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No.416_Courage Russian Imperial Stout 1989 (Aged 19 years)

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Courage Russian Imperial Stout 1989 (カレッジ・ロシアン・インペリアル・スタウト 1989;イングランド/不詳※)容量170mL、アルコール度数10.0%、原材料:大麦麦芽(ペール、アンバー、ブラック、ピルスナー)、糖(16%)、ホップ(ターゲット)。初期比重1.098(1.104?)、ボトルコンディション。インペリアル・スタウト。

ニップサイズ。20年ぐらい経たエールを色々と開栓してきた人ならばお分かりと思いますが、王冠内側はこれ以上望めない完璧な状態(写真参照)。液面下降なし。以上は、密閉性が担保されている証拠です。瓶底に沈殿物は微かにしかありません。

泡立ちは殆どありません。極めて華やかなアロマ。コニャック、干し葡萄、パンのアロマ。口に含むと、これらの力強い香味に加え、アモンティリャードのような酸味があり、心地よい複雑性をもたらしています。タールの風味、木のような苦味。このエールに独特な、異様に艶やかな花の香り(金木犀?)が鼻腔を抜けます。フィニッシュにビター・チョコレートのような風味が立ち上がり、舌表に炭のような強烈な苦味の記憶を残します。アルコール感はさほど感じさせず、丸味があります。しかし、体は少々熱くなる。ごく僅かなカーボネーション。強力なボディ。(アフターテイストを除けば)スタウトというよりも、漆黒のバーレイワインに近い。絶品。

「伝説」と化したインペリアル・スタウトです。古いビールファンならば懐かしいでしょう(かつて日本ビール株式会社が輸入していました)。瓶詰め後、醸造所によれば、10年目が飲み頃とされていますが、今回のものは、19年熟成です。

ロシアとイングランドとのビールに関する通商は、後にオルソップ(Allsop)醸造所を創立したベンジャミン・ウィルソン(Benjamin Wilson)によって1746年までに確立されたとされています。これはどちらかというと、バートンのエールに関する史実に属しています。通常、インペリアル・スタウトの起源として言及されるのは、何といってもバークレイ・パーキンス(Barclay Perkins)・インペリアル・スタウトでしょう。

スレールズ・アンカー醸造所(Thrale’s Anchor:1616年設立/ロンドン)という歴史のある醸造所が、バークレイ・パーキンス醸造所(Barclay Perkins:ロンドン)の起源です。スレールズ・アンカー醸造所のオーナーだったヘンリー・スレール(Henry Thrale)は1781年に没し、銀行家でクエーカー教徒でもあったバークレー(Barclay)家と元々スレールズ・アンカー醸造所のスーパーヴァイザーであったパーキンス(Perkins)氏の共同経営体制が敷かれました。

この頃(つまり、1780年頃)から長期保存の可能なインペリアル・スタウトを造り、バルト海沿岸に輸出していたそうです(その初期比重は1.100だったといいます)。これは、今回ご紹介のカレッジ・ロシアン・インペリアル・スタウトの前身で、主にダンチヒ(Danzig/ポーランド・グダニスクの旧称)経由で、バルト海沿岸、ペテルスブルグで消費されました。ナポレオン戦争の災禍のなかの話であり、それは相当リスキーな貿易であったことは、容易に察せられます。

社会背景として、スチームエンジンが用いられるようになり、ポーター/スタウトの大規模醸造が行なわれ始めた時期と一致しますが、ポーター/スタウトの輸出のために、腐敗しないよう、より比重が高められたと考えられています。一方、初期のインペリアル・スタウトはバーレイワインに酷似したビールだったことも指摘されています。多くは木樽による輸出だったため、ブレッタノマイセス系酵母による二次発酵が促進されたビールだったと推測されています(※※)。

1799年頃には136,000バレル、1827年頃には276,000バレルとロンドンで最大規模の醸造所に成長したバークレイ・パーキンス醸造所にとって、ロシア輸出の占める割合は甚大というわけではありませんでしたが、エカテリーナ2世(1729-1796年)を含め、宮廷ではインペリアル・スタウトは熱狂的に飲まれ、“インペリアル”の名の語源となったといわれます。

それはロシアの冬の時期に体を温めてくれるビールとして、クリミア戦争(1854-1856年)の際には、ロシア兵たちに愛飲され、彼らを力づけたといいます(クリミア戦争は、イギリスを含む同盟軍とロシア軍との戦いだった!)。このとき、ベルギー人/ル・コック(Le Coq)が仲介人として振舞い、そのような背信行為も可能だったのです。

第一次大戦までロシアへの輸出を続けたとされ、その名残というべきか、カレッジ製のものもラベルにはロシア語でエカテリーナ2世に関する文言が残されています。

1955年にバークレイ・パーキンス醸造所が廃業した後、旧カレッジ醸造所(現:ハイネケン/スコティッシュ&ニューキャッスル)がこのビールを継承。1980年には、ロンドンでの醸造を停止すると発表し、様々な醸造所に点々と委託して同じレシピで造られました。1990年代に入り、タドキャスターのジョン・スミス醸造所に承継され、1993年に惜しまれつつも醸造停止となりました。

初期比重はボトルには1.098とありますが、ロジャー・プロッツ(Roger Protz)によれば実際はこれよりも高いとのこと(OG 1.104)。木樽で2ヵ月間熟成させた後にボトリングされ、1年間さらに瓶内熟成させてから出荷されたという、手の込んだ品です。

CAMRAでは1991年以来、GBBF(Great British Beer Festival)において、ボトルコンディション・ビールのコンペティションがありますが、そのためだけに1993年以降も臨時醸造は行なわれています(1993年・第3位、1994年・第1位、1996年・第3位に入賞)。その後、2003年のGBBFにおいてカスクでこのビールが登場しましたが、これはスコットランドの某醸造所で造られたものとされ、秘密にされています。

【参考文献】
Jeff Evans. Good Bottled Beer Guide, CAMRA Books (2001), p.205.
Roger Protz. The Taste of Beer, Phoenix Illustrated(2000), p.102-103.
Roger Protz. The Real Ale Drinker's Almanac, Neil Wilson Publishing(1993), p.71-72.
Michael J. Lewis. Stout, Brewers Publications(1995), p.23.
Ian S. Hornsey. A History of Beer and Brewing, RSC Paperbacks(2003), p.554-565.
H.S. Corran. A History of Brewing, David & Charles(1975), p.121, 143-144, 151-152, 212.
Michael Jackson. The World Guide to Beer, Quatro Limited(1977), p.170.
マイケル・ジャクソン. 世界のビール案内, 巽かおり訳, 晶文社(1998), p. 196.

【注】
※ロンドン、ヨークシャー州(タドキャスター)などが考えられるが詳細は不詳。

※※
ランビックのブレッタノマイセス系酵母も、実は大半が“空中から舞い降りた”ものではなく、樽由来ということが想起される。Hubert Verachtert先生によれば、ランビックの発酵に関与する多様な微生物が、どこに生息しているかを具に研究した結果、ブレッタノマイセス属は野外空気中にも醸造所空気中にも殆ど生息せず、主に樽内発酵中にのみ検出された(Hubert Verachtert, René De Mot. Yeast: Biotechnology and Biocatalysis, Marcel Dekker(1989), p.458.)。フランク・ボーン(Frank Boon)氏も似たような説明をしている。

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こちらは、「絶品」とのこと、一度試してみたいです〜。
泡が立たないビールというものもあるのですね。初めて見ました。

2008/7/11(金) 午後 9:37 Maman

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樽による2次醗酵からして酸膜酵母によるフロールがアモンティヤージョのようになったのでしょうか?作り方がまさにシェリーと同じ製法のようです。

2008/7/12(土) 午前 0:38 [ we_lovek_mini ]

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Mamanさん、こういう品は間々あります。ただ、本来はこのビールはもう少しだけ泡が立つのですが,,,,(・_・)

2008/7/12(土) 午前 3:51 [ brillat savarin ]

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like_a_noodleさん、アモンティリャードの場合、フィノの産膜が何らかの経緯で消失してオロロソ様に酸化熟成するのですが(現代の製法ではアルコール度数を高めて強制的に産膜を消します)、このエールでは産膜そのものが無いと思います(勿論、ソレラ・システムも用いてません)。

2008/7/12(土) 午前 3:53 [ brillat savarin ]

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19年熟成ものですか〜!これはすごいですね〜。
しかも、密閉性もしっかりとしていて、状態もいいとあれば、最高の一品だったことでしょう。
解説を読んでいるだけで香りが漂ってきそうです。

2008/7/12(土) 午前 11:44 かれん

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かれんさん、19年経て、なおも素晴らしいインペリアル・スタウトで、心から飲み切るのが勿体無いと感じました・・・。

2008/7/13(日) 午前 2:03 [ brillat savarin ]

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これは凄いものをお持ちですね。
参考までに保管状況をお知らせくださると幸いです。

2008/7/14(月) 午後 0:28 samuchosamucho

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Samuchoさん、このビールは12〜13度で保存されていたものです。目が飛び出るほど珍しいというものではなく、意外と知られていませんが、イギリスにはかなりの量のヴィンテージ・エールを蔵しているコレクターが存在し、稀に放出されます。今回の銘柄でいうと、1985年物も私の手元にあります。

2008/7/14(月) 午後 11:40 [ brillat savarin ]

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内緒さん、そちらのゲスブにコメントを残します。

2008/7/15(火) 午後 11:15 [ brillat savarin ]

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すごいな〜ほんとに〜 がこれを見たボクの第一声ですよ。
めずらしく、貴殿がむちゃくちゃ褒め称えていますね(笑)
最後の一口でいいから恵んで欲しいぐらいですよ。

2008/7/19(土) 午前 0:06 ジン君

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ジンさん、これは今年のベスト3に入る予感です。貴殿の一口は、60mLくらいありそうです!

2008/7/19(土) 午前 2:30 [ brillat savarin ]

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