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平成13年 国水研 水銀に関する環境科学的研究

水銀に関する環境科学的研究
 
概要
 本研究課題は局地的な水銀汚染に起因する地球規模の水銀拡散の問題および汚染地域の環境復元を視野に入れて、環境中での水銀の移動および化学形態変化に関連する研究と、汚染土壌等からの水銀回収に関連する研究を取り扱っている。
 水銀が環境汚染物質として重要な元素であることは従来から指摘されていたが、その汚染形態は局地的なものにとどまらず地球規模で拡散・沈殿し汚染源とは全く別の場所で生態系に入って生物濃縮を受けるという性質を持つことが最近の研究で明らかとなりつつある。その拡散・沈殿という挙動には化学形態の転換を伴っており、また生態系に入る際の、いわゆるバイオアベイラビリティーを獲得する際にもやはり形態の転換が関っていることが、平成13年10月に開催された水銀国際会議の中でも再三指摘されていた。
 こういった観点に加え、当国立水俣病総合研究センターがかつて重篤な水銀汚染を被った水俣の地にあるという立地を生かして、自然界における水銀の動態に関する様々な局面を研究対象としているのが本課題5 の特徴である。
 
各研究テーマは以下のとおりである。
(1) 環境中での水銀の移動および化学形変化
 a. 水俣湾における水銀の動態
  ア. 現在の水俣湾における水銀の動態
  イ. サンゴに刻まれた過去の水銀汚染の痕跡の解読
 b. 魚類の淡水中と海水中における水銀蓄積機構の違いに関する研究
 c. 水俣湾の水銀揮発化細菌の分子生態学的研究
 d. 生体試料および環境試料に含まれる微量水銀の化学形分別測定法の開発
 
 (2) 環境修復
  a. 低温度燃焼法による汚染土壌の修復と水銀回収技術の開発
  b. バクテリア利用による環境中水銀蒸散技術の開発
   ①水銀揮発化細菌を利用した水銀汚染物処理技術の開発に関する基盤研究
   ②液状バイオマス処理のための高度な微生物制御技術に関する基盤研究
  c. 放射線を利用したメチル水銀の脱メチル化の開発
 
 これらの研究テーマの平成13 年度における研究結果の概要について以下に列挙する。また、まとまった成果があるものについては詳細を添付している。

(1) 環境中での水銀の移動および化学形変化
 a ア.現在の水俣湾における水銀の動態
    研究担当者 保田叔昭
 平成12 年度末に第3 回水俣湾潮間帯底生生物群集調査を実施した。その試料はまだ分類・解析作業の途上にある。また、甑島および能登島の調査試料に関する解析結果をまとめた。
過去3 回の水俣湾調査結果は、92 年に九大が行った調査結果とを併せて、群集構造特性の経時変
化を解析中であり、近日中に投稿する予定である。
 これらの試料に関する水銀濃度の調査も同時に実施している。特にヒライソガニについては、過
去のデータ(’92 年、’97 年、’99 年)との比較を行い、水銀濃度が自然界の水準より多少高いもののほとんど平衡状態に落ちついていることが確認できた。
 イ.サンゴに刻まれた過去の水銀汚染の痕跡の解読
    研究担当者 保田叔昭
 水俣湾および牛深周辺のコマルキクメイシについて含まれる微量元素の解析による過去の海水温
推移の推定を行った。その結果、両地域間には海水温の隔たりがほとんどないことがわかった。これ
らのサンゴの水銀濃度の経時変化を年輪単位で測定した。その結果水俣湾のもののほうが一貫して濃度が高かった。
 
b. 魚類の淡水中と海水中における水銀蓄積機構の違いに関する研究(平成8〜15 年度)
   研究担当者 山口雅子
 添加する水銀量を10ppb まで低下させた条件で海水および淡水中の水銀の濃度変化とウナギの諸
臓器への取り込みを調べた。結果として、消化管における水銀吸収機構が環境水の塩濃度の影響を受けることが示された。
 
c. 水俣湾の水銀揮発化細菌の分子生態学的研究(平成12〜15 年度)
  研究担当者 中村邦彦
 本年度も、昨年度と同様に、水俣湾から採取した、種々の水銀化合物を揮発化する水銀耐性菌
Pseudoalteromanas haloplanktis M-1 株の水銀揮発化遺伝子の構造を解析した。
 
d. 生体試料および環境試料に含まれる微量水銀の化学形分別測定法の開発(平成12〜13 年度)
研究担当者 赤木洋勝
 生体試料を含む様々な環境試料の水銀濃度を効率よく正確に測定する方法の開発は最終段階に入り、簡易な前処理によってあらゆる試料を共通の水銀測定手法へ統合することができた。今年度はさらにより経済的にかつ廃棄物の減少を目標として試薬の組み合わせや各反応ステップの見直しを行った。
 一方、水俣湾において底質のコアサンプルと海水とを採取し、これらに含まれる微量水銀の定量を
国水研およびスロベニア・ステファン研究所にて同時に実施した。その測定結果はきわめて近似して
おり、双方の測定技術の水準を確認できた。
 
(2) 環境修復
 a. 低温度燃焼法による汚染土壌の修復と水銀回収技術の開発(平成12〜15 年度)
  研究担当者 松山明人
 国内の化学工場跡地水銀汚染土壌を用いて硫化鉄添加による低温加熱処理実験を行った。結果として水銀を98%以上除去できたものの、含有量基準参考値である3mg/kg を満足するにはいたらな
かった。そこで高温燃焼法を組み合わせるハイブリッド処理法を考案した。現在は、気化水銀の捕
集法を含む全体構成の検討に入っている。
 一方、低温燃焼法を応用して廃棄蛍光管に含まれる水銀の回収装置も開発中である(詳細後述)。
 
b. バクテリア利用による環境中水銀蒸散技術の開発(平成12〜15 年度)
本年度は、以下の2 課題について検討した。
①水銀揮発化細菌を利用した水銀汚染物処理技術の開発に関する基盤研究
研究担当者 中村邦彦
 本年度は、水俣湾から採取した水銀揮発化細菌を利用し、種々の条件における、水俣湾底質の水
銀の除去反応について検討を行った。
②液状バイオマス処理のための高度な微生物制御技術に関する基盤研究
研究担当者 中村邦彦
 本年度は、昨年に引き続き、水俣湾から採取した、種々のメチル水銀揮発化細菌を用いて魚の肉
汁などからのメチル水銀除去反応等を検討した。

c. 放射線を利用したメチル水銀の脱メチル化の開発(平成13〜16 年度)
  研究担当者 荒巻 亮二
 本年度はメチル水銀を種々の水溶液に溶かして、X−線照射による無機水銀の生成量について検
討を行った。その結果50Gy までの線量について、蒸留水、PBS、中性標準液、アルカリ性標準液な
どは線量に比例して無機水銀の生成量が増加したが、酸性標準液はX-線照射による無機水銀の生成は見られなかった。このようにメチル水銀を溶解した水溶液の種類によってメチル水銀の無機化は影響受けることが分かった。

1)a ア.現在の水俣湾における水銀の動態
〔研究目的〕
 過去に甚大な水銀汚染を受けた水俣湾において、生態系もまた相当の打撃を受けたことが各種資料からうかがえる。汚染源の化学工場が水銀の排出を停止してすでに40 年を経過し、湾内の汚染された底質も埋立地に密封されている現在、生態系に含まれる水銀は自然界レベルにまで低下したものの、他の地域に比べると依然としていくぶん高い価を示す。ところで、潮間帯生態系の環境維持に果たす役割の重要性は、近年干潟については多少認識されつつあるが、転石潮間帯については基礎的な研究が希薄なこともあってほとんど認識されていない。
 しかし調査してみると転石海岸には豊富な生物群集が生息し、底質と水圏とをつなぐ食物連鎖の重要な経路をなしていることが理解できる。そして、海岸における転石潮間帯の総延長も、岩礁海岸と二分して長大なものがある。したがって干潟以上に環境保全および食物連鎖網における重要性を持っていると推察できる。本研究はこのような転石潮間帯の環境維持における重要性を実証することを目的として、不足している基礎研究を実施するものである。

〔研究成果および進捗状況〕
(ア)潮間帯生物における水銀の動態
 水俣湾内外の4 ヶ所の定点における潮間帯生物群集調査は、平成12 年度末に第3 回目を実施した。ここで得られた試料はまだ分類・同定と計数・計量の作業が継続中である。一方ランダムサンプリングによって得られた試料は水銀含有量の測定を行っている。そのうち、カサゴの餌生物であるヒライソガニについては、昨年と同様過去のデータと比較することが可能である(下図)。
 この図からは、水銀濃度の分布が一定の変動幅の範囲に納まっていることを示しており、他の地域のものよりは高めであるものの、これ以上の低下には相当の時間が必要であろう。
今後もこのモニタリングは継続していく。
イメージ 1

転載元 転載元: 尖閣中国漁船衝突+官製反日デモ国辱忘れまじ日本海シナ海の底を見る

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