私は父性を持ちたい/できればムカつかずに生きたい・田口ランディ
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できできればムカつかずに生きたい
田口ランディ著
晶文社発行
2000年10月20日発行
こころに残る一節
私は父性を持ちたい
2歳8ヵ月になる娘がテレビアニメを観るので、必然的にいっしょに観てしまう。
最近になって「ドラえもん」をしみじみと観て、憤慨してしまった。
私は子供の時代に「ドラえもん」を観ないで育った。小学校1年の頃から少女マンガフリークだった私は「ドラえもん」を男の子のマンガとして認識し、ちょっとバカにしていたのだ。
愛も恋もテーマにならない漫画に興味がなかった。やっぱり舞台はアメリカで、金髪の女の子が主人公じゃなくちゃダメよ、と思っていた。
だから、「ドラえもん」のおおよその筋書きは知っているものの、その内容をきちんと理解していなかったのだ。
ドラえもんは未来からやってきたネコ型ロボットで、のび太くんの家に住んでいる。四次元型ポケットなるポケットから次々と未来の道具を取り出して、のび太君の願いをかなえてくれる。というのがドラマの設定である。
この「ドラえもん」を子供と観てびっくりしたのは、ドラえもんの並外れた母性である。ドラマの中でドラえもんの役割は主にのび太くんの乳母である。ドラえもんというからオスだと思うのだけど、やっているのは母親の代理。それも超甘やかし、過保護の乳母だ。
なにしろ、のび太くんが多少悪いことをしても、(たとえばドラえもんにきた手紙を勝手に開けて、ダイレクトメールで品物を未来デパートに注文したりしても)ドラえもんは怒らないのだ。
「しようがないなあ、のび太くんは・・・」
と言って許してくれる。そして、のび太くんがしでかしたトラブルは全部ドラえもんが肩代わりして解決してくれる。のび太くんは
「ねえ、ドラえもん助けてよお」
と甘えていればいいのである。
私はあきれ果てて娘に怒鳴った。
「あなたね、どんなに心が優しかろうと、こんな甘えた男を亭主にしちゃ絶対にダメだからね」
もちろん娘はきょとんとしておった。それにしても、この母性賛歌のアニメを30年にわたって子供たちが観てきたのかあ、と思うとなんだか呆然となった。うーんさすがに母性原理日本の社会のアニメだなあ、と感心すらしてしまったのだ。
私はドラえもんを観ていると、だんだん腹がたってくる。テレビを観ながら文句を言っているので、
「おかあたん、怒っちゃダメだよ」
と娘に諭されている。
「お母さんがもしのび太くんのお母さんだったなら、絶対にこんなおせっかいロボットを居候させたりしないわよ。これじゃ子供がいつまでも自立できないじゃないの。自分の力で何もできない子供になっちゃうじゃないの」
とはいえ娘は「ドラえもん」が大好きで「みんなみんなかなえてくれる」とテーマソングを元気で歌っていたのである。
(以下略)
■一言メモ
三十数年前、ぼくは幼い息子といっしょに「ドラえもん」を観て喜んでいた。いささかの疑問も持たなかった。ぼくが母性親父だったからだろうか。ランディさんの鋭い感覚には脱帽だった。
この本は、ほんとうに面白かった、一気に読んでしまった。
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