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和魂洋才。

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注目の新刊紹介。Operation Snow (作戦「雪」)
 
本稿に掲載した写真は全て本書による。
イメージ 1
(上)2012年9月刊。250ページ。米国内定価18ドル。
作者John Koster.
表紙は1941年12月7日、真珠湾攻撃の写真。 
 
Agent Of InfluenceOperation Snow (作戦「雪」)
 
2012年12月6日(木)夜7時30分。
グレンロック私立図書館。
 
John Koster氏の近著Operation Snow (作戦「雪」)
出版記念講演会があった。
生憎の雨の暗い木曜日、聴衆は20人に足らず。
 
John Koster氏は私の住むリッジウッドの隣町Glen Rockの住人、
地元で出しているタブロイド版の週刊新聞“The Villadom Timesの編集スタッフであり作家である。私のこのブログに過去何回か登場している。
 
氏の此処数年の力作であるOperation Snow (作戦「雪」)がこの秋、
上梓の運びとなりこの程、作者による講演会が開かれた訳である。
私は故あって同氏と知り合い同著も執筆時代から部分的に目にしていた。
 
今年9月中旬の出版以来何冊世間に出回ったかは知らない。
流行のAmazon.comでクリックすれば
Kindle版14ドル、ハードカバー18ドルが
僅かな送料で数日のうちに自宅に届けられる時代である。
 
この本の特徴
如何にして“パールハーバー”は起こったか・・・
 
昭和14年に生まれて、物心つくと町の映画館でニュースの
「大東亜戦争」を目にし、絵を描けば急降下する零戦の絵ばかり
描いていた少年が、戦争が終わったときに聞かされた屈辱の言葉は。
「真珠湾攻撃は宣戦布告もなしで
闇討ち的に相手を奇襲した卑劣な開戦だった。」
それに続く数多くの口惜しい大人たちの言葉が続いた。
「大東亜に平和を齎すなんてとんでもない。
中国・韓国、近隣の東南アジア諸国を占領して
日本による制覇を狙った帝国主義侵略戦争だった。」
 
そして幾多の歴史の見直しは行われたが
太平洋戦争が日本と言う小国がアジア諸国を苦るしめて
西洋列強に楯突いた非道で残虐な戦いであり、
1941年12月7日(米国時間)の真珠湾攻撃が
その象徴的卑劣極まりない戦いの始まりであった
との認識はいまだに変わっていない。
2001年9月11日、
あのワールド・トレード・センタ攻撃のときですら
「パール・ハーバーと同じ」と多くの人は言った。
 
奇襲攻撃:あの米国のイラク進攻は今や
”preemptive strike”(先制攻撃)の美名を与えられて
世間を通用している。
歴史上正式な宣戦布告がないままに始められた戦争は
数多くあると言われる。
 
今、大東亜戦争、太平洋戦争史観、その議論を
繰り広げるつもりもないし、
ましてやそこに横たわるイデオロギーを論ずるつもりもない。
 
しかし、この書が世界の人々に、特にアメリカと日本の知識人に
与えるだろう苦渋の思いをどうしても拭いきれない。
決して「やっぱりそうだった」との拍手喝采では済まないのである。
 
この雨の日、コスターの自著に関する解説は
「ノモンハン事件」を扱った中国か韓国製の安っぽい映画で始まった。
この事件はこの著でも比較的懇切に扱われている。
しかしこの「ドンパチ ドンパチ」映画があまりにもくだらないので
私は抗議した。時間が勿体なかったからだ。
 
この夜の聴衆の大部分にはこの書物の意味は分からないようだった。
大方の出版記念会がそうであるように
聴衆はその場で250ページのこの本が売られ
著者の署名が得られるものと期待したらしい。
ところが「さに 非ず」。
最近は出版、配布はアマゾンに牛耳られるものらしい。
私と他に一人だけ自分で読み終えた本を携えてサインを貰った。
これも新しい出版事情であった。
 
前もって読んでいる私の、同書に対する感想は大略下記である。
結論:So what? 「それがどうした?」
日米の戦争の谷間でアメリカのルーズベルト政権の重鎮に
ソビエトのスパイが介在していて、
Agent Of Influenceとして働いた。
その結果アメリカと日本が戦うことによってソ連の望んでいたように
極東においてソ連が第二戦線を開かないで済んだ。
その中心人物がHarry Dexter Whiteだったと言うのである。
イメージ 2
上):ハリー・デクスター・ホワイト。本書はこの人物の来歴から一部始終を語り、戦争終結直前には、ケインズと共にブレトンウッヅ会議にも出た国際経済論壇の重鎮であったことを語る。戦後、この一連の反米活動の嫌疑で議会の査問を受ける直前、自殺とも取れる劇的な謎の死を遂げる。その項もワクワクする調査と叙述に満ちている。 
 
大統領ルーズベルト、その財務長官モーゲンソー、
国務長官ハルなどの動きはつぶさに描写されている。
ホワイトがこの謀略を実際にどう仕組んだかは具体的には描かれない。
然し、究極の「ハルノート」に至る
アメリカ側の極東分析、日中戦争分析、
其処に絡むホワイトのマルクス主義経済学的社会経済分析は重みがある。
特に戦後の日本復興計画を含む世界情勢構想は無視できない。
 
Agent Of Influence
因みに“Agent Of Influence”と言う言葉は私などには懐かしい言葉だ。
日本が復興すると一貫して続いてきた日米貿易戦争(繊維、テレビ、自動車)が1900年代の後半、半導体などで更に盛んな頃この言葉がよく使われた。
端的に言えば“ロビーイスト”と言われた人たちである。議会筋に働きかけてあるグループ、ある国に有利な立法を図る活動家、その情報収集・支援団体を指した
 
著者コスター氏の歴史資料咀嚼力
明治維新を経て1900年代に入り日露戦争、韓国併合、第二次世界大戦、大震災、アメリカ移民法改正、などの近代日本史の概略を経てコスタは難しいまでも1931年(昭和6年)からの日本近代史をかなり正確に捕えている。私見だがこの種の歴史考察には「揺るぎのない史観」「原資料に迫る分析力(特にこの場合日本資料蒐集力:翻訳力)」「渉猟資料の多寡」がからむ。コスターはこの何れをも克服している。私は感心した。巻末の付録(下記)を見ても如何に資料を調べて書いたかよく分かる。私は草稿の時から注目した。恐らくは蒐集した資料・データの相当部分を最終版では載せきれず割愛したのではなかろうか。それが叙述の冗長・重複を避けるためのものであって本著の簡潔・直裁性を何ら損ねるものでないことを祈る。とにかく事は「私(番野)の全一生をカバーする時間的スパン」の民族と世界の歴史なのである。 
 
A NOTE ON SOURCES (出典)        ページ219-224
BIBLIOGRAPHY (文献)              225-238
INDEX (索引)                239-250
 
余談 
12月6日のコスター講演での会話で私はひとつ冗談を言わせてもらった。
「コスターさん、この間の日本の歴史の記述に関しては
予期以上に正確・詳細で感心しました。
ただ詰まらないことですが例えば
『山本五十六がfluent Englishを喋った』と言う記述がありますが、
これは冗談でしょう。」
これに対して、
「山本は在米駐在海軍武官だったんですよ。」とコスター。
そんなことは知っています。だがこれは一本とられました。
駐米海軍武官が碌な英語も喋れなくて数年間もワシントンに駐在し
デトロイトほか各地を視察する訳がないじゃないですか。
Koster氏はメリカ人なら誰でも抱く日本人の英語下手に対する
呆れる気持ちを冗談にしたんですね。
 
もう一つの与太として私は質問しました。
1942年ブーゲンヴィル(Bougainville)で山本五十六提督乗機が
撃墜されたときは既に通信暗号は読まれていたんでは?
”When Admiral Yamamoto was shot down in 1942,
wasn’t it that radio code had been already broken? ”
コスター氏は既にそのような説があることを示唆しました。
 
氏の山本五十六に関する記述は阿川弘之ものには殆ど依存していない様子だ。
阿川の「山本五十六」「米内光正」「井上成美」の海軍三部作を
長年愛読した私は今回少し反省している。
つまり阿川の海軍予備学生的、(江田島恋しにも似る)
帝国海軍観は少しセンチ過ぎるのです。
これが盲目的な昭和天皇肯定、天皇制維持思想と一連のもの
との思いがしきりにします。
 
この本の日本の昭和史の叙述の中で特徴のあるのは
「三笠の宮」が小反乱(反乱未遂)に一度ならず担がれている
ことを仄めかしていることです。
一方、他の部分で昭和天皇があたかも「暗愚の天皇」と
一部で考えられたかのような記述もあります。
共に、日本国内の報道・歴史記述では決して触れない
「禁忌」事項でしょう。
イメージ 3
 
写真左上は1941年1月赴任途中パールハーバに寄った駐米大使野村吉三郎が
米軍海軍高官と握手している写真。2/26事件、昭和天皇。
 
本書での日本昭和史の史料収集、分析は一流のものと思う。 
コスター氏の近代日本関連歴史記述で優れている一つの例は
A級戦犯広田弘毅の記述です。
コスターの細君が九州の女性であることも影響しているかも知れません。
城山三郎の広田関係記述を多用していることも関係あるかもしれません。
 
イメージ 4
写真:広田弘毅、近衛文麿。
 
結論的に、「東条は自ら罪を一身に背負って散った忠臣。」
「帝国日本に罪ありとすれば最大の戦犯は昭和天皇。」
と当たり前の結論に至っているように見えます。
然し、これが未だに天皇制を是とし、皇室を尊崇する日本大衆と
どう結び付くか。コスター氏には関係ないテーマなのです。
 
イメージ 5
 写真:私宛に 自署してくれました。
 
この著をより深く理解するについて私の今後の興味と詮索課題:
①アメリカにおける国際共産主義(コスターの研究の追跡)
②コミンテルンそのものは日本・アメリカ双方にどう対応していたのか。
③マッカーシイズムへの新たなる興味。
そして最後に
日本でこの著の真面目な翻訳が出ればいいな、と思うし、
日本人がこれを読んで
「それ見たことか」と過度に”ウハウハ”しないことを祈っています。
(おわり)                                              
補遺 イメージ 6
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 イメージ 8





上はそのタブロイド週刊新聞と同氏の拠点、その連載コラム”Outlaw Journalist”
著者John Koster(写真左:書籍メデイアから) 
The Ridgewood Times,
The Villadom Timesの記者。
元 Bergen Recordの記者であった。
アメリカの歴史、特に軍事・インデイアン伝承などの著作が多い。多国語に通じていると言われる。今回の著作もロシア語・韓国語・日本語、それぞれに専門家を上手く使って調べ、まとめ上げた模様である。私がこのテーマの奔りにめぐり合って我がブログに一部を載せたのは四年前2008.12.9のことである。ご当人は私の隣町Glen Rockの住人でシズコ夫人は日本の出身であり、お子さんが二人いる。(おわり) 

この記事に

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    >あのワールド・トレード・センタ攻撃のときですら「パール・ハーバーと同じ」と多くの人は言った。
    このような声があったことすら、ぼくは知りませんでした。

    蓮

    2012/12/16(日) 午前 11:25

    返信する
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    当時の我がブログ、2007.4.3再録の「歴史が分断される日」参照。
    『パールハーバー以来』・・・・・・テレビで「パールハーバー以来の」という言葉がでてきて我々の耳に障る。ただ一人はっきり「少なくともパールハーバーで日本が攻撃したのは軍事目標だけだった。」と言ってたしなめた元大統領選候補ジョン・マケイン上院議員(共和党)がいる。しかし庶民の感覚として今回「パールハーバー」を想起した人が多いのは分らないでもない。実際には「パールハーバー」を実体験で覚えているひとはもう少ない。・・・・(以上当時の番野通信)
    アメリカ一般大衆の「パールハーバー」に対する感覚は今でも大きくは変わっていないでしょう。連さんがこのような反応を知らなかったとしても無理からぬものを感じます。偏った報道しかしない日本のメディア、それにしか依存できない日本大衆の「さが」として一概に非難できません。あのとき以来、「同時多発テロ」と言うこちらではあまり聞かない新語を作り出し、多くの日本人がこの言葉を使いだしたのも日本における「マスコミの国民洗脳効果」の一つとして強烈な印象に残ります。

    ban*o3*

    2012/12/17(月) 午前 9:35

    返信する
  • コメント
    ありがとうございました☆

    ゆーみん♪

    2012/12/22(土) 午前 0:37

    返信する
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    山本五十六の英語力について。『山本五十六がfluent Englishを喋った』?
    英学熱盛んな明治期生まれ、海軍兵学校出身。1919年(大正7)−1921年(同9)米国駐在。その間どういう形でかは知らないが"ハーバード"に籍を置いたと言うし。相当な英語力があったのではないかな。少なくとも今はやされる著名代議士なんかの「米国留学経験」より本物だった可能性ありますよ。帰朝後も趣味の雑誌をアメリカから取り寄せていたと聞きます。「日英同盟」期の育ち、海軍さんは英語に触れる機会が多かった筈です。兎に角、明治生まれの英語を見くびってはいけませんよ。"OK" じゃなくて"ALL RIGHT"だったにしてもね。

    [ onn*b39 ]

    2013/3/15(金) 午前 10:47

    返信する

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