水口章:国際・社会の未来へのまなざし

未来に向けてのコミットメント(地球村研究所のHPも参照ください。http://park1.wakwak.com/~cigvi/)

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国際テロ活動の脅威について

426日、パキスタンでは最高裁がギラニ首相に対し、法廷侮辱罪で有罪判決を言い渡した。同国で現職の首相が有罪判決を受けるのは1947年の建国以来初めてである。
同首相は最高裁に異議申し立てを行うとのことだが、有罪が確定すると憲法に基づき議員資格を失うことになる。
こうした政治情勢を受け、同国のザルダリ大統領は首相の後任人事や来年予定されている総選挙、大統領選挙の前倒しの検討に入った。
 
問題は、このパキスタンの政情不安が、アルカイダやタリバンなどのイスラム過激派武装勢力の活動を活発化させる可能性があることである。
アフガニスタンやインドではテロ活動に対する警戒の必要性が高まっている。特にアフガニスタンは気がかりで、415日に発生したカブールでタリバン勢力による大規模な政府施設への襲撃事件について、パキスン北西部に拠点を置く「ハッカニ・ネットワーク」犯行説が強まっている。
このハッカニ派について、米国はパキスタン情報機関との関係があるとの疑惑を抱いている。
 
さらに51日は、パキスタンでアルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者が米軍により殺害されてから1年目にあたる。
カーニー米大統領報道官は426日に記者会見で、この時期に合わせてイスラム過激派武装グループがテロ計画を実行することが考えられるとの見解を示し、関係機関への警戒を指示している。
 
2001911日から十年以上が経つ中で、米国では国土安全保障省が設置され国民の安全確保に努力が払われてきた。
しかし、「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)をはじめイスラム過激派武装組織が米国本土や海外の関係施設を標的とするテロ攻撃の脅威は、現在も続いている。
カナダの安全情報局(CSIS)のトップを務めるリチャード・ファシデン氏は、議会上院の反テロ委員会で423日、アルカイダはこれまでのグループ的行動から、単独犯による攻撃を呼びかけるようになっていると述べている。そうだとすると、犯行対策はより難しくなる。423日にロイター通信も英国、オーストラリア、米国の情報機関も単独犯への警戒を強めていると報じている。
 
こうした見方に鑑みれば、欧米社会内でのイスラム教徒への監視の目は今後強まり、さらなる対立の芽が生まれるとも考えられる。それは、人の移動の自由度を高めるグローバル化の影の部分がうつしだされたものともいえるだろう。

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シリアでのPKO活動参加問題と日本人の関心

北東アジアでは、北朝鮮と韓国間の緊張が高まっている。しかし、日本国内のメディアの関心は、小沢一郎衆議院議員の裁判で無罪判決が下りたことから一気に国内政局へと向かっている。
かつて日本では、国内メディアの関心が拉致家族問題に大きく傾き、北朝鮮問題で国交正常化を進め、国際的に大きな問題となっていた同国の核やミサイル問題の解決の糸口を見出そうとしていた外交が頓挫したことがある(拉致問題が重要でないといっているわけではない)。その時、国際社会は、日本国民が北東アジアの安全保障の確立より拉致家族問題の方が重要な政治問題となることを不可解だとしていた。
 
これから、メディアはおそらく取材しやすく国民の関心を引けそうな、小沢議員の裁判から民主党復党問題、そして9月の民主党代表選挙などの与党の党内情勢や、政界再編を視野に入れた衆議院解散関連の話題を大いに報じていくのだろう。そうなると、また日本国民の朝鮮半島情勢への関心が薄れることが懸念される。
 
日本に、政権交代があっても変わらない長期的な対外政策があれば、その政策を踏まえて外交政策や外交を執行することができる。しかし、現在のところ、政党を超えて、政治家、研究者、官僚が共有できる安全保障政策さえないように見える。
そのことによって、議員外交や地方自治体の国際活動などで、それらの目的はともかく、結果的に国際社会から個人ベースの対外行動だとのマイナス評価を受けてしまう「新たな外交課題」が生まれている。
 
今、日本を取り巻く国際環境は、小泉政権当時と類似しており朝鮮半島問題と、中東地域に関する国際貢献問題についての政策立案を迫られている。
小泉政権では、朝鮮半島問題に関する日米の国際協調がスムーズでなかったことから、米国の中東政策を、より積極的に支援した。
小泉政権当時のイラクでの国際貢献と、現在のシリアでの停戦監視活動との違いを上げれば、国際要因では、今回は国連から要請(425日)されている点である。
また、国内要因では、法的根拠について、小泉政権ではイラク復興支援特別措置法の国会審議が難航したが、今回のシリア問題は国連平和維持活動(PKO)であるため、野党が、停戦合意はあるが停戦状況になっていないことを問題視して政局に持ち込まない限り障害は小さいという点が挙げられる。また政策立案過程においては、当時の自民党と政府間の連帯性に比して、野田政権においては、政府内での政策調整(例えば外務省と防衛省)や、与党内での対立も懸念される。
 
シリアへのPKO派遣問題でポイントとなるのは、政策立案上、派遣された者が負う「リスク」をどう見るか、また、「国益」「国際協調」「人間の尊厳」といった外交政策を考える上での3要因をどのように分析するかである。さらに、南スーダンおよびゴラン高原での日本のPKOとの関係についても考慮する必要がある。
 
私の結論は、シリアでのPKOには貢献すべきというものである。
シリアへのPKO派遣は、次の3点が理由である。第1は、シリアで今後、平和的に市民が求める公正、公平な国づくりが進められるためには平和構築の必要性がある。第2に、1万人近くの死者や多数の難民が出ているに鑑みれば、派遣の緊急性はある。第3に、300人規模の停戦監視員による国際介入は、シリアの内政バランスを直接的に大きく変えるものではなく、均衡性があるといえる。
この点を踏まえ、日本政府が世界の平和を希求するとの憲法の理念に照らして、積極的に国際協調政策をとり、1カ国平均数人程度との国連の要請に二桁に近い派遣人数で回答することを期待する。
また、そのことが、シリアの人々の人間の尊厳を守ることになり、加えてサウジアラビア、カタールをはじめシリア情勢の鎮静化に努めている湾岸アラブ産油国への強いメッセージとなり、国益にもかなうことになる。
 
もし、今回のPKOが失敗に終われば、国際社会はNATO加盟国であるトルコ領内へのシリアの発砲を理由に、NATO条約第4条に基づいて、シリア領内に安全地帯や人道回廊を設置するという段階に入っていくだろう。
そうなると、シリアでの内戦が定着化し、犠牲者が今以上に増える可能性がある。それは避けるべき道筋だろう。
その意味で、国民もマスメディアも政局のみに目を向けるのでなく、北朝鮮問題をはじめシリア問題などの国際情勢に関心をもってもらいたい。

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中国の外交は変化するか

314日、北朝鮮は衛星(ミサイル)の打ち上げに失敗した。しかし、この打ち上げ行為自体が国連安保理決議違反であり、国際社会から厳しい非難を浴びている。
今日、確信犯的に安保理決議の履行をしていないのが、この北朝鮮とイラン、シリアである。そして、この3カ国に関する国連安保理の協議に深くかかわっているのが中国である。
では、中国は今後、この3カ国に関し、国連の場でどのような政策を取るのだろうか。
以下に考えてみた。
 
中国の対外政策では、(1)エネルギー資源の確保、(2)インフラ整備、(3)市場拡大、(4)武器輸出などが重要ポイントとなる。一方、このところ米国内で議論される中国のシーレーンただ乗り論や海軍力脅威論に呼応するような政策もみられている。
そうした状況において、注目される動きの1つが、41日に開催されたアジア政財界フォーラム(中国南部の海南島にて)で、李克強副首相(次期首相最有力候補)が国際協調路線を明言したことである。また、もう1点、中国政府高官が410日に、安保理決議1874号には中国も賛成しており、北朝鮮はそのことを「重く受け止めなければならない」と述べている点である。
この2つの発言からすると、中国は大きく「国益」を損なうことがない問題では、安保理での国際秩序づくりの抵抗勢力とはならないと考えられる。
 
今日、中国進出企業は、薄氏問題に加えて経済成長率の鈍化、野菜やガソリンなどの物価上昇など、同国の政治リスクの高まりに不安感を抱き始めている。その中で、中国が国際社会との対立を深める恐れがある政策を選択することは、国内政治をより難しくするとの配慮が働くと分析もできる。
したがって、中国は対外政策でも、薄氏問題でも強調しているように、社会主義法治国家として法律の尊厳と権威を守る姿勢を示すと思われる。
この点を踏まえると、中国は北朝鮮問題、シリア問題、イラン問題の順で国際協調度の高い政策をとる蓋然性が高い。
 
薄氏問題で傷ついた党と国家のイメージを、対外政策でどれだけ回復できるかは疑問だ。しかし、その中国の対外政策いかんで、国際社会の問題の解決の行方が大きく左右されることは確かである。
 

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イラン問題と日本の政策

イラン問題と日本の政策
 
330日、クリントン米国務長官がサウジアラビアのリヤドを訪問し、アブドゥッラー国王と会談した。同会談では、シリアおよびイラン情勢に加え、原油増産が協議された。
オバマ大統領は、これを受け、「米国防権限法」に基づき、イランの中央銀行との取引を行っている外国金融機関に対する制裁を発動することを承認した。これにより、イラン産原油取引が制限されることとなった。さらに、EUがイラン産原油を積んだ船舶への再保険を禁止したため、中国、日本などの損保会社がイラン産原油取引に対する保険を行わなくなっている。
これらの措置によって、イランの石油収入は減少していくと考えられる。
 
こうした状況にあるイランに鳩山元総理が、日本政府や民主党の意向とは別に、訪問することとなった。この鳩山氏の行動については、野党のみならず野田首相、玄葉外相も国会答弁で批判的な発言を行っている。
一方、鳩山氏は議員外交も含めて、「外交の一元化」に対する批判的見解を表明した。
 
日本の対外政策は憲法前文に謳われている内容を理念として、その実現に向けて対外戦略、対外政策を立案し、外交政策、外交交渉を行っている。この主たる事務を担っているのが外務省であり、外務省の下での外交の一元化が継続されてきた。
しかしグローバル化の深化にともない、国際交流活動を自治体やNGOなどが行うようになり、また、政府内では外務省以外の省庁も外交を行うケースが増えてきた。
鳩山氏のイラン訪問も、こうした多元外交の一つだと言える。
 
さて、ここで問題となるのは、外交を担う人々がどれだけ「国益」や「外交理念」についての共通認識を持っているかである。これが不十分だと、外交は一貫性を失うことになりかねない。
果たして、鳩山元総理のイラン訪問の目的は何だったのだろうか。
どうも、米・イラン関係を仲介するといった国際益のためというよりは、日本国内の企業(石油関連企業)やエネルギー関連問題などの国内要因で動いたように見える。
 
かつて、日本の外務省は、米国・イラン関係のパイプ役を果たし、レバノンでの米国関係者の釈放に関与したことがある。しかし、今回、そうした役割を鳩山氏が担っているとは考えにくい。
なぜなら、米国はイランとの対話は自らできると考えているからだ。
そうだとすると、鳩山氏はイスラエルのイラン攻撃は本気であり、イランは国際的協議のテーブルに着くべきとの助言をしようというのだろうか。
今回の鳩山氏のイランへの議員外交は、国連安保理で対イラン制裁に消極的な中国訪問後である。北朝鮮のミサイル発射が間近に迫り、日米の協調が非常に重要な時期となっている。その時期に、米国が日本に対して疑念をもつような行動は国益にかなうとは言えないだろう。
沖縄の米軍基地移転問題と同じ轍を踏まないことを願う。

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米国防権限法について

326日、「米・イラン制裁法の影響」をテーマに、BSフジ「PRIME NEWS」に出演させていただいた。
当日、ソウルでは第2回核安全保障会議が開催され、国内でも参議院で安全保障に関し興味深い議論が交わされていた。
こうしたタイミングも含め、テーマ、構成などはよく考えられていた番組だったが、私自身、もう少し噛み砕いた丁寧な説明をすべきだったと反省している。
そこで、以下に、言及できなかった点も加えて「米国防権限法」について考察してみたい。
 
米国防権限法は、本来は米国の国防費にかかわる歳出法案である。その法案の中にイラン中央銀行(CBI)制裁条項が挿入された。この「制裁」という言葉から、どうも対CBIへの直接的制裁と受け止められがちである。法的には、第三国の金融関係機関が、米国の金融関係機関との取引を継続することを望むならば、イラン金融機関との関係を断つよう迫る間接的制裁となっている。したがって、法が適用される場所は米国であり、対象はイランと金融取引をする第三国金融機関である。
 
米国の対イラン経済制裁は、1979年の在テヘラン米国大使館占拠事件で関係が悪化し、米国大統領令として制裁がはじまる。その後、1996年のイラン・リビア制裁法(IRSA200年改正)、2010年のイラン包括制裁法(CISADA)などが米議会で成立している。
これらの法案は、キューバへの経済制裁を謳った「ヘルムズ・バートン法」、ミャンマー制裁法などと同様で、国内法で外国企業の対外活動に対する制裁を行うというものである。このため、国際社会では、同法はWTO協定を含む国際法上、許容される範囲を超えた「域外適用」になると指摘する声もある(日本も200710月に米国に対しWTO協定との整合性の問題がある旨指摘している)。
オバマ政権の対イラン政策は、強硬姿勢をとる共和党や在米ユダヤロビーから、及び腰だとの批判を受ける一方、国際社会からの指摘に配慮し、制裁法の運用には慎重姿勢で臨まざるを得ないという難しい立場にある。
 
ここで注目したいのは、2010年に米国議会両院で承認され、7月にオバマ大統領が署名したイラン包括制裁法案である。この法案の104条は、米財務省が主体となって、イランの革命防衛隊に関係する取引を行っている第三者金融機関の米国におけるコルレス口座が開設・維持されることを禁じる措置について定めている。
この施行規則については、米財務省が8月に開示したが、運用面で不透明な点もあり、国際的に問題があるとみられている。
この法案が成立した2010年において、オバマ政権の政策立案に影響を与えた国内要因のうちウェイトが高かったのは、11月の中間選挙であったといわれている。
 
オバマ政権は、201111月に米財務省主導で愛国者法第311条に基づいて、イラン中央銀行と第三者金融機関のコルレス口座を開設・維持を禁じる措置を発動しており、2010年の経緯とよく似た動きを見せている。しかし、オバマ政権の弱腰外交を批判する議会からは、201211月の米大統領選挙および上下両院選挙を前にして、より強硬姿勢を示すべきとの声が出ている。例えば、対イラン制裁を強める「イラン脅威削減法」が提案されたことが挙げられる(下院では可決)。これにより、オバマ政権としては、議会の要求に配慮するとともに、国際社会からの「域外適用」という非難を和らげられる対イラン制裁法を立案する必要性に再び迫られることになった。その議会との妥協が「米国防権限法」への署名である(12月上旬に議会に反対を伝えたが、同月31日には署名した)。
 
同法の特徴は、(1)石油価格の高騰を避けるため、実施まで6か月先送りすることができる行政権限を明記している、(2)大統領判断で、対イラン制裁の目標達成に協力的な企業国や「国家安全保障上の利益」につながる国については、制裁措置発動を撤回できる点である。
これを適用し、米国は320日、同法案の適用対象から11か国を除外するとの発表を行った。日本は英、仏、独、伊などともにその11か国に含まれている。
しかし、イラン産原油の主要種入国であり、輸入量削減に消極的であった中国、韓国、インド、トルコ、南アフリカは適用除外とならなかった。
 
米国はこの法案で、イラン産原油の顧客を減らし、顧客がイランとの価格交渉で有利になる状況を作り出したといえる。実際、イランの新聞では、値引きを迫る中国に対する厳しい批判記事が掲載されている。
この他に同法案のポイントとなるものとして次のが挙げられる。
1つは、米国防権限法に対し、表面的には厳しい反発姿勢を示している中国やインドではあるが、それぞれの国益の観点から米国とイランの重要性を比較すれば、対イラン政策を変更する可能性があるという点である。
2つ目は、米大統領選挙を前にして、米国の対イラン制裁のレベルが明確になり、先行き不透明要因の1つが消えたことである。
3つ目は、サウジアラビアが、増産姿勢を表明しており、イラン原油に代わる供給先が確保できるとの安堵感が国際社会に流れていることである。
4つ目は、イランが、安保理常任理事国プラス・ドイツ6者との協議開催を要請しており、トルコなどのイラン外交も活発化している点である。
これらのポイントから、イランの革命防衛隊のホルムズ海峡やサウジアラビア東部州での暴発的行為がない限り、石油価格は下方に動く条件が整いつつあるといえる。
 
しかし、原油価格の高止まりの影響で、日本でもガソリン価格がリッター当たり160円を超えるなど経済への悪影響が出ている。原油価格を巡っては、イラン要因以外にも、リビアでの部族衝突、イラクで多発するテロ事件、ナイジェリアや南スーダンでの政治不安の高まりなど不安材料が多数ある。さらに、EUのイラン産原油取引に関する保険・再保険禁止に伴う影響もある。
こうして見ると、日本で原子力発電がほとんど停止する中、イランをはじめ中東情勢の安定化は日本のエネルギー安全保障に直結するのだと再度認識させられる。このことを踏まえて、日本の対外政策のあり方を今一度見直す時かもしれない。
 

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