全体表示

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全59ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]

EPS:83 発電衛星E560

シャトルの前方には発電衛星E560が見えてきた。
 
それは1976年火星上空で発見された第3衛星M3の
テクノロジーをベースにアメリカが30年の歳月をかけて
開発した巨大人工天体であった。
 
全長は1.5kmの円筒形で表面の巨大なソーラーパネル
で発電した電気をマイクロ波に変換して、地球を取り囲む
20基の中継衛星に送っていたが、今その機能を停止して
中の状況は全く分からなくなっていた。
 
「これがステーションから貰ったE560のデータよ、侵入口
はこの両端の直径100mの平面エリアに4ヶ所づつ。
シャトルを3分間横付けさせて私とミヤコ、キミが侵入する。
 
シャトルはマイクに預けるから100kmの距離を保って、
ミッションが成功したらテレパシーを送るわ。もし24時間
経過して私達からの連絡がなければステーションに戻って
ノーラッドの指示を仰いで」
 
「OK。ジョディ、無理しないでね」
マイクがうなずいた。
「分かってる。あんたもしっかりね、もしもの時はシャトルと
ステーションの安全はあんたに掛かってくるのよ」
「了解」
マイクは敬礼したままウィンクした。
 
「よし、キミ、ノーマルスーツは良い?」
「ええ、OKよ」
きみはそう言うとノーマルスーツ用のヘルメットを装着した。
 
「じゃあマイク、頼む」
ジョディもヘルメットを装着してマイクの肩を叩いた。三人が
シャトルのエアーロック区画に入るとマイクは一気にE560
の進入口に向けてシャトルを突進させた。
 
見る見るうちに衛星が近づき、ジョディ達三人はシャトルを
出て衛星の側面に取り付いた。ジョディはマスターキーを
取り出して衛星の点検用進入口を開けると、きみ達を手招
きした。
 
きみがふとシャトルを振り返ると窓から双子が手を振っていた。
きみは驚いて早く行け、と手で合図したが双子は相変わらず
手を振り続けていた。
 
 
衛星の点検用通路は人一人がやっと通れるくらいの狭さだった。
三人は少し前屈みになりながら一列で進んだ。
 
「えーっと、ここからゲートがあと3ヶ所よ。施設自体がデカイから
警戒も手薄なようね、ミヤコ、敵の気配を感じたら一気に行くよ」
「OK、きみさんは何か感じる?」
「いえ、何も。ひょっとしたら、敵の数はそれほど多くないのかも
知れないわね」
 
やがて、三人は最後のゲートを潜った。内部の衛星推進施設に
通じる細長い廊下に出ると、ジョディが立ち止まった。
 
「どうしたの?」
美弥子の問いかけにジョディは前方を指差した。
 
「あー、あれか」
ジョディが前方を凝視すると鈍く格子状に輝く電磁スクリーン
が浮かび上がった。
 
「電気がたくさん使えるからって、原始的なネズミ捕りね(笑)」
ジョディは腕組みして美弥子を見た。
 
「どうする?消そうか」
「ダメ、システムに介入したらたちまち警報が届くんでしょう。
ジョディ、解除コードを探して」
「OK」
ジョディは側面のコンソールへステーションで渡されたIDカード
をかざした。
 
「あら、パスだって」
ジョディが振り返った。美弥子がコンソールのキーを叩いて
パスワードを見つけ出した。

「OK、消えたわ。みんな一緒に入るよ」
三人は並んで廊下を進んだ。
「何か防御システムには程遠いね、敵の侵入なんて想定
してないんだろうな。よし、ここを抜けたら施設管理スタッフの
居住区よ」
 
そこから30m程廊下を進んだ三人は施設管理スタッフの
簡易居住区域に入った。
 
「ジョディ、ここには何人のスタッフがいるのですか?」
きみが尋ねた。
「貰った資料では10名ね、3ヶ月毎に5名づつを入れ替える
ローテーションで動いてたみたい」
「それなら結構本格的に暮らしてたんでしょうね」
 
三人はガランとした居住区を歩いていたが同時に立ち止まった。
 
「いるわね、」
「うん、10m先の角の部屋」
ジョディと美弥子がうなずき合った。
 
三人はヘルメットを外した。
 
「フー、すっきりした(笑)行くよ!」
 
ジョディが先頭を切って飛び出した!部屋の前に来るとジョディ
は壁面のコンソールを睨んだ、するとシステムが反応し、ドアの
ロックが解除された。
 
三人は身構えて部屋に入った。その時、薄暗い部屋の中で
一条の光が走った!三人は本能的に身をかわして光源の
方向に飛び込み、一人の人間を組み伏せた。
 
「おとなしくしろ!それ以上暴れたら首をへし折るぞ!」
ジョディの一喝が効いたのか、その人間は抵抗するのを止めた。
 
「分かった、もう抵抗はしないから放してくれ」
「何を利いた風なことを」
ジョディが周囲に視線を走らせると部屋の明かりが点いた。
ジョディにねじ伏せられた男の姿がはっきりと現れた。
 
「あっ、あなたは!」
美弥子が男の顔を見て声を上げた。
 
「あなたは、フォスター大佐ではありませんか?」
「そうです、フォスターです。どうかこの勇ましい女性に
力を緩めるように言って貰えませんか?」
 
「ジョディ、この人はE560の管理責任者のフォスター大佐よ」
「その責任者が何故私達を狙撃するの?答えろ!」
 
「うわー!ちょっと待ってくれ。あなた方を狙撃したというのは
そこに転がっているペンライトの事か?」
大佐はジョディに腕をねじ上げられながら顔をしゃくった。
 
「ペンライト?」
美弥子は二人の傍らに落ちていたペンライトを拾い上げた
ライトは点いたままになっていた。
「これですか?」
「そうだ!そうですウッ…」
 
「ジョディ、放してあげて」
美弥子の言葉にジョディはねじ上げていた大佐の右腕を放した。
 
「あー、助かった。お嬢さんありがとう」
「大佐、説明して下さい。いったい何があったのですか?」
 
 
美弥子の問いに大佐は姿勢を正した。
 
                                    つづく

閉じる コメント(0)

閉じる トラックバック(0)

EPS:82 米宇宙ステーション

「こちら、合衆国エルメンドルフ空軍基地ノーラッド所属
のシャトルです。ドッキングの許可を申請します」
 
「こちらステーション、識別信号クリア。ノーラッドのシャトル
ドッキングを許可する」
ステーションからはドッキングポートが伸びてきた。
 
美弥子の座席のランプが点灯した。
「はい、ミヤコ」
「ジョディよ、ステーションに移乗するわ。ミヤコ、一緒に来て」
「了解。きみさん、ジョディとステーションに行って来ます」
「分かりました、気を付けてね」
 
二人はドッキングポートを通ってステーションに乗り移っていった。
ステーションの内部は大型バス程度の広さだったがそこに5名の
スタッフが作業をしていた。
 
「ノーラッドのスミス少尉です、こちらは日本の自衛隊から派遣
された真喜志1尉です」
「責任者のヘンダーソン大尉です。よろしくスミス少尉、真喜志1尉」
「よろしくお願いします」
三人は握手を交わした。
 
「日本人と言えば、黒井博士」
「はい、」
ヘンダーソンに呼ばれた技師が近づいてきた。
「博士も日本人なんですよ」
「黒井です、よろしく」
 
「黒井博士?…」
「ミヤコどうしたの?」
「博士、失礼ですがファーストネームは何と仰いますか?」
「はい、黒井新(しん)ですが…」
 
「黒井新…博士。あなた、もしかしてひなさんの…」
「えっ!あなたはひなをご存知なんですか?」
「はい、日本で一緒に働いていました」
「本当ですか!ひなが…」
博士は一点を見つめて動かなくなった。
 
「博士、どうされました?」
ヘンダーソンが博士を覗き込んだ。
「ひなは、娘は今どうしていますか?」
「はい、自衛隊の護衛艦に乗り込んで働いています」
「ひなが軍艦に?」
 
「博士はひなさんに能力がある事をご存知ですか?」
「はいそれは、あの子の母親も能力者ですから。そうですか
あの子もそれで自衛隊に…」
 
「ねえミヤコ、どういう事?」
「あっ、ジョディ。この人はキミの義理の妹のお父さんなの。
11年前に生き別れになってたのよ」
「えー、そうだったの?」
「うん、妹のヒナはずっと探してたのよ。良い?キミに思念を送るわ」
ジョディはうなずいた。
 
シャトルのきみは美弥子の思念を受け、驚いて顔を上げた。
 
「えっ!本当ですか?」
 
「キミ!どうしたの?」
双子が驚いてきみを見た。
「はい、そう!分かりました。良かったー!美弥子さん、お母さんの
事を聞いて下さい」

突然しゃべり出したきみを見て双子は大声を上げた。
「ウワー!キミがだれかとしゃべってるー!」
「おい、静かにしろ!キミはテレパシーを使ってるんだよ」
後ろからピーターが双子をたしなめた。
 
「テレパシー?うん!」
双子は互いの頭をくっ付けて思念を送り合った。
「ウワー!通じたー!」
 
「あのなー、その距離ならしゃべった方が早いだろ…」
ピーターは双子のいつもながらの天然ぶりに呆れて呟いた。
 
「キミ、テレパシーならしゃべらなくても通じるよ」
「えっ?あっそうね、ありがとうピーター(笑)」
きみは照れ笑いしながら無言になった。
 
きみの思念を受けて美弥子は博士に尋ねた。
「博士、奥さんは今どちらに?」
「はい、発電衛星のE560で施設管理をしているのですが、
1週間前から通信が途絶えているのです」
 
「何ですって!E560は確認されているのですか?」
「衛星自体は確認されていますが発電はストップしていますね」
ヘンダーソンがモニターを見ながら説明した。
「これが2基の発電衛星E560とE561、それから20基の中継衛星
の配置図です」
 
モニターには地球と月を結ぶ線と直交する線の両端のラグランジュ
ポイントに2基の発電衛星が配置され、地球を周回する静止軌道上
に20基の中継衛星が浮かんでいる構図が現れた。
 
「現状ではこちらのE560が機能停止状態で、インド上空のE572
が先日ミサイル攻撃を受けて破壊された事が判明しています」
「犯人はやはりロシアの衛星ですか?」
「いえ、使われたのは旧ソ連時代のキラー衛星のようです。
敵の能力者が旧システムを起動させたようですね」
 
「敵のエスパーが!」
ジョディの表情も一変した。
「大尉、そいつらがシャトルを?」
「そうですね、不意を突かれたようです。我々も敵の位置は
分かりませんでした」
 
「クソー、敵は何処にいるんですか?」
「恐らくE560を占拠しているのではないかと思われますが」
「じゃあ、中の技師達は!」
美弥子は顔を強張らせた。
「すぐに殺される事もないでしょう、そのつもりなら初めから
E560を破壊するでしょうから」
 
「ジョディ、E560に行こう!」
 
「そうだね。大尉、まだキラー衛星は残っていますか?」
「相当数があると思います、普通ならもう使い物にならない
はずなのですが」
「よし、行こうミヤコ!」
「うん!」
二人は意を決してうなずいた。
 
 
シャトルに戻るとジョディはチームのメンバーに言った。
「みんな、これから発電衛星E560に向かう。恐らく衛星は
敵に占拠されて中の技師達が人質になってると思うわ。
 
あの衛星は合衆国にも地球にも絶対必要なものなの、必ず
奪い返すよ。今後はいつ攻撃を受けるか分からない、
みんな、気を引き締めてかかってね!」

「了解!」

シャトルは周回軌道を離れ、発電衛星に向けて飛び立った。
 
エスパー同士の戦いが目前に迫っていた。
 
                                  つづく

閉じる コメント(0)

閉じる トラックバック(0)

EPS:81 シャトル発進!

翌日、二人はチームのメンバーと共に基地内の
空軍エリアへやって来た。
 
「ジョディ、空軍のエリアからシャトルが出るの?」
「えっ、この奥よ」
メンバーはそこから空港トラックに乗り込んだ。
 
「ウワー、表に出たの久しぶりー!」
マリンとカリンは朝日を浴びて喜んでいる。しかし、トラック
は直ぐに前方の山に掘られたトンネルの中に入っていった。
 
「ねえジョディ、ここってもしかして」
「うん、ミヤコの想像は当たってると思うわ、ここはもう
核シェルターの中よ」
「えっ、核シェルター?」
きみがジョディの顔を見た。
 
「米軍の施設では珍しくないわ。もっとも、ここはまだ秘密
なんだけどね」
「秘密?」
 
「さあ、もうすぐ着くわよ」
ジョディが言い終わらない内にトラックは大きな空洞に出た。
「ここは?…」
美弥子が驚いて見上げているとトラックが停止した。
 
「さあ、着いたわよ、みんな降りた降りた」
メンバーは1列になって空洞の奥の巨大な鋼鉄の門を潜った。
 
「あっ!…」
 
目の前に現れた光景に、きみは思わず息を呑んだ。何と空洞
の奥には数十メートルはあろうかと思われるスペースシャトル
が立ち上がって発進体制に入っていた。
 
「あのシャトルは?」
美弥子が尋ねた。
「大統領専用の緊急脱出用シャトルよ」
「なるほど、シェルター兼用のシャトル発射場か。いざとなったら
ここから逃げるつもりだったのね」
 
「うん、人も物も底を突いてから政権を渡されたOB大統領は
もう打てる手が無いのよ、ここに眠ってた最後のシャトルで
私達を宇宙(そら)へ上げようっていう訳。
あの大統領は本気よ、前の連中とは全然違うわ」
 
そうか、失敗は許されないわね、もう後が無い」
美弥子の言葉にジョディは無言でうなずいた。
 
シャトルの前ではシャ−プ大尉とファイン少尉が待っていた。
全員が整列して二人に敬礼した。
 
「休め!」
ファイン少尉の号令でチームは敬礼を解いた。
「ご苦労、諸君はこれから発電衛星調査の特殊任務に
向かってもらう。これは一切の発表を行っていない極秘作戦だ。
現在、発電衛星の一基が機能を停止している、破壊されたのか
占拠されたのかは不明だ。諸君はその原因を調査し、衛星が
無事なら機能を回復してくれ。
 
一基のみで世界の電力を支えるのは限界がある、この任務は
是非とも遂行してもらいたい」
 
「真喜志1尉、返答を」
ファイン少尉が美弥子を促した。美弥子は列を一歩進み出た。

「えー、昨日の今日で状況の把握も不十分ですが、チームの
協力を得て、任務の遂行に自分達の微力を尽くします」
「敬礼!」
ファイン少尉の号令で全員が敬礼した。少尉と大尉は管制室に
向かって行った。
 
「よっしゃ!じゃあみんな行こうか!」
ジョディの号令でチームは一気に元気付いた。
「OK!」
チームはそのまま発射台のエレベータに乗り込み、シャトルの
搭乗口へと上がっていった。
 
 
シャトルに乗り込むとジョディ達は手馴れた様子で発進準備に
掛かった。
「へー、みんな慣れてるのね。美弥子さん、シャトルの発進って
そんなに簡単に出来るの?」
「もう初めて飛んだ頃から何十年も経ってますからね、この子
は訓練してますから飛行機を飛ばすくらいの手軽さですよ。
でも発進時には相当の重力が掛かりますから注意して下さいね」
 
きみは、何日も秒読みを続けるイメージを持っていた発進が
案外簡単に進められるのを見て少し拍子抜けした気分だった。
コックピットにはジョディとマイクが乗り込んでいた、やがて船内
にブザーが響き、発進可能のシグナルが点灯した。
 
「きみさん、発進します」
「分かりました」
美弥子の声にきみは両肩を支えるシートベルトを再確認した。
やがて、機体全体に鈍い振動が伝わり轟音と共にシャトルは
上昇を始めた。
 
きみは後方に押さえつけられる重力に耐えながら体を踏ん張って
いた。大きく口を開けた山の偽装火口から一機のシャトルが宇宙
へ飛び立っていった。
 
 
本来なら、合衆国に核戦争の脅威が迫った時大統領を宇宙に
脱出させる為の北米最後の機体であった。
 
 
 
20分後、機体は地球周回軌道に達した。
きみは頭の中に違和感を覚えて前屈みになっていた。
 
「うーん、もう酔ったみたい。やっぱりダメだわ」
「きみさん、能力を使って下さい、もう構わないですよ」
美弥子の言葉にきみは精神を集中させた、するとウソのように
気分が楽になった。
 
「ああ本当!美弥子さんありがとう」
「いいえ、初めての無重力だから無理もないですよ。普通の
人なら、とてもこうはいかないです」
「さて、次はアメリカのステーションですね。果たして無事で
いてくれるかどうか…」

「ウワー!ミヤコ、アメリカが見えるよ!」
 
双子の姉妹は窓の外を指差して無邪気にはしゃいでいた。
美弥子は座席のマイクを取り上げてコックピットのジョディを
呼んだ。

「ジョディ、このままステーションに行く?」
「そうね、取りあえず様子を見に行こうか」
 
シャトルは機体を少し加速させてステーションに向かった。
 
 
20分程飛行すると、前方にアメリカの宇宙ステーションが
見えてきた。

                                  つづく

閉じる コメント(0)

閉じる トラックバック(0)

EPS:80 米軍エスパー部隊

「よし、では他のメンバーを紹介する」
 
シャープ大尉に続いてきみ達は基地内の訓練区域にやってきた。
区域の出入り口には自動小銃を構えた歩哨が3人立っていた。
 
シャープ大尉達の姿を見ると、歩哨達は一斉に敬礼し内部に
電話を入れた。
 
「新入りの2名だ、すぐ訓練に入る」
「はっ、」
三人はそのまま訓練区域に入った。中はゆきかぜのCICを
10倍したような広いエリアで、5名のメンバーが誘導訓練
受けていた。

「みんな、注目してくれ」
大尉が声をかけるとメンバーが一斉に顔を上げた。
「本日付で日本から派遣された2名だ、明日には君達と共に
ステーションに発つ。ジョーンズ」
名前を呼ばれた士官が三人に近づいてきた。
 
「訓練担当のファイン少尉だ。具体的な作戦は明日説明する
それまでに顔合わせをやっておいてくれ」
「はっ、了解しました」
三人が敬礼する中、シャ−プは部屋を出て行った。
 
 
ジョーンズは二人に敬礼した。
「ジョーンズ・ファイン少尉であります、遠路ごくろうさまでした。
メンバーを紹介したら簡単な同調訓練だけ受けて頂きます、
後はタンクベッドで睡眠をとって頂きますのでお疲れでしょうが
後しばらくお付き合い下さい」
 
「ありがとう、少尉」
美弥子が笑顔で返した。
「みんな、10分間休憩する。集まってくれ」
少尉の声でメンバーが集まってきた。

「美弥子!あんた本当に美弥子?」
 
「ジョディ?えー、ここにいたの?」
二人は抱き合った。
「ああ、ジョディはフロリダにいたんだったな、二人は知り合いか?」
「ええ、1年間一緒に訓練を受けたわ。まさかまた会えるなんて
思ってもいなかった!」

「ジョディ元気そうね(笑)」
「ううん、そうでもない。他の仲間は世界中に散らばってるわ、
それに、この間シャトルで…」
「そう、大変だったわね。元気出して、またチームが組めて
嬉しいわ。ジョディ、こちらが仲間のきみさん」
 
「き・み・さ・ん?」
「ああ、きみって呼んで下さい、よろしく」
きみはジョディと握手した。
「OK。よろしくね、キミ(笑)じゃあこっちの仲間よ、マイク、
ピーター、マリンとカリン。この娘達は双子の姉妹よ」
紹介された四人はまだ10代に見える下士官だった。
 
「みんな士官じゃないのね」
「まだここに来て3ヶ月なんでね、いきなり少尉という訳にも
いかないのよ」
「そう…分かった。みんな、私はミヤコ、彼女はキミよ。よろしくね」
四人は一斉に敬礼した。

訓練が終わった後、チームは休憩室で食事をとった。
食事は宇宙空間を想定したチューブ食だった。早速、
双子の姉妹が口にチューブをくわえたまま興味津々で
美弥子に絡んできた。

「ねえねえ、ミヤコは日本の撃墜王なんでしょ?」
二人は声を揃えて同じ質問をした。

「あー、子供の頃を思い出すわ(笑)同じ顔が二つ並んで
同じ事を言うのね。私も双子なのよ」
「えー!本当?もう一人は?」
「日本に残ってるわ。ねえ、あんた達も軍人なら不確かな情報を
軽々しく信じちゃダメよ。私は撃墜王なんかじゃないの」
 
「えー?ミヤコはF-15を20機落としたってみんな言ってるわよ」
「あらあら、本土に来たら話が7倍になるのね。
良い?私が落としたのは3機だけ、実戦に出たのも1回きりよ」
 
「ウッソー!でも1回で3機落としたの?スッゴーイ!」
「まあ、アメリカにもなっちがいるのね(笑)」
きみが笑顔で姉妹を見た。
「ああ、キミはね、四人も妹がいるのよ」
美弥子の言葉に二人はまた反応した。
 
「エー!スッゴーイ!」
姉妹は何にでも感動するタイプのようだった。
 
「ねえジョディ、3ヶ月で何処まで養成出来たの?」
美弥子は真顔でジョディを見た。
「うん、一通りはね。シャトルの操縦は何とかなるわ、でも元々の
シンクロ率がね。合衆国もいよいよ能力者が不足してきた感じ」
「そうか、それで私達にお呼びが掛かったのね」
「はっきり言ってこのチームは正規軍とは言えないわ、まだ
候補生
の実習中ってとこね。でも、明日には上に上がらなければならない」
 
「補充兵はいないの?」
「この娘達が入ってきてからは全然。私達がやられたら終りね」
「そんな、」
きみが表情を曇らせた。
 
「分かった、シャトルは何処から出るの?」
「うん?ここからよ」
「ここ!?」
 
「明日になれば分かるわ(笑)さあ、しばらく地上ともお別れよ。
みんな、今日はゆっくり眠って体調を整えてね」

「ハーイ!」
双子が手を振りながら部屋を出て行った。他のメンバーも各々
居住区に引き上げて行った。
 
「さあ、きみさん、私達も行きましょうか」
 
 
互いにうなずいた二人だったが、先行きへの不安は隠せない
ままだった。
 
                                   つづく

閉じる コメント(0)

閉じる トラックバック(0)

第十四章 「北限」 EPS:79 ノーラッド

登場人物

真喜志美弥子(海上自衛隊1等海尉、きみと共に米軍ノーラッド
          派遣される、24才)
きみ(クラブ「M」ママ、政府特命官としてチームゆきかぜに参加、31才)
シャープ大尉(米軍エルメンドルフ空軍基地、ノーラッド所属、35才)
ビクトリー大将(米軍エルメンドルフ空軍基地、ノーラッド司令官兼務、
          55才)
ジョーンズ・ファイン少尉(米軍エルメンドルフ空軍基地、ノーラッド所属、
                訓練担当、25才)
ジョディ・スミス少尉(米軍エルメンドルフ空軍基地、ノーラッド所属、
                               フロリダのノーラッドでは美弥子と同じチームだった、
             25才)
マイク(米軍エルメンドルフ空軍基地、ノーラッド所属、曹長、21才)
ピーター(米軍エルメンドルフ空軍基地、ノーラッド所属、軍曹、20才)
マリア(愛称マリン、米軍エルメンドルフ空軍基地、ノーラッド所属、伍長、      妹のカリナとは双子、18才)
カリナ(愛称カリン、米軍エルメンドルフ空軍基地、ノーラッド所属、伍長、
     18才)
ヘンダーソン大尉(米宇宙ステーション責任者、36才)
黒井新(米宇宙ステーション技師、行方不明だったひなの父、51才)
フォスター大佐(発電衛星E560管理責任者、50才)
スコット(発電衛星E560管理主任、40才)
黒井ナナ(発電衛星E560技師、行方不明だったひなの母、50才)


空母キティイーグルで給油を終えたオスプレイは、更に
8時間
の飛行を続け、前方にアラスカの米軍エルメンドルフ空軍基地
が見えてきた。
 
「きみさん、やっと見えてきました」
「ああ、真っ白ですね。あそこが空軍の基地ですか?」
「はい、基地自体は空軍のものですが、ここはノーラッド
という衛星や核ミサイルを監視する特殊な機関の北米での
拠点なんです」
 
「そうですか、アメリカはそんな組織もあるんですね」
「ええ、私もアナポリスの海兵隊から一時期フロリダ州の
ノーラッドに移って訓練を受けた事があります」
 
「フロリダというとロケットとかの施設のあるところですか?」
「はい、私も宇宙飛行士の訓練を受けていました」
「へー、美弥子さんて本当に凄いんですね。私なんかには
想像も出来ないです」
 
「きみさん、着陸許可が出ました。このまま降りますね」
オスプレイはそのまま基地滑走路へ垂直に降下していった。
 
誘導員が機体を着陸スポットへ導いていく中、空港トラック
がやって来た。きみ達はコックピットを開いて地上に降り立った。
トラックからは一人の士官が降りてきた。真喜志1尉ときみは
直立不動で敬礼した。
 
「申告します、本日付で日本海上自衛隊より配属されました
真喜志1尉、並びに黒井政府特命官であります」
「ノーラッドのシャープ大尉だ、はるばるご苦労だった。司令が
お待ちなのでこのまま同行してくれ」
「はっ!」
 
二人は再度敬礼してトラックに乗り込んだ。トラックは空港を出て
ノーラッドの司令部に直行した。IDチェックの後二人は控え室に
通され、10分後に再びシャープ大尉が入ってきた。
 
「お待たせした、司令がお会いになる」
大尉の後に続いて作戦司令室に入っていくと部屋の奥に
ビクトリー空軍大将が立っていた。二人は再び敬礼した。
 
「申告します、本日付で日本海上自衛隊より配属されました
真喜志1尉、並びに黒井政府特命官であります」
 
「司令のビクトリーだ。ほう、君が噂の南方の魔女か、えらく若いな。
大統領からの特命で急遽能力者部隊を再編する事になった。
敵の動きは非常に早い、最早通常の養成をしている時間的余裕
はないので他のメンバーと共に明日ステーションに発ってくれ。
この後 メンバーとの顔合わせをする」
「はっ、了解しました」
 
二人は敬礼して再びシャープ大尉と共に司令部内の居住区に
向かった。
「よし、ではこれが二人のIDカードだ。最初に言っておくが、
この基地内では能力を使わないように、基地の電子システム
がイカれるからな。能力のセンサーが感知したらスパイとして
逮捕されるからくれぐれも気をつけろ」
 
「はい。大尉、敵のスパイはそれ程侵入しているのですか?」
「実数は分からん、というか現状では能力者は全員容疑者だと
言っても過言ではない。君達も誤解を招くような行動は絶対に
慎めよ、シャトルがやられてからは警告抜きで容疑者を射殺する
事態が続いている。自分の身は自分で守ってくれ」
 
「事態はそこまで深刻ですか、分かりました」
美弥子ときみは顔を見合わせた。
 
                                    つづく

閉じる コメント(0)

閉じる トラックバック(0)

全59ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]


.

drsator
人気度

ヘルプ

Yahoo Image

ケータイで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

URLをケータイに送信
(Yahoo! JAPAN IDでのログインが必要です)

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
  今日 全体
訪問者 8 2490
ブログリンク 0 0
コメント 0 33
トラックバック 0 1

開設日: 2011/12/29(木)


プライバシーポリシー -  利用規約 -  ガイドライン -  順守事項 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2012 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.