小説
ラブレター 2 〜もう駄目だ〜「もう駄目だ」
ベッドの上で思わず吐き出した。声にはならなかった。
ラジオからは、広島カープ対中日ドラゴンズの実況が聞こえてくる。
どうやら広島カープの前田という選手の通算安打が二千本になったようだ。
「もう駄目だ」
気が付けばついこの言葉を使っている自分がいる。
一昨日、僕は合宿から帰ってきた。
この時期、僕は横浜の大学の研究室に所属している大学院生だった。
この研究室では毎年夏に長野県の避暑地で合宿を行っている。
当然、研究の促進という大義名分はあるが、
一泊百円程度という信じられない金額で提携施設を利用できることが主な理由で、
指導教官の寂しさを紛らわすというのが隠れた目的だ。
合宿とはこのことだ。
「もう駄目だ」
この数日間で何度この言葉を使っただろう。
強い決意の後、重い体を何とか起こし、鏡を覗き込んだ。
「ひどい顔をしているな」反射的にそう感じた。
合宿から帰ってきてから、まともな物を食っていない。
カップ麺を2つ食べただけだ。食べたかったわけではない。
生命存続のためにしょうがなく食べた。風呂にも入っていない。
これは特別なことではない。
僕は今、大学の寮で暮らしている。
家賃は確か三千五百円だった。
お金の代償は、シャワーとキッチンの共有と四畳半のスペースだ。 |