タミフル
|
モル・タロウで作る薬の分子(6) タミフルは有名なインフルエンザの薬です。子供に異常行動を起こさせる恐れがあることで子供への使用は禁止になりましたが、抗ウィルス剤として初めて合成された分子です。タミフルはウィルスが細胞で増殖した後、細胞から離れるのを妨げる薬です。ウィルスを殺すのではなく新たな細胞に次々感染するのを抑えて症状が悪化するのを防止するのです。感染した細胞から増殖したウィルスが離れるには自分の酵素で細胞膜の糖鎖を構成するシアル酸を分解しなければなりません。その酵素はノイラミニダーゼ(NA)と呼ばれています。
NAの活性部位に結合してシアル酸の分解を阻害する分子は薬の候補になります。酵素の構造は詳しく知らなくてもシアル酸に似た構造がその候補になります。ここではタミフルとシアル酸の主成分N-アセチルノイラミン酸(NeuAc)の分子を比較できるように配置して作りました。そしてさらにタミフルの合成の原料であるシキミ酸も作りました。シキミ酸は中華料理の材料八角から抽出されています。分子を見るとシキミ酸はタミフルの中心の6員環骨格の原料で、それ自身がインフルエンザの薬になりそうはありません。現在は柴崎氏らによって全合成法が開発されています。 これらの分子を作るときの注意点は6員環をいす型にすることと、側鎖が環の上下どちらに付くか間違えないようにすることです。タミフルとシキミ酸ではシクロヘキサエンで一つ2重結合があるためきれいないす型にはなりませんが、近い形にします。側鎖の付く炭素c13は不斉炭素になります。側鎖部分はこれまで同様原子同士が接近しすぎないようにします。タミフルはリン酸塩になっているためリン酸も作りアミノ基とHBでつないでみました。 使用キット:基本Aセット 使用部品:炭素c13,c12、窒素n13-2,n14、酸素o11-1,o11-2,o20-1、リン酸p13、水素h10-1,h10-2、単結合SB、2重結合DB、水素結合HB 難易度:2.5〜3 分子の大きさはタミフルが1.15nm、シアル酸が1.0nmです。しかしタミフルは体内でエトキシ基(C2H5O-)が水酸基(-OH)に変換され活性を持つようになります。活性体の構造を比較すると大きさはシアル酸と同じくなり、側鎖の酸素や窒素の立体的配置もよく類似します。 タミフルで6員環の炭素c13のうち側鎖の付いた3個は不斉炭素になります。全合成では難しい不斉合成をしなければなりません。現在の合成法はこれを植物が合成したシキミ酸を利用することで困難を回避しています。 |
コメント(0)
トラックバック(1)
トラックバックされた記事
[分子の形]近いのに遠かったモル・タロウ
2005/10/01で紹介したkasokenさんのエントリー, モル・タロウ(KASOKEN satellite,2007/11/08) に紹介されていた新聞記事, 分子模型「モル・タロウ」 特許で組み立て簡単に(朝日新聞,2007/10/16) でモル・タロウの開発経緯とサイトの存在を知る。ブログ形式で分子模
2007/11/14(水) 午後 11:04 [ こども省 ]
トラックバック先の記事
- トラックバック先の記事がありません。
