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2009年9月9日

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性感染症と骨盤内炎症性疾患

妊産婦・女性生殖器疾患の婦人科疾患のお話。
今回は、性感染症と骨盤内炎症性疾患の説明です。

★[性感染症と骨盤内炎症性疾患]sexually transmitted disease and pelvic inflamatoty disease★
【概念】
性感染症sexually transmitted disease(STD)は性行為を介して感染し、発症する疾患です。
古くは、梅毒、軟性下疳、鼠径リンパ肉芽腫症、淋疾、トリコモナス症や真菌症が挙げられますが、最近ではクラミジア感染症、性器ヘルペスや尖圭コンジローマが増加しています。
なかでもAIDSはもいったん感染すれば根治的治療法がないだけに、大きな社会問題になっています。
一方、骨盤内炎症性疾患は、かつて猛威を振るった結核性の下行性感染は激減しているものの、膣を介してのクラミジアによる上行性感染は増加しています。

●疫学
《HIV感染》
 世界的にみれば、HIV感染の90%はSTDとして認められます。
 わが国でも、異性間感染による報告が急増しており、感染者の数は8,300人(2006)と報告されています。
 薬害AIDSが有名となったため、AIDSはSTDとは無関係として人々が警戒心をなくしたためと解釈されています。

《淋菌感染症》
 淋菌感染症は古典的なSTDであり、有効な抗菌薬が開発されたためコントロールしやすい疾患とされますが、近年、患者発生数が急上昇しているといいます。
 無防備の性行為と耐性菌の増加によるものとされますが、先進国では例外的です。

《クラミジア感染症》
 現在、無症候性STDとして最も流行しているのは性器クラミジア感染症で、女性の2/3、男性の1/3が無症候といわれています。
 感染率では、既婚妊婦の5.6%、未婚妊婦の14.8%が感染しており、低年齢ほど頻度が高いといいます。

《性器ヘルペス》
 最近、注目されているものに、性器ヘルペス(HSV)やヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の感染があります。
 HPVには80を超す亜型があるとされ、良性の尖圭コンジローマを発生させるばかりでなく、子宮頸癌や陰茎癌を発生させる悪性型のものがあります、

●成因
梅毒は病原体であるトレポネーマTreponema pallidumが、軟性下疳は軟性下疳菌Haemophilus ducreyiが、クラミジア感染症はトラコーマクラミジアChlamydia trachomatisが、淋菌感染症は淋菌Neisseria gonorrhoeaeが、それぞれ感染することによって発症します。
鼠径リンパ肉芽腫症はChlamydia trachomatis感染がリンパ系に発症したものです。
HSVは単純ヘルペスウイルスherpes simplex virus2型の感染によって発症します。
HIVやHPVウイルスによる感染は上述したとおりです。

●臨床像
《梅毒》
 トレポネーマが侵入した局所に初期硬結が生じ、潰瘍(硬性下疳)に進展、やがて、数週間で消失しますが、瘢痕は数ヶ月残ります。
 感染3ヵ月後ごろに血行性に広がり、バラ疹、膿疱が全身に発生します。

《軟性下疳》
 性器の潰瘍と鼠径リンパ節の腫脹や膿瘍形成です。

《淋菌感染症》
 子宮頸管炎や直腸肛門炎を発症し、黄色膿性分泌物や性交時不快感を訴えます。
 子宮内膜炎を経て、骨盤内炎症性疾患pelvic inflammatory disease(PID)を発症すると、腹部鈍痛や牽引痛など不定症状や不妊を訴えます。
 肝周囲に進展すると右上腹部痛、発熱などのFitz-Hugh-Curtis症候群となります。

《クラミジア感染症》
 異常帯下、腹痛、不正性器出血があり、尿道炎を合併すると排尿障害、頸管炎では漿液性帯下、内膜炎では出血と下腹痛、PIDとなると下腹痛が主症状となります。
 肝周囲炎を起こすこともあり、このような場合は、Fitz-Hugh-Curtis症候群を呈します。
 症状は比較的軽く、妊婦検診や不妊症の検査で偶然発見されることも少なくありません。

《性器ヘルペス》
 性行為などによる感染の機会の後3〜7日の潜伏期間を経て、突然強い外陰痛をもって発症します。
 疼痛は強く、歩行や座位が困難となり、外陰部に多発性の浅い潰瘍が出現します。
 初感染時の症状は強いですが、治癒後も少なからず再発します。
 この場合は、症状は比較的軽く、1週間で治癒することが多いです。

《尖圭コンジローマ》
 鶏冠状の腫瘤形成をみ、外陰、膣や子宮膣部に多発性に出現します。
 しばしば、トリコモナスなどの膣炎と合併していることが多いです。

●検査所見
《梅毒》
 梅毒血清反応Serologic Test for Syphilis(STS)として、リン脂質を含むカルジオライピン様物質を抗原としてガラス板法、VDRL法、RPR法、梅毒凝集法などがあり、また、トレポネーマの菌体成分を抗原として用いるFTA-ABS法、TPHA法などがあります。
 後者は特異性に優れますが、感染後陽性となる時期が2〜3週間遅延します。

《淋菌感染症》
 頸管から分泌物を採取し、グラム陰性双球菌を確認します。
 最近、遺伝子学的検査法が開発されています。

《クラミジア感染症》
 トラコーマクラミジアの抗原検出法と遺伝子検出法があり、前者には蛍光抗体法と酸素抗体法があります。
 後者のうちPCR法を用いた方法は感度、特異性とも最も優れた方法です。
 検体は、綿棒を頸管に挿入して採取します。
 クラミジア抗体の検出法として、患者血清中の特異的IgGおよびIgA抗体を測定します。

《性器ヘルペス》
 HSV抗原を病変部の材料で証明する方法が優れています。
 HSV-2の特異抗原を蛍光抗体法で調べます(Micro Trak Herpes)。
 HSV DNAの検出は特異性に欠けます。

《尖圭コンジローマ》
 免疫組織化学による抗原検出法、DNAハイブリダイゼーションやPCR法によるHPV DNAの検出法があります。

●診断
それぞれの特異的症状、ならびに検査所見をもとに診断します。

●治療
《梅毒》
 ペニシリン系抗生物質が著効薬で早期梅毒で4週間、晩期梅毒で6週間の内服療法を行います。
 そのほか、セフェム系薬、テトラサイクリン系薬、エリスロマイシンなどが有効です。

《淋菌感染症》
 ペニシリン系薬剤をはじめ多くの抗菌薬に感受性が高いです。
 近年、クラミジア混合感染を意識した治療により、ニューキノロン系薬に耐性の菌が増加しています。

《クラミジア感染症》
 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質、ニューキノロン系抗菌薬などの経口投与が原則で、PIDなど重症の場合は、テトラサイクリン系抗生物質の点滴静注も選択されます。
 抗菌薬の投与は、2週間をめどにし、クラミジア血清抗体の低下を治療打ち切りの目安としますが、長期間低下しないことがあります。

《性器ヘルペス》
 抗HSV薬のアシクロビル(ゾビラックス)が著効しますが、非感染細胞には作用しないので副作用がほとんどありません。
 軟膏ばかりでなく、重症患者には注射薬や経口薬による全身投与ができます。
 疼痛の訴えの強い患者には、同軟膏とキシロカインゼリーをあわせて処方します。

《尖圭コンジローマ》
 ポドフィリンあるいは5-FU軟膏を塗布します。
 レーザー光線療法も有用です。

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