木製メーロ

小説、始めました。だらだら、ダラダラ。

あなたの町にて(7)/ロボとロボット(1)

君は昔、おじいさんに教わった。

“空を飛ぶには勇気が必要だって”ね。

 



あの時から、君は成長した。でも、まだまだ子供。未成年だから。





夜景が見える。

一望できる。町。


大都会ではないから、それは『満天の星空』ではないけれど、それで十分。


強い風が吹いた。

冷たくて、乾いた風。


君の吐く息は、いつもより白い。そして濃い。










 空を飛ぶには勇気が必要だって









クリームのマンションの屋上は、夜になるとすこぶる寒い。



君は震えている。


君は震えている。


君は震えている。





「空を飛ぶには」






君の名前は『ロボ』

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あなたの町にて(6)/ハナコとナナコ(2)

 ハナは坂を上りきったところで振り返った。


赤い。いや、紅い。

空が真っ赤だ。町も全部真っ赤だ。



ハナは純粋に感動している。カンドーだ。うわぁ、って、思わずため息が漏れた。それで、もちろん撮る。食材のたっぷり入ったスーパーの袋を地面に置いて、肩からぶら下げたカメラをしっかりと構える。


町と空を一緒に写した。



写真はイメージ通りには撮れない。それはハナが『アマチュア』だから、っていうのもあるけど、基本、写真てそんなもんなんだ。そんで、それが一番の魅力。現像してみると、毎回思いがけない仕上がりになっている。明らかな失敗作もあるけど、最近は良い意味で裏切られることが多い。ピントがずれてるのが、逆に良い味出てたり。それが楽しい。今回のもきっと裏切られるんだろうな。って思った。

いつもいつも裏切るカメラを、ハナは信用している。





真っ赤だった空は日が沈んでいくにつれて色がしぼんでしまう。

鮮やかな赤色は紫っぽい色に侵食されて、行き場を失って、それでどこかに沈んでいった。



ハナの家まではあと徒歩10分ぐらい。でもハナは歩くのが遅いから15分だな。


街灯が灯った。みんな一斉に、チカチカ、って。


あたしの帰りを出迎えてくれたの?って思って、すぐに、そんなはずねーだろって自分で自分につっこむ。


腕がきつい。食材とか、買いすぎた。そうだ、ナナのご飯も入ってるんだ。

重い。



しばらくして、やっと公園までたどり着いた。狭くて、ボロくて、最近は誰も使ってない公園だ。粗大ゴミの不法投棄が目立つ。夜に通ると、遊具のパンダがやけに不気味に見える。でも目印。ここの角を曲がれば家はもうすぐだ。ナナコがお腹をすかせて待ってる。


ハナはナナコの顔を思い浮かべて、少し微笑んで、重い袋を握りなおした。








公園の角を曲がったときハナコはナナコより先に馬に出会った。




目の前に馬が現れた。馬と鉢合わせた。










『ウマ!!!!!!』



それだけ感じて、あとはハナの思考は完全に停止して。



完全に固まっている。





スーパーの袋が地面に落ちた。



ドサッって。音だけが暗闇に響いた。

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あなたの町にて(5)/ハルキの走り方(1)

 夕方。六畳。薄暗い。



ハルキは押入れの中を掻き分けている。




ガサガサ、ゴソゴソ、バサッ



バサッ!





もう、寒いなって思って、それでダウンジャケットがここに眠ってるって思って、だから探している。

汚い服が何重にも重なっているそこを掻き分ける。掻き分けては投げ捨てる。

部屋中に服が散らばっていく。




で。





ようやく一番奥のほうに見つけた。

モコモコのダウンジャケット。

今年の冬はこれ一枚で乗り切る。


パッパッて、手で払って、着てみた。

なんかくさい。でもあったかい。


それを着たまま、上半身だけモコモコになったまま、部屋に散乱したきったない服たちをまた押入れにぶち込む。


布団の上のTシャツとジャージとジーンズをいっぺんに持ち上げた。そのときハルキは馬と目が合った。



合った。


馬のかぶりものだった。それと目が合った。


腕に抱えたTシャツとジャージとジーンズがバサバサっ、って床に落ちる。ハルキは馬から目をそらさない。馬もじっとハルキのことを見つめている。


ハルキはその馬を拾い上げて、見つめた。


こんなん、買った覚えがない。




でも



「お前、かわいいな」


だった。ハルキは今日はじめて声を出した。言葉を発した。


かぶってみる。かぶりものの馬だから。だからかぶる。ハルキはその馬と同化する。


奇妙だ。



頭部が馬で、胴体がモコモコで、下半身がトランクス一枚なんだ。


ハルキは姿見で姿を確認する。姿見だから。





何とも思わない。




でも、色々ポーズをとってみた。




馬は視点がが合ってない。焦点が合ってない。半分死んだみたいな表情で、でもハルキは笑っていた。




そのまま外に出てみることにした。

ズボンは、穿いた。



玄関の扉を開けると、空が真っ赤に染まっていた。もうじき日が暮れる。

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