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2011年10月26日

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平成17年 水俣での水銀の環境科学に関する研究

水銀の環境科学に関する研究
研究概要
 本研究課題は環境中の水銀に関するあらゆる事象を取り扱う。周知のとおり、環境中の水銀は地球規模で拡散移動し、メチル化を受けて生態系に入り、食物連鎖網の順位に従って蓄積する。
 これらの現象の研究は、それぞれに水銀の物性に起因するさまざまな困難を抱えており、現在世界中の水銀研究者の議論が集中するところである。
 日本における水銀研究の本拠として、本研究課題に集まる期待も小さくない。それぞれの研究の平成17年度における研究概要を以下に列挙する。
 

1. 水俣湾の水銀耐性菌の遺伝学的研究
   中村 邦彦(基礎研究部)
 昨年度は、水俣湾底質から採取した水銀耐性が弱く2価の水銀イオンを揮発できるバチルス属細菌68株に解析を行ったところ、水銀耐性が高い細菌の水銀揮発化遺伝子と同じような構造をした水銀揮発化遺伝子merオペロンを持っていることが判明した。
 そこで、本年度は、このような細菌が水銀汚染により水俣湾で特異的に出現しているか否かについて検討するため、水銀汚染のない対照地点の湯乃児と米ノ津よりバシルス属の細菌を分離し、これらの細菌の細菌学的分類および塩化第二水銀に対する最小発育阻止濃度について検討した。また、水俣湾から採取した、5株の水銀耐性の強いBacillus 属の細菌の水銀揮発化遺伝子の構造についても解析した。
 
2. 海域生態系における水銀の動態
  保田 叔昭(国際・総合研究部)
 水俣湾転石海岸の水銀平面分布を調べた。メチル水銀の分布は総水銀の分布のパターンと異なる個所があった。また、メチル水銀濃度は恋路島湾側では平均26ppbに達することがわかった。
一方、インドネシア、セレベス島北部の金鉱山地帯における水銀環境調査では、全体として水銀の残留分布量は大変低いものの、河川から河口の海岸へ至るラインに水銀濃度の高い個所があり、また魚への水銀蓄積も見られたため、今後の調査がまたれる。
 
3. 低温加熱処理による汚染土壌/底質および水銀含有廃棄物の浄化処理とその水銀の回収技術の開発
  松山 明人(疫学研究部)
 本技術を用いた廃蛍光管処理システムについて、処理後の廃棄物中の残留水銀量を土壌汚染対策法に記載されている水銀含有量基準および溶出量基準以下とするべく処理条件の検討を行った結果、500℃にて2種の添加剤を用い一定の送風条件を用いることで目標が達成できた(特許出願中)。
 
4. 水俣湾、水俣川等に残留する浚渫対象外水銀含有底質(25ppm以下)および埋設水銀含有底質が水圏環境に与える影響について
  松山 明人(疫学研究部)
 従来2Lの試料を用いていた水のメチル水銀定量について、種々の改良を加えたところ、200mlの試料で十分な測定精度と感度を得ることができた。
 
5. 生物を用いた環境中メチル水銀の解毒機構解明に関する研究
  永野 匡昭(基礎研究部)
 高濃度の水銀蓄積が報告されている海産ほ乳類について、肝臓内にあると想定される解毒機構について研究中である。肝の水銀は主としてミトコンドリア膜にありその80%は無機水銀である。
 したがってミトコンドリア膜の脱メチル化機構の解明が急務であり、その検出法の検討を続けている。
 
6. 水銀揮発化細菌を利用した水銀汚染物処理技術の開発に関する基盤研究
  中村 邦彦(基礎研究部)
 電気透析装置内での2価の水銀イオンの挙動について検討した。電気透析装を使用し2価水銀イオンの陽極槽から濃縮層への移行を検討した結果、35Vの電圧で効率的な水銀の陽極槽か濃縮槽への移行が観察された。
 また、25μg/mlの濃度の塩化第二水銀水溶液1リットルを陽極槽に入れ、24時間電気透析を行った結果、活性炭フィルターの上層部より1.63mg、下層部より2.2μgの気化した水銀が回収された。さらに、電気透析だけでは、除去できない濃縮槽内の2価の水銀イオンを、将来的に水銀揮発化細菌を用いて除去するための基礎実験として、多くの微生物を付着できる熱帯魚飼育用の石への吸着を検討した。
 
7. メチル水銀の超高感度分析法の開発と大気中水銀のメチル化・脱メチル化反応過程の解明
  丸本 幸治(国際・総合研究部)
 大気及び降水中のメチル水銀を信頼性高く定量するための超高感度分析法として、従来のジチゾンー硫化ナトリウム二段抽出法に改変を加え、硫化ナトリウム中でアルカリ条件下、塩化スズによる還元反応を起こさせて無機水銀を気化により除去する手法を開発した。
 その結果、ECD-ガスクロマトグラフを用いず、還元気化法でメチル水銀の測定が可能になった。今後さらに感度をあげて実用化する。
 
8. 大気中水銀蒸気のモニタリングおよび環境循環量の推定法に関する研究
  松山 明人(疫学研究部)
 ロシアLUMEX社製RA-915を用いて主として水俣周辺の大気中水銀濃度の測定を行っており、一定の成果を得た。今年度は研究の最終段階として測定器の精度を再確認するため、日本インスツルメント製のHG-2との間で測定値の比較を行い、相互に同等の精度をもって測定ができることを確認した。また、ポジティブコントロールとして、霧島地区において火山の影響を調べた。
 
 

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平成15年 国水研の水銀に関する環境科学的研究

水銀に関する環境科学的研究

研究概要
 本研究課題は局地的な水銀汚染に起因する地球規模の水銀拡散の問題および汚染地域の環境復元を視野に入れて、環境中での水銀の移動および化学形態変化に関連する研究と、汚染土壌等からの水銀回収に関連する研究とからなっている。
 水銀は環境汚染物質として重要な元素であり、その汚染形態は局地的なものにとどまらず地球規模で拡散し汚染源とは全く別の場所で生態系に入って生物濃縮を受けるという性質を持つ。その挙動には化学形態の転換が関っている。
 すなわち、安定であるはずの硫化水銀(水銀鉱山産出物)や、産業用に利用されたあと自然界へ流出した金属水銀などからいくつかの経路で有機水銀が生じ、それが食物連鎖網に取り込まれて濃縮されていくという経過がある。
 こういった観点に加え、当研究所がかつて深刻な水銀汚染を被った水俣の地にあるという立地を生かして、自然界における水銀の動態に関する様々な局面を研究対象としている。具体的には、主として水俣湾の水、底質、ベントス類等各環境要素における水銀の動向の調査、実験環境における食物連鎖および生物への水銀取り込みの研究などを実施中である。
 また、応用分野として、低温度加熱処理による水銀回収や放射線を利用した水銀の脱メチル化に関する研究が行なわれ、実用化の目処のたったものもある。
 今年度報告する4 点の要点は以下のとおりである。この内1)と2)は環境中の水銀挙動に関するテ
ーマであり、あとの3)と4)は環境修復ないし廃棄物からの水銀回収に関する実用技術の研究である。
 
1)(ア)水俣湾における水銀の動態
 これまでに採用した11 ヶ所の調査地域の底質の総水銀値は、水俣湾と他の地域とで1,000 倍の開
きがあった。また、間隙水につても水俣湾は特に高い値を示した(詳細後述、P.60~61)。
 
(イ)潮間帯無脊椎動物の群集構造とその地域差
 潮間帯底質の粒状分布をステーションごとに測定し、比較した。その結果、個体数から算出した構
成種の類似度とは違った類型分布が得られ、粒状分布は種の構成に目立った貢献をしていないこと
がわかった(詳細後述、P.62~63)。
 
2)淡水中および海水中の魚類における水銀動態
 ウナギの水銀摂取には、環境水中よりも体液中の塩素イオンの方がより大きな影響力を持つ。淡
水中および海水中の水銀摂取量の違いは、その環境中での塩素イオン輸送機構の変化に由来するように見受けられる(詳細後述、P.64~66)。
 
 
3)低温度燃焼法による汚染土壌/底質および水銀含有廃棄物の浄化処理とその水銀回収技術の開発
 低温加熱による水銀の回収には硫化鉄の添加が有効であるが、副次的生成物として硫化水銀が生じるようである。この残留水銀量を低下させる目的でいくつかの補助添加剤を検討したが、鉄粉を
添加した場合の成績が比較的良かった(詳細後述、P.67~69)。

4)放射線を利用したメチル水銀の脱メチル化の開発
 自然界のメチル水銀を放射線の照射で無機化し、結果として毒性を減弱させることを目指している。X 線を用いると、用量依存的に水溶液中のメチル水銀が無機化し、計算上、1kGy の照射で数
ppm のメチル水銀を分解できる。
 この反応は燐酸塩などの存在下で促進され、一方フタル酸などの有機酸により阻害される。この技術は、水銀汚染環境でのリスク低下の目的で実用化は可能であると判断できた(詳細後述、P70~73)。
 
 
イメージ 1
 
 この結果を見ると、海岸に棲息する底生生物の水銀濃度の水準は底質中のそれと対応しているが、その差をそのまま反映しているわけではない。自然界において水銀イオンがメチル化したあとどの程度生物に取り込まれるかの指標(Bioavailability)がどのような因子によっているかについての統括的な知見が必要である。
 

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平成14年 国立水俣研究所 水銀に関する環境科学的研究

水銀に関する環境科学的研究
 

研究概要
 本研究課題は局地的な水銀汚染に起因する地球規模の水銀拡散の問題および汚染地域の環境復元を視野に入れて、環境中での水銀の移動および化学形態変化に関連する研究と、汚染土壌等からの水銀回収に関連する研究とからなっている。
 水銀は環境汚染物質として重要な元素であり、その汚染形態は局地的なものにとどまらず地球規模で拡散・沈殿し汚染源とは全く別の場所で生態系に入って生物濃縮を受けるという性質を持つ。その拡散・沈殿という挙動には化学形態の転換をともなっており、また生態系に入る際の、いわゆるバイオアベイラビリティーを獲得する際にもやはり形態の転換が関っている。
 こういった観点に加え、当研究所がかつて深刻な水銀汚染を被った水俣の地にあるという立地を生かして、自然界における水銀の動態に関する様々な局面を研究対象とする。具体的には、主として水俣湾の水、底質、ベントス類等各環境要素における水銀の動向の調査、実験環境における食物連鎖および生物への水銀取り込みの研究、バクテリアにおける水銀化学形変換遺伝子の構造解析と自然界における役割の研究などがある。
 また、応用分野として、低温度加熱処理、バクテリア利用による水銀回収そして放射線を利用した水銀の脱メチル化に関する研究を現在実施中である。

1) a. ア.水俣湾における水銀の動態
〔研究目的〕
 過去に甚大な水銀汚染を受けた水俣湾において、生態系もまた相当の打撃を受けたことが各種資料からうかがえる。
 汚染源の化学工場が水銀の排出を停止してすでに35年を経過し、湾内の汚染された底質も埋立地に密封されている現在、生態系に含まれる水銀は自然界レベルにまで低下しているが、他の地域に比べるとなおいくぶん高い値を示す。この差を利用して、他の地域と比較しながら、海洋生物の生態系における水銀の動態について調査を行うことが本研究の目的である。
〔成果および進捗状況〕
 カサゴを使った食物連鎖による水銀蓄積実験を開始した。これは、大矢野漁協にお願いしてその地区のカサゴを入手し、水俣湾(恋路島湾側)と羊角湾のヒライソガニおよびオオギガニを餌として与えたとき、水銀の蓄積にどのような違いがでるかを観察しようというものである。カニの水銀値は両地域で10:1の違いがある。
 
 実験開始時点で、無処置のカサゴの筋肉内水銀濃度は、体重200g前後で約100ppbであった。ただしばらつきはかなり大きく、±20ppb程度は見ておく必要がある。両地区それぞれ3匹ずつのカサゴを実験に供し、カニの右半身を4〜5匹分1日おきに与えた。カニの左半身は凍結乾燥したのち水銀測定を行って、カサゴに与えた水銀量の目安とした。
 投与は3ヶ月にわたって行い、麻酔の後各臓器を採取した。採った臓器は、筋肉、脳、鰓、腎、肝、胃、前腸そして後腸である。それぞれ凍結乾燥を行って含水率を出したのち水銀分析を行った。
結果を見ると、与えた水銀量の差に比べて、蓄積した水銀の量の違いは小さかった。これは出発時点での含有水銀量がマスクをしているためだと考えられる。つまりその値をベースとして差し引く必要がある(付図参照)。
 

 筋肉以外の臓器の水銀量については、やはり肝、腎に多量の水銀が存在していた。脳には水俣湾のカニを食べたグループで0.45から0.83ppm、羊角湾の方で、0.31から0.44ppmの総水銀が蓄積しており、この内、水俣湾では91.3%(0.44から0.66ppm)、羊角湾では55.5%(0.17から0.27ppm)がメチル水銀であった。すなわち水俣湾のカニを食べたグループのメチル水銀の割合が高かった。
 次回はこれらの実験結果を踏まえ、実験開始時の体重を100から150gへ落し、血中の水銀濃度をあらかじめ測定して値を揃えた上で、投与実験を開始する予定である。
 
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平成13年 国水研 水銀に関する環境科学的研究

水銀に関する環境科学的研究
 
概要
 本研究課題は局地的な水銀汚染に起因する地球規模の水銀拡散の問題および汚染地域の環境復元を視野に入れて、環境中での水銀の移動および化学形態変化に関連する研究と、汚染土壌等からの水銀回収に関連する研究を取り扱っている。
 水銀が環境汚染物質として重要な元素であることは従来から指摘されていたが、その汚染形態は局地的なものにとどまらず地球規模で拡散・沈殿し汚染源とは全く別の場所で生態系に入って生物濃縮を受けるという性質を持つことが最近の研究で明らかとなりつつある。その拡散・沈殿という挙動には化学形態の転換を伴っており、また生態系に入る際の、いわゆるバイオアベイラビリティーを獲得する際にもやはり形態の転換が関っていることが、平成13年10月に開催された水銀国際会議の中でも再三指摘されていた。
 こういった観点に加え、当国立水俣病総合研究センターがかつて重篤な水銀汚染を被った水俣の地にあるという立地を生かして、自然界における水銀の動態に関する様々な局面を研究対象としているのが本課題5 の特徴である。
 
各研究テーマは以下のとおりである。
(1) 環境中での水銀の移動および化学形変化
 a. 水俣湾における水銀の動態
  ア. 現在の水俣湾における水銀の動態
  イ. サンゴに刻まれた過去の水銀汚染の痕跡の解読
 b. 魚類の淡水中と海水中における水銀蓄積機構の違いに関する研究
 c. 水俣湾の水銀揮発化細菌の分子生態学的研究
 d. 生体試料および環境試料に含まれる微量水銀の化学形分別測定法の開発
 
 (2) 環境修復
  a. 低温度燃焼法による汚染土壌の修復と水銀回収技術の開発
  b. バクテリア利用による環境中水銀蒸散技術の開発
   ①水銀揮発化細菌を利用した水銀汚染物処理技術の開発に関する基盤研究
   ②液状バイオマス処理のための高度な微生物制御技術に関する基盤研究
  c. 放射線を利用したメチル水銀の脱メチル化の開発
 
 これらの研究テーマの平成13 年度における研究結果の概要について以下に列挙する。また、まとまった成果があるものについては詳細を添付している。

(1) 環境中での水銀の移動および化学形変化
 a ア.現在の水俣湾における水銀の動態
    研究担当者 保田叔昭
 平成12 年度末に第3 回水俣湾潮間帯底生生物群集調査を実施した。その試料はまだ分類・解析作業の途上にある。また、甑島および能登島の調査試料に関する解析結果をまとめた。
過去3 回の水俣湾調査結果は、92 年に九大が行った調査結果とを併せて、群集構造特性の経時変
化を解析中であり、近日中に投稿する予定である。
 これらの試料に関する水銀濃度の調査も同時に実施している。特にヒライソガニについては、過
去のデータ(’92 年、’97 年、’99 年)との比較を行い、水銀濃度が自然界の水準より多少高いもののほとんど平衡状態に落ちついていることが確認できた。
 イ.サンゴに刻まれた過去の水銀汚染の痕跡の解読
    研究担当者 保田叔昭
 水俣湾および牛深周辺のコマルキクメイシについて含まれる微量元素の解析による過去の海水温
推移の推定を行った。その結果、両地域間には海水温の隔たりがほとんどないことがわかった。これ
らのサンゴの水銀濃度の経時変化を年輪単位で測定した。その結果水俣湾のもののほうが一貫して濃度が高かった。
 
b. 魚類の淡水中と海水中における水銀蓄積機構の違いに関する研究(平成8〜15 年度)
   研究担当者 山口雅子
 添加する水銀量を10ppb まで低下させた条件で海水および淡水中の水銀の濃度変化とウナギの諸
臓器への取り込みを調べた。結果として、消化管における水銀吸収機構が環境水の塩濃度の影響を受けることが示された。
 
c. 水俣湾の水銀揮発化細菌の分子生態学的研究(平成12〜15 年度)
  研究担当者 中村邦彦
 本年度も、昨年度と同様に、水俣湾から採取した、種々の水銀化合物を揮発化する水銀耐性菌
Pseudoalteromanas haloplanktis M-1 株の水銀揮発化遺伝子の構造を解析した。
 
d. 生体試料および環境試料に含まれる微量水銀の化学形分別測定法の開発(平成12〜13 年度)
研究担当者 赤木洋勝
 生体試料を含む様々な環境試料の水銀濃度を効率よく正確に測定する方法の開発は最終段階に入り、簡易な前処理によってあらゆる試料を共通の水銀測定手法へ統合することができた。今年度はさらにより経済的にかつ廃棄物の減少を目標として試薬の組み合わせや各反応ステップの見直しを行った。
 一方、水俣湾において底質のコアサンプルと海水とを採取し、これらに含まれる微量水銀の定量を
国水研およびスロベニア・ステファン研究所にて同時に実施した。その測定結果はきわめて近似して
おり、双方の測定技術の水準を確認できた。
 
(2) 環境修復
 a. 低温度燃焼法による汚染土壌の修復と水銀回収技術の開発(平成12〜15 年度)
  研究担当者 松山明人
 国内の化学工場跡地水銀汚染土壌を用いて硫化鉄添加による低温加熱処理実験を行った。結果として水銀を98%以上除去できたものの、含有量基準参考値である3mg/kg を満足するにはいたらな
かった。そこで高温燃焼法を組み合わせるハイブリッド処理法を考案した。現在は、気化水銀の捕
集法を含む全体構成の検討に入っている。
 一方、低温燃焼法を応用して廃棄蛍光管に含まれる水銀の回収装置も開発中である(詳細後述)。
 
b. バクテリア利用による環境中水銀蒸散技術の開発(平成12〜15 年度)
本年度は、以下の2 課題について検討した。
①水銀揮発化細菌を利用した水銀汚染物処理技術の開発に関する基盤研究
研究担当者 中村邦彦
 本年度は、水俣湾から採取した水銀揮発化細菌を利用し、種々の条件における、水俣湾底質の水
銀の除去反応について検討を行った。
②液状バイオマス処理のための高度な微生物制御技術に関する基盤研究
研究担当者 中村邦彦
 本年度は、昨年に引き続き、水俣湾から採取した、種々のメチル水銀揮発化細菌を用いて魚の肉
汁などからのメチル水銀除去反応等を検討した。

c. 放射線を利用したメチル水銀の脱メチル化の開発(平成13〜16 年度)
  研究担当者 荒巻 亮二
 本年度はメチル水銀を種々の水溶液に溶かして、X−線照射による無機水銀の生成量について検
討を行った。その結果50Gy までの線量について、蒸留水、PBS、中性標準液、アルカリ性標準液な
どは線量に比例して無機水銀の生成量が増加したが、酸性標準液はX-線照射による無機水銀の生成は見られなかった。このようにメチル水銀を溶解した水溶液の種類によってメチル水銀の無機化は影響受けることが分かった。

1)a ア.現在の水俣湾における水銀の動態
〔研究目的〕
 過去に甚大な水銀汚染を受けた水俣湾において、生態系もまた相当の打撃を受けたことが各種資料からうかがえる。汚染源の化学工場が水銀の排出を停止してすでに40 年を経過し、湾内の汚染された底質も埋立地に密封されている現在、生態系に含まれる水銀は自然界レベルにまで低下したものの、他の地域に比べると依然としていくぶん高い価を示す。ところで、潮間帯生態系の環境維持に果たす役割の重要性は、近年干潟については多少認識されつつあるが、転石潮間帯については基礎的な研究が希薄なこともあってほとんど認識されていない。
 しかし調査してみると転石海岸には豊富な生物群集が生息し、底質と水圏とをつなぐ食物連鎖の重要な経路をなしていることが理解できる。そして、海岸における転石潮間帯の総延長も、岩礁海岸と二分して長大なものがある。したがって干潟以上に環境保全および食物連鎖網における重要性を持っていると推察できる。本研究はこのような転石潮間帯の環境維持における重要性を実証することを目的として、不足している基礎研究を実施するものである。

〔研究成果および進捗状況〕
(ア)潮間帯生物における水銀の動態
 水俣湾内外の4 ヶ所の定点における潮間帯生物群集調査は、平成12 年度末に第3 回目を実施した。ここで得られた試料はまだ分類・同定と計数・計量の作業が継続中である。一方ランダムサンプリングによって得られた試料は水銀含有量の測定を行っている。そのうち、カサゴの餌生物であるヒライソガニについては、昨年と同様過去のデータと比較することが可能である(下図)。
 この図からは、水銀濃度の分布が一定の変動幅の範囲に納まっていることを示しており、他の地域のものよりは高めであるものの、これ以上の低下には相当の時間が必要であろう。
今後もこのモニタリングは継続していく。
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平成12年水銀に関する環境科学的研究

水銀に関する環境科学的研究
概 要
水銀は自然界に遍く存在するがその大部分は不活性な硫化水銀の形態であるといわれている。しかし、酸や酸素の作用による可溶化の後、光、バクテリアなどの作用によってメチル化を受ける現象が報告されている。メチル化した水銀は食物連鎖網に入り、生物濃縮を受ける。
本研究課題は局地的な水銀汚染による地球規模の水銀拡散の問題および汚染地域の環境復元を視野に入れて、水俣湾や諸外国の金採掘などによる水銀汚染の問題を抱える地域をフィールドとして、環境中での水銀の移動、生物濃縮および化学形態変化に関連する研究と、汚染土壌等からの水銀回収に関連する研究、そして過去の水俣湾における水銀汚染の実態調査とから構成されている。各研究テーマは以
下のとおりである。
 

(1) 環境中での水銀の移動および化学形態変化
 1.水俣湾における水銀の動態
 2.水銀循環の生物地球化学
 3.食物連鎖網における水銀動態
 4.バクテリアにおける水銀化学形変換酵素遺伝子の出現機序と自然界における役割の研究
 5.生体試料および環境試料に含まれる微量水銀の化学形別測定法の開発
 
(2)環境修復
 6.低温加熱法による汚染土壌の修復と水銀の回収技術の開発
 7.バクテリア利用による環境中水銀蒸散技術の開発
 8.放射線を利用したメチル水銀の脱メチル化の開発(新規)
 
(3)過去における水銀汚染の実態調査
 これらの研究テーマの平成12 年度における研究結果の概要について以下に列挙する。

(1) 環境中での水銀の移動および化学形態変化
 1. 水俣湾における水銀の動態
 水俣湾の今回の調査結果を1997 年のものと比較すると、恋路島水俣湾側(St.K)と西の浦八代海側(St.S)で個体数が増加している。このうちSt.S では乾燥重量は減少しており、サイズの小さい個体が増加したことがうかがわれる。また、St.K と西の浦水俣湾側(St.G)で多様性の上昇がみられる。群集構造の変化を見ると、二枚貝類が減少し、代わって節足動物が増加している。食性別では、濾過食者が減少して底質食者が増加している。岩などへの固着性の強い二枚貝が減少して固着性の弱い節足動物が増えていることから、波が穏やかになった可能性が考えられる。ただし、これらの結果が平成10 年に行われた仕切り網の撤去の影響なのか、通常の年変動の範囲内なのかを判断するためには更に数回の調査を繰り返す必要がある。
 一方、これら解析を終えた試料のうち、優占種については順次水銀濃度の測定を行っている。現在のところ、ヒライソガニやゴカイについてはある程度測定が進んでいる。一例としてヒライソガニの過去3 回の測定結果を見ると、水俣湾の潮間帯の水銀濃度レベルは平成4 年よりは低下しており、最近ではほぼ横ばいになっている。しかしこの濃度は他の地域(宮崎県北浦町や長崎県若松町など)の値より数倍から十倍ほど高い。今後の動向が注目される。
 
 
2.水銀循環の生物地球化学
赤木 洋勝 Ikingura J. Guimaraes J.R.D.
 本年度は「放射性同位元素を用いた、河川の水−底質系におけるメチル水銀の生成と分布」の課題で、河川における無機水銀のメチル化の度合を、川の水と底質を組み合わせたモデル系を用いて測定した。
 その結果、空気を吹き込んだモデル系では、チッソガスを吹き込んだ系に比べてメチル水銀の増加が1.5〜2 倍も早かった。
 
3.食物連鎖網における水銀挙動
 塩化メチル水銀を添加した淡水及び海水中にウナギを飼育して、水中の水銀濃度の変化とウナギ体内での水銀の分布を調べている。0.1ppm の塩化メチル水銀を添加した今年度の実験では死亡するウナギが多く、満足のいく結果が得られなかった。そこで添加する水銀量を0.010ppm まで低下させた条件で再度同じ実験を継続している。
 
4.バクテリアにおける水銀化学形変換酵素遺伝子の出現機序と自然界における役割の研究
 本年度は、「水俣湾の水銀分解細菌の分子生態学的研究」の課題で、水俣湾から採取した,水銀耐性菌Pseudoalteromanas haloplanktis M-1 株の水銀揮発化遺伝子の構造を解析した。
 
5.生体試料および環境試料に含まれる微量水銀の化学形分別測定法の開発
 生体試料を含む様々な環境試料の水銀濃度を効率よく正確に測定する方法の開発は最終段階に入り、簡易な前処理によってあらゆる試料を共通の水銀測定手法へ統合することができた。今年度はさらにより経済的にかつ廃棄物の減少を目標として試薬の組み合わせや各反応ステップの見直しを行った。
 一方水俣湾において底質のコアサンプルと海水とを採取し、これらに含まれる微量水銀の定量を国水研およびスロベニア・ステファン研究所にて同時に実施した。その測定結果はきわめて近似しており、双方の測定技術の水準を確認できた。
 
(2) 環境修復
6.低温加熱法による汚染土壌の修復と水銀回収技術の開発(平成12〜15年)
 国内の化学工場跡地水銀汚染土壌(水銀初期濃度250ppm)を用いて、硫化鉄添加(重量比1%)
による低温加熱処理実験を行った。結果として、室内外実験ともに、300℃の加熱温度で約30 分処
理することにより、水銀の除去反応は終了し水銀除去率として98%以上を得られた。
 また処理した後の土壌を用いて、環境省告示第46 号の手順にしたがい、水銀の溶出実験を行って溶液中の水銀を測定した結果、環境省が水銀の土壌汚染基準として設けている0.0005ppm を満足させることができた。
 また技術的に本処理は300℃以下の温度条件ではあるが、加熱処理によって土壌/底質中の水銀
を除去することから処理中に発生する可能性のあるダイオキシンや亜硫酸ガスなどを定量し評価
しておく必要がある。そこで今回、屋外に設置した加熱処理プラントを用いて、前述の工場跡地土
壌を実際に処理した時のダイオキシンや亜硫酸ガスの発生量を測定した。測定に供したガスは、ロ
ータリーキルン(加熱炉)内部の水銀混入ガス、スクラバーで水銀を捕集したあとの洗浄ガスの2
種類とした。その結果、加熱炉内部のガス中には、ダイオキシンが基準の5 倍から10 倍量程度が
検出された。しかし、洗浄ガス中では基準量を若干上回る程度にまで減少していた。実際にはこの
洗浄ガスはもう一段、活性炭吸着塔を経由して大気放出される。現在、この最終排出ガスに含まれ
るダイオキシン濃度を測定中である。また実験に用いた土壌には最初から高濃度のダイオキシン含
まれていたことから、このダイオキシンは還元雰囲気の中で土壌から遊離したものと考えられる。
さらに、処理後土壌中のダイオキシンは、初期含有量値に比べ1/100 以下に低下していた。
 
7.バクテリア利用による環境中水銀蒸散技術の開発(平成12〜15年)
①水銀揮発化細菌を利用した水銀汚染物処理技術の開発に関する基盤研究
 水俣湾から採取した水銀揮発化細菌を利用し、種々の条件における、水俣湾底質の水銀の除去反応について検討を行った。

②液状バイオマス処理のための高度な微生物制御技術に関する基盤研究
 この研究では、水俣湾から採取した、種々のメチル水銀揮発化細菌を用いて魚の肉汁などからの
メチル水銀除去反応等を検討した結果、90%以上のメチル水銀が、24 時間で除去されることが判
明した。

(3) 過去における水銀汚染の実態調査
① H.I 液(メチル水銀)投与猫(No.717)の病理学的研究
② 水俣湾周辺におけるヒバリガイモドキ(Hormomya mutabilis)の水銀濃度に関する再検討
③ 水俣湾魚類等の標本中水銀濃度について
④ 水俣湾周辺の泥土の水銀濃度に関する再検討
 これらの研究を通して、水俣病発症当時の貴重な試料について、病理学的研究や水銀値の測定などを行った。
 
 
 放射性同位元素を用いた、河川の水−底質系におけるメチル水銀の生成と分布
〔目的〕
 本研究では、河川の底質および水を使って実験系を構成し、河川水―底質系における水銀のメチル化とその系内分布を、これまで当センターで確立し改良を重ねてきた放射性同位元素とジチゾン抽出―薄層クロマトグラフィーを組み合わせた放射化学的手法による高感度の無機・有機水銀の分別分析法を用いて検討した。
〔結果と考察〕
a.では底質中で総水銀量の9.9−13.8%、水中で同じく66%がメチル水銀であった。これに対してb.で
は底質中で3−6.3%、水中では44%であった。このときa.の水中総水銀量はb.のそれの2−5 倍高い値を示した。またc.では、水中の無機水銀濃度がa.b.に比べて高かったが、それは底質中の生物の活動によるものであろう。水だけを入れたd.では、実験開始時に投入した水銀量のわずか1.1%しか水中に残っていなかった。その中のメチル水銀の総水銀に対する割合は43%で、b.に匹敵する値であった。
c.の実験系に投入した底生生物における生物濃縮指数を算出すると、水の濃度に対してはメチル水銀で1970 倍、総水銀で620 倍となった。一方底質の水銀濃度に対してはメチル水銀で1.38 倍、総水銀で0.37 倍であった。
 以上のように、水中で豊富な空気が存在するとメチル水銀の生成が進むという興味深い結果を得ることができた。放射性同位元素を活用することによって、高感度でかつ正確な水銀測定手法を用いたことが、研究の成果に繋がった。
 

転載元 転載元: 尖閣中国漁船衝突+官製反日デモ国辱忘れまじ日本海シナ海の底を見る

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