【温泉旅行】<1>
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佐伯×久世の家族旅行編です。 箱根の温泉に出掛ける、佐伯一家と久世+悠里。おだやかな休日になる筈が。 本編一覧はこちら イラストはあずさんより強奪しました! 遠慮がちに鳴らされた、ドアチャイムに、俺はすぐさまドアを開いた。 俺の家は、私鉄の駅にほど近い寂れた昔ながらの商店街の路地を入ったところにある。 年末の夜にこんな場所を訪ねてくるのは、新聞の集金くらいなものだろう。 「はい」 「だから、確認してからドア開けろって云っただろう?」 開いたドアから、長身を潜り込ませながら、目の前で文句を垂れた美貌の主は、俺の同僚兼恋人・佐伯英次だ。 「俺がせっかく付けたドアホンはどうした?」 「あのな、こんないかにもなデカイおっさんに、何の危険があるって云うんだ?」 身長こそ佐伯より低いが、俺だって、普通の男よりは鍛え上げた、でかいガタイを誇っている。一体何に警戒しろと云うんだ? アホらしい。 「あのな。宅配便を装った男に刺される奥さんがいる昨今だぞ。お前だって、出会い頭に刺されたら、どうしようもないだろう」 「それを云ったら、商店街だって危ないだろうが」 戸越銀座なんぞというじじばばだらけの商店街に通り魔が出たのだって、数年も前と云うわけでは無い。 そんなことに警戒してたら、それこそ、買い物だって行けやしない。 「第一お前、今年は家族サービスに努める正月じゃなかったのかよ?」 例の耐震偽装事件から結構厳しい建築業界だが、やっと持ち直してきた矢先の鉄鋼不況。 原材料の高騰も辛かったが、供給がなくなるかもしれないと云う不安よりはマシだ。 バブルがはじけて以来、十数年。常に二十四時間戦ってきた、サラリーマン諸氏の残業地獄が見直されることになったのは、喜ばしいが、それも、残業代と光熱費をケチる会社の戦略の一つだと思うと物悲しい。 お陰で、というべきか、今年の正月は、何と九連休という何処の夏のバカンスだ?と疑わしい大型休暇がぽんと手に入った。 佐伯も俺も、割と堅実派だ。ちゃんと蓄えもある。少しではあるが、ボーナスも出た。 というわけで、今年は、親子水入らずで、温泉旅行を計画していた筈だ。俺の家になんぞ来ている暇などある訳が無い。 「母さんが、お前が来ないって云ったら、連れて来いってごねだしたんだ。俺を助けると思って、一緒に行ってくれ」 佐伯が弱りきった顔で頭を下げた。 「何で? 家族水入らずじゃ無かったのかよ?」 「あの人、お前はお気に入りだからな。俺や兄貴なんかよりも、お前や悠里がいる方がいいらしい」 悠里というのは、佐伯の兄貴の婚約者で、ゲイの俺なんかが見ても、ものすごく可愛らしい高校生だ。確かに、でかく可愛くなくなった息子と出掛けるよりも、楽しいだろう。 「頼むよ。もう先に行って、てぐすね引いて待ってるんだぞ」 困惑した表情を張り付かせて、俺の様子を伺っている佐伯は、そんな姿さえサマになっているのが嫌味なくらいだ。しかも、俺はコイツに弱い。 「仕方ねぇな」 本当に渋々と云った風を装って、俺が承知すると、佐伯はぱっと顔を輝かせた。 「着替えは、どれにする? その間に、靴磨いておこうか?」 「この間、お前のお母さんが買ってくれた、茶色のセーターあっただろう。あれと、下はジーンズでもいいか。温泉だろ?」 佐伯は俺の気が変わらないうちに。とでも思っているのか、さっさと部屋へと上がりこみ、押入れの中から、俺が云った着替えをいそいそと用意する。 総務の仕事柄、出張が多い俺の旅行用バッグは、常に目立つところに置いてある。その中に慣れた手つきで、数枚の着替えと必要な物品を詰めこんで、着替えると、旅行準備は完成だ。 「表に車、待たせてあるから」 いやに手回しのいい佐伯に呆れながら外へ出ると、そこには八人乗りの落ち着いたエンジ色のエルグランドがある。 「おはようございます」 助手席から顔を出したのは、今日も元気一杯の美少女だ。 「おはよう」 正直、明るくて真っ直ぐな悠里は、まぶしすぎて苦手だが、そうも云ってはいられない。 乗り込むと、そこには最後尾のシートで、ぐったりとなった佐伯兄と弟の姿がある。 「いい? 久世くん。出るわよ」 「待ってくれ。母さん。シートベルトするから!」 運転席から後ろを振り向いた母親に、佐伯が慌てて俺にシートベルトを掛けさせた。 「じゃ、ここで休憩ね」 「はい。おばさま。ソフトクリーム食べます?」 「それは、悠里ちゃんだけでいいわ。私にはコーヒーをちょうだい」 「はい」 のんびりとした会話を繰り広げる女性陣を置いて、俺はほうほうの体で車を降りた。 俺の家から、環八通って東名に乗り、海老名のサービスエリアまで、約一時間の道のりは、平日とはいえ、素晴らしい速度だ。 運転の方も素晴らしく荒い。 佐伯三兄弟は、共に吐きそうな顔をして、トイレに走っていった。 俺も吐くまでには至らないが、長時間ジェットコースターに乗ったような感じで、頭の芯がふらふらする。 サスペンションのいい筈の高級ステーションワゴンでの、この運転は相当なもんだ。 外のベンチで休んでいると、横あいからすっと暖かい缶コーヒーが差し出される。顔を上げると、佐伯には負けるものの、年を重ねてもきりっとした美貌の佐伯の母親がいた。 「来るんじゃなかったって顔してるわよ」 「いえ、そんな…」 ちょっとだけ思ったことは事実だ。どうして、こう仕事の出来そうなタイプの女性は勘が鋭いのだろう。 「あの、佐伯のお父さんは?」 家族旅行の筈だが、佐伯父の姿は無い。 「同じ病院だもの。葬式か結婚式でもない限り、二人して休みなんか取れないわよ。医者はコンビニ並みに二十四時間営業だからね」 昨今、若い医者が続かないと聞いたことはあるが、やはりすごいらしい。 「あの、え〜と、おば、いえ、お母さんは、身体は大丈夫なんですか?」 「う〜ん、堅いなぁ」 「え?」 「今、『おばさん』って云い掛けて、『お母さん』って訂正したでしょ?」 う、やはり不味かったか。総務部なんて、女性の多い職場で働いてるお陰で、女性の扱いには慣れているつもりではいたんだが。 「『香澄おばさん』くらいでいいわよ。やっぱり余所の人を『お母さん』って呼ぶの抵抗あるでしょ? 本当のお母さんにも悪いし」 まったく、敵わないな。 「『東工業高校』ならうちの病院からも近いし、実家だってそのあたりでしょ? でも一人暮らししてるのは、やっぱりその所為かしら」 俺がゲイだということが原因かと問われれば、その通りだ。実際はもっと複雑だったのだが、そこまで云う気は今のところ無い。 「まぁ、その通りで。高校のときにばれまして、うちを追い出されたんですよ。うちはお堅い教師一家だったんで」 「ふ〜ん。こんなにいい子なのに、もったいないな。名前、隆大くんだっけ? そう呼んでもいい?」 「別に呼び捨てでいいですよ。あ、でも」 いくら勘当されたとは云え、母親や父親と同じように『隆大』と呼ばれるのには抵抗がある。 「ヒロって呼んでもらえますか? 知ってる奴は、みんなそう呼ぶんです」 「ヒロか。いい名前ね」 にっこりと香澄おばさんが笑った。それは、やはり俺が弱い佐伯の顔に似ていて、俺は思わず頬が緩むのを抑えきれない。 「久世ぇ。お前、ナニ母さんに懐いてんだよ」 まだ幾分口調が廻らないらしい佐伯が、俺の首にしがみついて来た。 「情け無いわね。あんたそれでも私の息子?」 「母さんの運転に平気な奴なんかいねーよ!」 佐伯の言葉に、後ろを振り向くと、佐伯弟はぐったりとそこにうんこ座りしていたし、青くなった顔の佐伯兄は、悠里に汗など拭いてもらっている。 「香澄おばさんは、勤務の具合はどうだったんですか? 俺、さっきの答え、聞いてませんよ」 「ああ。夜勤明けだけど、平気よぉ。後一時間も掛からないもの」 どうやら、あの運転は、自分の意識が持つ間に、箱根へ着こうと云うつもりもあったらしい。 「じゃ、運転は俺が代わりますよ。ゆっくり休んでください」 最近は滅多に乗らないものの、仲間内で出掛ける時には、いつもワゴン車だ。箱根あたりならば、道場の合宿で何度か行ったこともあるし、大丈夫だろう。 「ヒロは優しいのね。うちの馬鹿息子どもとは大違い!」 すっかりご機嫌になった香澄おばさんと、これ以上あの運転に晒されずに済むと云う安堵感で、当の馬鹿息子三人は、ほっと胸をなでおろしていた。佐伯弟なんぞは俺を拝む真似までしている。 「お前、ゲイの割には女の扱い上手いよな」 「まぁな」 佐伯の言葉に、お前たちが下手すぎるだけだと出そうになったが、それは喉の奥に飲み込んだ。家族だからこその遠慮の無さも、そこにあるのが判っていたから。 |
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【温泉旅行】<2>
[http://blogs.yahoo.co.jp/akira_4610/53497221.html/ 目次へ戻る] 「ここですか?」 ナビのままに着いた旅館は、かなり古い建物だが、よく手入れのなされた所謂老舗旅館であることが一目で見て取れた。 「ええ、そうよ。離れをとってあるの」 こんな旅館で離れ。
2008/11/29(土) 午後 4:51 [ 【酒場のたわごと】本館 ]


旅行ですか…ふふふf…(怖ッ
浴衣ですか…温泉ですか…
なんか色々妄想できますよね〜
2008/11/24(月) 午前 10:36 [ 松 螢 ]
もちのろんっすよ!
温泉といえば浴衣!ふふふふ。
2008/11/24(月) 午後 8:24
あはははは!お母さん、強そうですねぇ〜〜ww
この先がどうなることやら!楽しみ♪
2008/11/28(金) 午前 4:01
か、家族旅行。
BLじゃあ、滅多にないシチュじゃないかしらん。(笑)
部屋割りとかビミョーな感じで何から何まで楽しみ〜〜。
ときに、文字が灰色〜〜。うるる。年寄りには目に痛いんですが。
2008/11/28(金) 午後 6:57
りずむねーさん>二つリク貰ってて、お母さんの話と、温泉旅行というネタをくっつけてみました。
ははは。うちの女性陣が強いのはいつものこと。
2008/11/28(金) 午後 9:36
おふくさん>
そうだよね、二人で旅行でも良かった筈なんだけど、ちょっと家族がらみの話を書いてみたくて。
うん、文字見づらいわ。ヤフーって微妙な色多いよね。
2008/11/28(金) 午後 9:38
温泉に母公認で行く。珍しいですよ!どうなるの?あ、ポチ
2008/12/6(土) 午後 10:29 [ アド ]
母公認は珍しいですかねぇ? 温泉ラブラブもいいんですが、ちょっとひと波乱欲しかったんで。
2008/12/7(日) 午後 1:17
うお、佐伯がものすごくちゃんと佐伯だ!!色白ハンサムだ♪♪困ってる久世がかわいいなあ。
ごち♪っす!
2008/12/15(月) 午後 11:54 [ shu**ian_wu**ng ]
うふふふ。強奪の甲斐があったでしょ?
こんなイラストつけてもらえるなんて、幸せ〜〜〜〜
2008/12/16(火) 午後 7:35