■No.692_Füchschen Alt (Im Füchschen)
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Füchschen Alt (フュクスヒェン・アルト;ドイツ/ノルトライン-ヴェストファーレン州)。アルコール度数4.5%、原材料:大麦麦芽(4種)、ホップ(ハタラウ)。非加熱。アルト。 アルトとしては若干ペールカラーな部類に属していると思います。ややホップの青みがかったアロマ。弱いモルトの甘味に対して、やや強く感じられるホップの苦味。ボディはライトで、非常に軽やかな飲み口があります。フィニッシュの苦味にやや平板さ。非常にドライな印象で、非常にドリンカブル。 故マイケル・ジャクソン氏の名著『ビア・コンパニオン(Beer Companion)』では、イム・フュクスヒェン(Im Füchschen)は「お客が喜んで相席で座り、一見の客でも席を譲って招き入れ、知らない人を入れるために席を詰めるようなところ」と評されています。 デュッセルドルフの街には、ツム・ユーリゲ(Zum Uerige)、ツム・シュリュッセル(Zum Schlüssel)、新市街のブラウエライ・シューマッハー(Brauerei Schumacher)、旧市街にあるその分店(Schumacher Im Goldenen Kessel)など、“ビール好きが是非とも立ち寄りたい名店”が幾つかあります。 どれも素晴らしい場所なのですが、イム・フュクスヒェンほどジャクソン氏の先の解説がピッタリ来る店は、やはり在りません。 写真1枚目の背景に写っている御婦人達は、ごった返す店内で、店員が誘導したわけでもなく、私と相席になり、相席ついでに自分達が注文した様々な料理を頼んでもいないのに私に取り分けて下さった方々だと書けば、そのことを納得して頂けるでしょうか(実際そうなのです 笑)。 “イム・フュクスヒェン”は、逐語訳すれば“子狐亭”といったところです。このブリューパブは、ホーフ・ガルテン(池のある美しい公園)に程近い、旧市街の北に位置しています。 つい最近まではデュッセルドルフで最も小さい醸造所の1つに数えられており、Steve Thomas(2006年)によれば年間生産量は1,500kLでした。しかし、2008年には年間生産量は2,670kLとなっていました。 歴史上、1640年には現在のブリューパブの場所に醸造所が存在したことが確認されています。現在の名前は1848年にこの醸造所が買い取られて以来のことです。1908年にケーニッヒ家(König)がこの醸造所を買い取り、現在まで当家がこのパブを運営しています。第一次大戦を挟んで醸造所は閉鎖されましたが、1930年に再開されました。1995年以来、ペーター・ケーニッヒ氏(Peter König)により運営され、醸造設備の近代化が行われています。また、2001年頃から若者の間でイム・フュクスヒェンのビールが注目され始め、カルト的な人気を得つつあるといわれています。 Sylvia Kopp女史(2010年)によれば、フュクスヒェン・アルトの主発酵(14〜18℃〜)は開放型発酵槽で行われます。2〜4週間のラガーリング期間には、「木片のチップが用いられている」そうです。 この木片チップの使用については、稀に誤解されている方がいますので少し付言しておきます。これはいわゆる「ビーチウッド・エイジング」であり、ラガーリング時によく煮沸殺菌・洗浄したブナのチップを、貯酒タンクに沈めてビールの清澄化を図る手法で、ウッディな個性をビールに付与するためのものではありません(従来、バイエルン地方〜ボヘミア地方を中心に行われてきた手法ですが、ドイツ人がブナ材を用いた最大の理由は、経験上、最もブナ材が樹脂等のウッディなキャラクターをビールに及ぼさないと考えたからです)。 デュッセルドルフ市内の約30のパブでこのビールを試すことができます。ボトルビールはスウィングキャップで流通していますが、5L缶も存在します。また、イム・フュクスヒェンで供される樽生ビールは50リットル容の木樽に詰められています(写真2枚目)。 なお、イム・フュクスヒェンでは、ジルバーフュクスヒェン(Silberfüchschen[銀狐の子];ABV 5.4%)という酵母入りヴァイツェン(へーフェ・ヴァイスビア)をレギュラーで生産しています。また、クリスマス限定品として、11月10日には通常のアルトよりもアルコール度数の高い、いわゆる「シュティッケ・ビア(Sticke bier; ※)」に類するヴァイナハツビア(Weihnachtsbier;ABV 5.2%)が生産されています。 【※】 シュティッケ・ビア:デュッセルドルフのアルトビールの中でも、期間を限定して醸造される高アルコール版の特別な品をシュティッケ・ビアという。「シュティッケ」は、“Stickum”という単語の派生系で、この地方の古い方言で「うわさ」を意味する。ユーリゲ・シュティッケ(Uerige Sticke)が有名で、これは瓶詰めされたものとして、日本でも入手できる。 【参考文献】 Garrett Oliver et al. The Oxford Companion to Beer, Oxford University Press(2012), p.768. Adrian Tierney-Jones et al. 1001 Beers You Must Taste Before You Die, Universal(2010), p.127. Michael Jackson. Eyewitness Companions Beer, Dorling Kindersley (2007), p.101. Michael Jackson. Great Beer Guide, Dorling Kindersley (2000), p.244. Michael Jackson. Michael Jackson's Beer Companion (2nd Ed.), Duncan Baird Publishers(1997), p.145. Steve Thomas. Good Beer Guide Germany, CAMRA Books(2006), p. 328. 長尾伸. ドイツビールへの旅, 郁文堂(2003), p.68-69. |





