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研究のプレスリリース

科学の研究においては、特に実験室で条件を設定して行われる研究においては、5W1H(who, when, where, what, why, how)のうち最初の3つ、すなわち「いつどこで誰が」というのは、研究のプライオリティを担保する以上の意味はなく、残りの3要素が研究対象となる。
気象の観測とか大気汚染の分析などは、場所や季節で変動があるわけだが、その変動には合理的な理由がちゃんと存在している。

研究の内容を発表する場合には、何をどうすれば、どういった結果がでる、その関係が担保されている必要がある。
「なぜ」が重要な場合もあるが、そこには、無理の無い理論的考察が貫かれている必要がある。



さて、松井氏の起こした名誉既存訴訟では、環境省主催の「第7回内分泌攪乱化学物質問題に関する国際シンポジウム」(平成16年12月15日〜17日、名古屋市で開催)の最終日に行われた「セッション6 リスクコミュニケーション」の場で、松井氏が講演中に京都新聞の記事を示したことについて、中西氏が批判的見解をHP上で掲載したことが問題になっている。
http://www.i-foe.org/


この点について論評するには、こうした研究の成果の発表の仕方について簡単に解説する必要があるだろう。
研究成果は、学術論文、特許、講演といったかたちで研究者本人によって公表され、またプレスリリースという形で新聞社に発表されたものを基にして新聞記事として公表される。

この中でもっとも信頼されるものは何かといえば、ダントツで学術論文である。
学術論文には、何をどうした、という点を明確に記載しないとまず審査を通ることは不可能だ。
また、結果と結論に飛躍がある場合にも審査の過程で文句がつく。
まれに、実験を再現しようと追試をしても、全然再現できないことがあり、これが世を賑わす捏造問題につながっていくが、これは別問題。

学術論文に比べると、特許や講演は審査が行われないものがそのまま公表される分、弱い。
また講演の予稿では再現に必要な十分の情報が記載されていないケースも多い。

何故研究者の業績として論文で評価し、講演などの評価が低いかの所以である。

これが新聞になると・・・、新聞ではプレスリリースを元に、その分野の専門では無い記者が取材して記事を書いているわけで、真実性の担保はより低下する。

私も取材を受けて研究成果を産業系の新聞に掲載してもらったことが何回かあるが、記者としてもセンセーショナルに取り上げたいわけで、実際とはだいぶ乖離したものとなっている。
「嘘」にはなっていなくても、自分では言えないな、といった内容に仕上がっていた。
そして、研究者は記事内容を事前に校正するような機会も無く気がついたら掲載されていることになる。

というわけで、科学者にとって新聞記事とはどのようなものだろうか?
世間へのアピールにはなるから、話題集めにはなる。
一方で科学的な重要性で言えば、新聞記事では、どういった結果が出る、という部分だけが取り上げられており、「何をどうすれば」という部分はほぼ確実に欠落している。
さらにいえば、実験結果すら無く、結論が取り上げられており、その結論がその研究の結果から導けるかどうかの検証が不可能なことも多い。
そしてその結論も研究者当人の考えとは大きくかけはなれていることもある。



こういったことが暗黙の了解としてあるので、中西氏が雑感に書いて、松井氏が噛み付いている

>学者が、他の人に伝える時、新聞の記事そのままではおかしい。新聞にこう書いてあ るが、自分はこう思うとか、新聞の通りだと思うとか、そういう情報発信こそすべき ではないか。情報の第一報は大きな影響を与える、専門家や学者は、その際、新聞や TVの記事ではなく、自分で読んで伝えてほしい。でなければ、専門家でない。

という文章は、研究者にとってはあたりまえのことでもあるのだ。

もちろん被告答弁書にある
http://www.i-foe.org/defendant/touben20050527.html
>すなわち、新聞は、往々にして、ニュース性のあるものを優先して、しかも刺激的な見出しを付けて掲載するのであるから、センセーショナルな見出しのついた新聞記事を、何ら専門家としての判断を加えずに、そのまま掲げて、問題があるような話をするなどということは、参加者に誤った印象を植え付ける危険性が高く、専門家としてのプレゼンテーションとしては適切ではない。

もあたりまえの研究者としての心得だ。

この前提については、松井氏と中西氏の間に共通理解があるものと思っていた。
松井氏は、研究者としてあたりまえのことを指摘されてしまったから、メールでクレームを入れて、そして今、名誉毀損だ、と訴えた。
そのように思っていた。

しかし、ここで、うん?、と思う事態が発生。

原告準備書面にある
http://www.i-foe.org/suitor/jyunbi20050715.html
> 省略〜 適切ではない」との被告の見方自体も、極めて一面的なものと言わざるを得ない。新聞報道においては、記者はもちろん客観的な事実に基づくものであるよう常に心がけて取材を行っているうえ、記事になるまでには客観的事実に基づくものかどうかの観点から二重三重のチェツクが行われている。その上で、さらに意見が対立しているような場合には、偏った報道を回避するために、異なる立場からのコメントを掲載するなどして公平性に配慮されているのである。もちろん、中にはオーバーランしたものも見受けられるが、総じて客観的事実に基づき公平性に留意した報道がなされているといえるのである。彼告の新聞に対すろ批判は、あまりにも一面的な見方と言わざるを得ない。被告は、それをあたかも全体的な問題であるように主張することにより、まるで新聞が日常的に不当な報道をしているかのような印象を与えかねず、これは新聞報道関係看に対するいわれなき批判に他ならない。このような被告の新聞批判の手法を見ると、一部にしかあてはまらず全体論とLては誤った事実に基づいて、一方的に他者を批判するというもので、本件名誉毀損行為の手法と全く共通するものであることがわかるのである。事実に基づかずにセンセーショナルな批判を行っているのは、むしろ被告自身なのであって、新聞批判を口にする前に、被告こそ自らの言動を客観化し、自己反省に努めるべきである。

松井氏もこのように思っているのだろうか?
研究者であればありえないことだが。

それとも代理人の弁護士が松井氏に内容確認せず好き勝手に書いてしまったのだろうか?
そうだとしても、これが「松井氏の主張」と受け止められるだろう。
こうしたものを裁判の場で出してくる(世間に公表する)、松井氏の弁護士が松井氏の名誉を毀損しているように見えて、他人事ながら心配だ。

それとも、科学ニュースに限定した話から、新聞記事一般に話題を広げてしまったか?
確かに中西氏の答弁書からは新聞一般を話題にしているようにも読めるし、中西氏のHPを見てもそういった意図を持っているように見えるが、無駄に論点を拡大しているように見える。

http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak311_315.html#313-C
TVや新聞社や出版社の社長が読んでも、赤面するのではないかと思うような内容である。

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