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カワサキZR-7Sについて

世の中には不人気車という車種がある。その多くは時代が時代なら多くの支持を集めただろうと思わせるモデルだ。流行の移り変わり、経済の好不況、時代を先取りしすぎた等々の理由によって運悪く不人気車となってしまったわけだ。現に、そうした不人気車が生産終了後暫くして人気を博する事も多い。

だが、そんな不人気車の中でもどの時代、どのタイミングで発売されていようと絶対不人気車になっていただろうと思うモデルがある。不人気車となるべくして不人気車となったモデル、それがこのカワサキZR-7Sである。

イメージ 1
空冷4気筒2バルブという化石のようなエンジンと、ハーフカウル・モノサスという装備の組み合わせはいかにもチグハグだ。そもそも、この空冷エンジンはゼファー750と同じパワーユニットである。10,000回転という比較的高回転まで回る割には最高出力はたったの67馬力、トルクも5.8kgf-mで打ち止めである。ゼファーのように雰囲気と質感を重視する正統派ネイキッドであればいざ知らず、近代的なフォルムの本車に67馬力は何とも似つかわしくない。事実このバイクはかなり販売不振に苦しんだようだ。兄弟車のゼファーがバカ売れする中、ZR-7は新車が乗り出し55万円程度で叩き売られていたと言う。

見た目はともかく乗り味はどうか。まずエンジンだが、750ccだけあってトルクが比較的下から厚く低速時の安定性は高い。が、車重が重いので加速性能は最新の400ccと比べて若干速いかどうかといったレベルだ。高回転時は回転がバラつくし、空冷のためかメカノイズも大きい。振動も高速走行時にはやや気になるかもしれない。ただ、それらの性能と引き換えに静粛性は極めて高い。

ブレーキ性能は一言で言えばプア、重いくせに効きが悪い。足回りもお世辞にも良いとは言えず、フニャラカしてる割には路面のギャップをよく拾う(これはタイヤの品質によるものかもしれない)。無論、ハンドリングは言うに及ばずだ。倒し込みは重くそれでいて戻しも重い。ワインディングなどを走っていると正直冷や汗ものである。

いや、ZR-7Sはスポーツバイクでは無い、ツアラーであるという見方もできるだろう。ではツアラーとしての性能はどうか。これも正直取り立てて見るべき点は無い。純正のスクリーンは防風効果が不充分だし、積載性も悪くはないが良いわけでもない。非力な750ccだからといって車重が軽いわけでは無く、むしろ重い部類に入るからその点もマイナスである。そもそも空冷4発というのがツアラーとしては絶望的だ。この鈍重な車体でオーバーヒートにでもなったら一体どうしろと言うのだろうか。

知人がこのバイクを購入した当初、私は正直アホかと思った。なぜよりによって数あるツアラーの中からこの不人気車を選んだのだと。彼のニーズは『快適なツアラーが欲しい』という物であったが、他にいくらでも快適でエキサイティングなモデルがあったじゃないかと。何が悲しくて750ccでありながらこれだけ非力で、しかも誰も知らないようなバイクに乗らにゃいかんのだと。

だがバイクはスペックにあらず、である。実際に乗ってみると見るのと聞くのとではまさに百聞は一見に如かず。その素姓の良さは立ちどころに理解できる。

一言で言えば、圧倒的に楽なのである。これほど楽なバイクはなかなか無いと思う。まず乗車姿勢は腰に負担が来ない程度の緩やかな前傾で、その上手足のポジションがゆったりしている。ちなみにシート高は80cmと決して低くは無いのだが、ボディがスリムなため足つきに問題はない。エンジンは捉えようによっては確かにダルいが、マイルドな出力特性はどの速度域でも安定した走りを実現する。重い車重と鈍重なハンドリングは高速巡航時には安定感となって跳ね返ってくるし、幅の広いシートはケツを痛みから守ってくれる。

何よりも秀逸なのが、燃料タンク容量が21Lもある点だろう。本車は燃費も安定していてリッター20km以上の燃費をコンスタントにキープできる。無補給で東京〜名古屋間を走り、更にあと数十キロ走れるのだ。ツアラーの中でもここまで航続距離が長いバイクは他に無いのでは無いか。付け加えると、荷掛けフックの数や位置、センタースタンドが標準装備されている事、インパネ周りのシンプルさ等、細かい点で趣味がよく、こうした魅力も捨てがたい。

『悍馬は名馬にあらず』という。凡庸で取り立てて特徴が無いというのはアピールポイントという点で販売戦略に影を落とすから、目立つスペックや外見を持つバイクが売れるのは当然の事だ。その点ではZR-7Sはアピールポイントに乏しい『つまらない』バイクという事になる。が、その凡庸さの裏には乗りやすく、シンプルで、燃費も良く、万事において無難という素姓の良さが隠れている。

ツアラーとして最も重要な点はこうした地味な点にこそあると私は思うので、その点から言えば『特徴が無いのが特徴』のZR-7Sは名車と呼ぶにふさわしい。現在新車では購入できないが、もし程度の良い車体が安く入手できるという条件付であればZR-7Sは胸を張ってお勧めできるモデルだ。こうした知る人ぞ知る名ツアラーが今やほとんど入手不可能とは、何とも残念な事である。

【おまけ】

冒頭で触れた様な理由から、日本では超絶不人気を誇ったZR-7Sだが、こうしたおとなしいツアラーに一定の需要がある欧州ではそこそこ好評を得たようだ。スズキのSV650もそうだが、こうした何気無い点に国民性というか、バイク一つをとっても価値観の違いが明確に出ていて興味深い。

事実、Wikipediaでは日本語のページにZR-7の記事が存在しないのに対し、英語・ドイツ語・仏語ではZR-7についての記事がある。中でもドイツ語版では詳細に書かれており、それによるとドイツで最も売れたカワサキ製のバイクは、現在のところZR-7であるという。

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こんにちは。
このページも参考の一つとさせていただき、今更ながらZR-7S買ってしまいました。貴重な情報有り難う御座いました。

2012/5/23(水) 午後 11:01 [ トランスポータ ]

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