平成17年 水俣での水銀の環境科学に関する研究
|
水銀の環境科学に関する研究
研究概要
本研究課題は環境中の水銀に関するあらゆる事象を取り扱う。周知のとおり、環境中の水銀は地球規模で拡散移動し、メチル化を受けて生態系に入り、食物連鎖網の順位に従って蓄積する。
これらの現象の研究は、それぞれに水銀の物性に起因するさまざまな困難を抱えており、現在世界中の水銀研究者の議論が集中するところである。 日本における水銀研究の本拠として、本研究課題に集まる期待も小さくない。それぞれの研究の平成17年度における研究概要を以下に列挙する。 1. 水俣湾の水銀耐性菌の遺伝学的研究 中村 邦彦(基礎研究部)
昨年度は、水俣湾底質から採取した水銀耐性が弱く2価の水銀イオンを揮発できるバチルス属細菌68株に解析を行ったところ、水銀耐性が高い細菌の水銀揮発化遺伝子と同じような構造をした水銀揮発化遺伝子merオペロンを持っていることが判明した。 そこで、本年度は、このような細菌が水銀汚染により水俣湾で特異的に出現しているか否かについて検討するため、水銀汚染のない対照地点の湯乃児と米ノ津よりバシルス属の細菌を分離し、これらの細菌の細菌学的分類および塩化第二水銀に対する最小発育阻止濃度について検討した。また、水俣湾から採取した、5株の水銀耐性の強いBacillus 属の細菌の水銀揮発化遺伝子の構造についても解析した。
2. 海域生態系における水銀の動態
保田 叔昭(国際・総合研究部)
水俣湾転石海岸の水銀平面分布を調べた。メチル水銀の分布は総水銀の分布のパターンと異なる個所があった。また、メチル水銀濃度は恋路島湾側では平均26ppbに達することがわかった。 一方、インドネシア、セレベス島北部の金鉱山地帯における水銀環境調査では、全体として水銀の残留分布量は大変低いものの、河川から河口の海岸へ至るラインに水銀濃度の高い個所があり、また魚への水銀蓄積も見られたため、今後の調査がまたれる。 3. 低温加熱処理による汚染土壌/底質および水銀含有廃棄物の浄化処理とその水銀の回収技術の開発
松山 明人(疫学研究部)
本技術を用いた廃蛍光管処理システムについて、処理後の廃棄物中の残留水銀量を土壌汚染対策法に記載されている水銀含有量基準および溶出量基準以下とするべく処理条件の検討を行った結果、500℃にて2種の添加剤を用い一定の送風条件を用いることで目標が達成できた(特許出願中)。 4. 水俣湾、水俣川等に残留する浚渫対象外水銀含有底質(25ppm以下)および埋設水銀含有底質が水圏環境に与える影響について
松山 明人(疫学研究部)
従来2Lの試料を用いていた水のメチル水銀定量について、種々の改良を加えたところ、200mlの試料で十分な測定精度と感度を得ることができた。 5. 生物を用いた環境中メチル水銀の解毒機構解明に関する研究
永野 匡昭(基礎研究部)
高濃度の水銀蓄積が報告されている海産ほ乳類について、肝臓内にあると想定される解毒機構について研究中である。肝の水銀は主としてミトコンドリア膜にありその80%は無機水銀である。 したがってミトコンドリア膜の脱メチル化機構の解明が急務であり、その検出法の検討を続けている。 6. 水銀揮発化細菌を利用した水銀汚染物処理技術の開発に関する基盤研究
中村 邦彦(基礎研究部) 電気透析装置内での2価の水銀イオンの挙動について検討した。電気透析装を使用し2価水銀イオンの陽極槽から濃縮層への移行を検討した結果、35Vの電圧で効率的な水銀の陽極槽か濃縮槽への移行が観察された。 また、25μg/mlの濃度の塩化第二水銀水溶液1リットルを陽極槽に入れ、24時間電気透析を行った結果、活性炭フィルターの上層部より1.63mg、下層部より2.2μgの気化した水銀が回収された。さらに、電気透析だけでは、除去できない濃縮槽内の2価の水銀イオンを、将来的に水銀揮発化細菌を用いて除去するための基礎実験として、多くの微生物を付着できる熱帯魚飼育用の石への吸着を検討した。
7. メチル水銀の超高感度分析法の開発と大気中水銀のメチル化・脱メチル化反応過程の解明
丸本 幸治(国際・総合研究部) 大気及び降水中のメチル水銀を信頼性高く定量するための超高感度分析法として、従来のジチゾンー硫化ナトリウム二段抽出法に改変を加え、硫化ナトリウム中でアルカリ条件下、塩化スズによる還元反応を起こさせて無機水銀を気化により除去する手法を開発した。 その結果、ECD-ガスクロマトグラフを用いず、還元気化法でメチル水銀の測定が可能になった。今後さらに感度をあげて実用化する。
8. 大気中水銀蒸気のモニタリングおよび環境循環量の推定法に関する研究
松山 明人(疫学研究部) ロシアLUMEX社製RA-915を用いて主として水俣周辺の大気中水銀濃度の測定を行っており、一定の成果を得た。今年度は研究の最終段階として測定器の精度を再確認するため、日本インスツルメント製のHG-2との間で測定値の比較を行い、相互に同等の精度をもって測定ができることを確認した。また、ポジティブコントロールとして、霧島地区において火山の影響を調べた。 |





