全体表示

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全8ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8]

[ 次のページ ]

私は父性を持ちたい/できればムカつかずに生きたい・田口ランディ

イメージ 1
できできればムカつかずに生きたい
田口ランディ著
晶文社発行
2000年10月20日発行
 
 
 
 
 
 
こころに残る一節
私は父性を持ちたい
 
 
 2歳8ヵ月になる娘がテレビアニメを観るので、必然的にいっしょに観てしまう。
 
 最近になって「ドラえもん」をしみじみと観て、憤慨してしまった。
 私は子供の時代に「ドラえもん」を観ないで育った。小学校1年の頃から少女マンガフリークだった私は「ドラえもん」を男の子のマンガとして認識し、ちょっとバカにしていたのだ。
 
 愛も恋もテーマにならない漫画に興味がなかった。やっぱり舞台はアメリカで、金髪の女の子が主人公じゃなくちゃダメよ、と思っていた。
 だから、「ドラえもん」のおおよその筋書きは知っているものの、その内容をきちんと理解していなかったのだ。
 
 ドラえもんは未来からやってきたネコ型ロボットで、のび太くんの家に住んでいる。四次元型ポケットなるポケットから次々と未来の道具を取り出して、のび太君の願いをかなえてくれる。というのがドラマの設定である。
 
 この「ドラえもん」を子供と観てびっくりしたのは、ドラえもんの並外れた母性である。ドラマの中でドラえもんの役割は主にのび太くんの乳母である。ドラえもんというからオスだと思うのだけど、やっているのは母親の代理。それも超甘やかし、過保護の乳母だ。
 なにしろ、のび太くんが多少悪いことをしても、(たとえばドラえもんにきた手紙を勝手に開けて、ダイレクトメールで品物を未来デパートに注文したりしても)ドラえもんは怒らないのだ。
「しようがないなあ、のび太くんは・・・」
 と言って許してくれる。そして、のび太くんがしでかしたトラブルは全部ドラえもんが肩代わりして解決してくれる。のび太くんは
「ねえ、ドラえもん助けてよお」
と甘えていればいいのである。
 
 私はあきれ果てて娘に怒鳴った。
「あなたね、どんなに心が優しかろうと、こんな甘えた男を亭主にしちゃ絶対にダメだからね」
 もちろん娘はきょとんとしておった。それにしても、この母性賛歌のアニメを30年にわたって子供たちが観てきたのかあ、と思うとなんだか呆然となった。うーんさすがに母性原理日本の社会のアニメだなあ、と感心すらしてしまったのだ。
 
 私はドラえもんを観ていると、だんだん腹がたってくる。テレビを観ながら文句を言っているので、
「おかあたん、怒っちゃダメだよ」
 と娘に諭されている。
「お母さんがもしのび太くんのお母さんだったなら、絶対にこんなおせっかいロボットを居候させたりしないわよ。これじゃ子供がいつまでも自立できないじゃないの。自分の力で何もできない子供になっちゃうじゃないの」
 とはいえ娘は「ドラえもん」が大好きで「みんなみんなかなえてくれる」とテーマソングを元気で歌っていたのである。
(以下略)
 
■一言メモ
 三十数年前、ぼくは幼い息子といっしょに「ドラえもん」を観て喜んでいた。いささかの疑問も持たなかった。ぼくが母性親父だったからだろうか。ランディさんの鋭い感覚には脱帽だった。
 この本は、ほんとうに面白かった、一気に読んでしまった。
 
 

閉じる トラックバック

愚痴は心の垢/クレンズの魔法・田口ランディ

イメージ 1クレンズの魔法
田口ランディ著
海龍社発行
H 21.5.8発行
 
 
こころに残る一節
愚痴は心の垢
 
 
 
 以前に、認知症のご老人の取材をしていたとき、認知症の方はなぜか「好きな人」のことは忘れてしまい、どちらかというと「嫌いな人」のことをいつまでも覚えていることに気がつきました。
 人間の脳というのは、危険を回避するためにトラブルを記憶するようにできているらしいのです。人の脳は「イヤだ」「困った」ということを、楽しかったことよりも長く保存してしまうのです。となれば、イヤな出来事をぐじぐじと覚えているのも、将来の危険回避のためなのかもしれません。
 とくに今のようにインターネットや携帯電話で、他の人の言葉が自分の心に侵入しやすくなっていると、他愛のない一言に傷ついて、それを思い悩んでいる時間が増えてきます。
 
 はてさて、イヤなことが気になって忘れられない時はどうしたらいいものか。知人の禅師板橋興宗さんに相談してみました。
「気になるのなら、気にするしかないでしょう。ムリに締め出そうとするとかえって、気になります」
「でも、気にし始めるといつまでも気になってしまいます」
「それは、あなたが同じことを考え続けるからです。そういうのを愚痴というんですよ。1回、2回はいい。でも、3回目にそれを考えたら、もはや愚痴です。愚痴はなんの役にも立ちません」
 
 お坊さんは、愚痴でもいいそうになったら歌でも歌いなさいと言います。歌が苦手なら「ありかどうさん」でもなんでもいいから、別の言葉をつぶやいて考えを頭から締め出しなさい。いったん締め出せば執着が消える。ずっと考えて執着するから、それがいつしか悩みになるのだ、と。
 
 お坊さんは、「クレンズの魔法」と同じことを教えてくれたのです。やはりそうかと思いました。
 それで私は、イヤなことは2回まで思いだす。それ以上考えそうになったら、「ありがとさん 、ありがとさん」と声を出していうのです。節回しをつけて「ありがとさん、ったら 、ありがとさん」
 執着から離れることは、たぶん死ぬまでムケでしょう。
 だから生きている間は、「クレンズの魔法」を使うことに決めたのです。
 
◆一言メモ
 ぼくも、いつも昔の不快な出来事を思い出しては、ぐじぐじ思い悩んでいる。これからは、「ありがとさん 、ありがとさん」と声を出してみようと思った。 

閉じる トラックバック

12月25日の夜/だれも知らない小さな話・佐藤さとる

イメージ 1だれも知らない小さな話
佐藤さとる著
偕成社発行
2003年1月発行
 
 
 
こころに残る一節
12月25日の夜
 
 
 
 
 
 私がまだ幼かった昭和初期の数年間、なぜか12月25日の夜、我が家ではクリスマス子供会が開かれた。だいたいが、八畳間と六畳間の間に通路のような三畳間があるという、平屋のせまい借家だったからおおげさな子供会など開けるわけがない。しかし、テレビはおろか、ラジオもそれほど普及していない時代のことで、近所の子供たちはその日のくるのを待ちわびたようである。
 
 ただでさえ忙しい年末に、そんな余計なことをするのはさぞ大変だったろうと思うのだが、両親とも気にしている様子はなかった。母は当日の朝になると、私の2人の姉に手伝わせて、あれこれと準備を始める。間仕切りのふすまをとりはらい、床の間の前に、真っ白なシーツをかけた演台、実はリンゴ箱を重ねたものを据え、その上に小さな鉢植のヒイラギを置いた。その枝や葉には雪に見立てた綿を載せる。これを母はクリスマス・ツリーと呼んだ。
 
 やがて日が落ちると、子供たちが集まってくる。近所の子ばかりではない。顔も知らない隣町の子までやってくる。そういう子は玄関でもじもじしているが、母は平気でみんな迎えいれてしまう。おかげで、銘々に配るお菓子もたりなくなるし、廊下から台所の間にまで子供が座ってしまい、やむなくトイレは隣家のを借りる始末である。
 
 こうして始まる子供会だが、たいしたことがあるわけではない。子供たちはこもごも演台の前に立ち、歌をうたったりなぞなぞを問いかけたりする。なかには手品のタネを用意してきて、あっといわせる芸達者もいる。我が家にはオルガンがあったので、元小学校教師の母が伴奏をつけ、だれが司会をするでもなく、わいわいとさわいだあと、和服姿の父が登場して講話をする。どんな話だったか覚えていないが、これが堂にいっていて、みんなをひきつけた。そして最後にお楽しみの福引きがあり、めでたく会はお開きとなる。
 
 さて、こうして書いてくると、我が家は熱心なクリスチャンと思われるかもしれないが、実は全く縁がない。父は海軍の下級将校で、そのころは今でいう広報部のようなところに勤務していた。そこで講演会や活動写真の会を担当し、チームを率いてはあちこちへ出かけていたという。講演はもちろん、ときには映画説明の弁士も務めたそうだから、こんなことには慣れていたのだろう。母も元教員で子供のあつかいはお手のものだった。
 
 それにしても、この12月25日夜のクリスマス子供会は、夢のような不思議な楽しさに満ちた会だった。
 
 まもなく日本は動乱の時代にはいり、子供会も開かれなくなったまま時がたった。やがて父は大戦で戦死、日本は敗戦となる。残された家族が必死で戦後の混乱期をくぐり抜けるうちに、そんな記憶はどこかへふっとんでしまっていたが、後年ふと思い出して母にいったことがある。
「クリスマスの会なら、24日のイブの夜だろうに。それを25日にしたっていうのは、いかにもにわかクリスチャンらしいな」
 すると母ははじめて打ち明けた。
「あれはね、ほんとうはクリスマスなんてどうでもいいんですよ。12月25日は、私とお父さんの結婚記念日だったんだから」
 そう答えて母は笑った。
 (中略)
 その母もすでにこの世を去った。無類のお人好しのくせに、不遇に動じない気の強さも持っていた。今頃は向こうで再会した父と、また子供会を開いているかもしれない。
 
 
■一言メモ
 心が和む温かい話だ。佐藤さとるさんは名のある童話作家だそうだが、まだ読んだことがない。これを機に読んでみようと思った。
 
 
 
 
 
 

閉じる トラックバック

日めくり/美しいことばの抽きだし・藤久ミネ

イメージ 1美しいことばの抽きだし
藤久ミネ著
1999年4月2日発行
 
 
こころに残る一節
日めくり
 
 
 
 
 
 
 
 
日めくり
 森田たまの名を知る人は少なくなった。
 随筆家、当世風にいえばエッセイイストである。戦前から活躍し、戦後まもなくは参議院議員にもなった。その代表作「もめん随筆」は日常の瑣事のなかから人生の機微を鋭くとらえ、ふだん着の生活の哀歓が静かにうたわれている。
 
 なかに、「日暦」と題する一文がある。息子が六歳の暮れに鉛筆の先をなめなめ書いた詩とも散文ともつかぬ文章を題材にしたものである。
 
 ヒメクリハ マイニチマイニチ トシヲトル
 トシノクレニハ シンジャウヨ
 ニンゲンハ オショウガツニトシトッテ
 マイトシマイトシ トシトッテ
 一トウオシマイニハ シンジャウヨ
 ニンゲント ヒメクリト
 オンナシコトヲ シテイルヨ
 
 日めくり、日捲りとも書く。毎日、一枚ずつはぎとっていくタイプのぶ厚い暦で、昔はどこの家にもあった。日付や曜日の下に「一日一膳」とか「ならぬ堪忍するが堪忍」など教訓めいた格言などが刷り込まれ、茶の間や台所の古びた柱にぶら下げていたものだった。
 
 森田さんの息子は、その年から日捲りをはぐことを日課にしていた。柱の下に椅子を運んでよじ登り、背伸びをすると、ようやく日めくりに手が届く。それが子ども心によほど嬉しかったものらしい。大晦日の暮れ方、彼はたった一枚残った日めくりを抱えていたが、それも大掃除のゴミと一緒に焼かれてしまう。そのあと、少年は畳に腹ばいになって、この散文詩を書いたのだそうだ。
 表現は幼いが、直截で強い。一種の無常観に胸がつまった、森田さんは書いている。年の暮れは、幼児にも時間の不思議を感じさせるものらしい。日めくりは、この世の変転と時間の流れをふっと垣間見せる暦だった。
 
 
■一言メモ
心に残る文章だった。六歳の子の散文詩は何度も繰り返し読んだ。
 
 
 
 
 

閉じる トラックバック

私の収穫

イメージ 1散歩とカツ丼
日本エッセイイスト・クラブ編
10年版ベストエッセイ集
2010年8月30日第1版発行
 
 
 
 
 
 
 
こころに残る一節
私の収穫   梯 久美子 (ノンフィクション作家)
 
 24歳のとき、会社を辞めた。編集者をしていたので、担当していた作家の先生たちに退職の挨拶をして回った。
 その中に30代後半のイラストレーターがいた。辞めてどうするのと聞かれたので、フリーのライターとしてやっていきたいと答えた。「あなた一人暮らしだったよね。仕事のあてはあるの?」「はい、少しは」。本当は書く仕事などひとつも決まっていなかった。決まっていたのは駅前のパチンコ屋の屋上にあるゴルフ練習場の、レジ兼ボール拾いのアルバイトだけである。
 
 それ以上は聞かず、彼女は言った。
「友達、5くらいはいる?」
 はいと答えた。
「じゃあ大丈夫。ホントにお金に困ったら、その人たちに順番にランチをおごってもらいなさい。1日一食食べれば、死にはしないでしよ。5人いたら月曜から金曜まではなんとかなる」
 そしてこう続けた。「・・・・・でもね、週末は、私に電話しなさい」。担当して1年足らず、まだ親しいとはいえない間柄である。少し戸惑っていると、「電話しなさい。おごるわよ」と言って笑った。結局一度も電話することはなかったが、その後数年間の貧乏暮らしのあいだ、彼女の言葉は心の隅にあった。
 友達がいるから大丈夫。いざとなったら、誰かに助けてと言えばいい・・・そう考えると気楽になった。
 あの人は大人だったなあと、いま思う。赤の他人の小さな温かさが若い心を支えてくれることがあることを、あのとき、教えてもらった気がする。
(以下略)
 
 
■一言メモ
ささくれだった心にも響く、いい話だった。

閉じる トラックバック

全8ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8]

[ 次のページ ]


.

こころに残る一節
人気度

ヘルプ

Yahoo Image

  今日 全体
訪問者 2 1247
ブログリンク 0 0
コメント 0 50
トラックバック 0 2

ケータイで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

URLをケータイに送信
(Yahoo! JAPAN IDでのログインが必要です)

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

標準グループ

登録されていません

開設日: 2010/10/1(金)


プライバシーポリシー -  利用規約 -  ガイドライン -  順守事項 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2012 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.