私書箱2006

人生には、始まりしかない。Dans la vie,il n'y a qu'un commencement.

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成瀬巳喜男監督作品の「乱れ雲」を見て

またまた神田の神保町シアターへ行き、成瀬巳喜男作品を鑑賞した。今回見たのは、1967年昨の「乱れ雲」で、司葉子と加山雄三が主演する哀切極まる悲恋物語。

成瀬作品の常連女優である高峯秀子や杉村春子は、その投げかける視線だけでも演技ができると言われるほど、非常に表現力豊かな演技派女優であるが、この作品で主演した司葉子は、そんな演技派女優ではなく、原節子と同じく、作品に大きな存在感を与える美人派女優と言えよう。この作品では、司葉子は、加山雄三演じる商社マンが起こした交通事故によって、通産省に勤務するエリート官僚の夫を亡くした妻を演じる。事故の責任を負い、司に最大の償いを試みようとする加山に対し、司は冷たく接する訳であるが、そんな司のクールな心が加山の情熱によって、少しづつ溶け出し、ついには、二人が恋に陥ると言う物語である。作品前半では、司のクールな美しさが強調されているが、後半では、それが映画タイトルの「乱れ雲」を象徴するように次第に乱れ始め、加山とホットな関係へと進んで行く。クールな態度を示していた司が、加山から接吻を求められ、司の腕が加山を抱き締めるシーンに何とも言えぬエロスを感じた。「エロスの女神は、理性の中に存在する。」と言われるように、クールな人が突然ホットになる瞬間、エロスの神が出現する。早朝の経済番組に時々出演する美人のエコノミストが、経済の堅い話ばかりする中で、面白い記事を見て突然笑みを浮かべホットになった瞬間、エロスが感じられた。

理性の中に宿っているエロスの女神が、ふとしたことで理性から感性に移る瞬間、人はエロスの女神と出会う。

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