委員長やるなら、僕――いや、俺が副委員長をやろう」 わざわざ一人称を言い直しつつ、彼はそんな事を言い出した。 「片菜がやるなら、私と迅君は書記をやるわ。 他にやりたい人がいなかったら、だけど」 今度は琴音さんだ。 彼女の立候補に異議を出す人はいなかった。
片菜君を含めた三人は、花音先生の知り合いらしいし、そもそも、やろうと思った人はいないらしい。
だが、問題なのは私が学級委員長をやる、ということだ。「わ、私!」 声に出したが、左手を掴まれて思わずそちらを見た。 手を掴んだのは倉井さんだった。
彼女は光の宿っていない瞳を精一杯輝かせてこちらを見ていた。
そして一言「よろしくね、大崖さん」と笑いながら言った。こうして、私は一年四組の学級委員長に任命されることになった。 |
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開設日: 2007/6/2(土)