空の陶

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空の陶

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                              空の陶
               


                深夜、轆轤(ろくろ)は低く憂鬱なうなり声をあげ続けている。

           山中の小さな工房を覆い尽くして、宇宙の沈黙がゆっくりと回転している。


           とめどなく流れ去る時間(とき)の中で、わけもなく確信しているこの生。

           確かな意味がそれにはあると、言える拠り所を君はなくしたことはないか。

            生成の巨大な流れに抗いようもなく、しがみつく藁さえないと気付くとき、

       宇宙を満たしているものは真空で、それこそが私たちの生きる世界なのだと知るだろう。

      不意に自己の意識は破裂して宇宙の真空とつながり、懐かしい連続性へと解き放たれる。



                 回転する轆轤からしなやかに立ち現われる土の殻。

                           殻の中は空だ。

                     空の無形を俺は倦むことなくなぞる。

                この身の深奥より湧きあがる盲目なる生命の意志のまま、

                現れては消えゆく刹那の形を、ただ探り続けているのだ。

                          そして君に捧げよう。

                      この儚(はかな)い殻で包まれた

                  一切の空、小さな宇宙、一度限りの花の幻。
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開設日: 2006/2/20(月)


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