|
ドラマ「帽子」池端俊策 20110124
録画したDVDで見せてもらった。2008年・NHK広島。
脚本・池端俊策。出演・緒形拳、玉山鉄二、田中裕子ほか。
緒形拳最後の主演作品らしい。
(あらすじ)
主人公の緒形は広島の呉で手造り帽子店を営む老職人。
妻に先立たれ、息子は東京にいる。緒形は独居。
息子は父親の身を案じて、テレビカメラで緒形に異常が無いかを
監視してくれるサービスに加入した。
緒形家の映像は常にモニターで監視されており、緒形に何か変化があると、
担当社員の玉山鉄二が緒形家に駆けつけてくる仕組み。
今はそういうサービスを行なう会社があるのである。(注 現代性)
緒形の仕事は先細り。帽子の需要が減ってきたためだ。
緒形は寂しさをまぎらすため、孫娘に電話した。
息子(孫娘の父)はリストラされたという。
緒形は「それじゃあ呉に一家で来て帽子屋を継げばええんじゃ」と
すっかりその気になり有頂天になる。緒形はその話を息子にしに上京
しようと決める。
そんな頃、緒形の家に巡回に来た玉山が、緒形家に手紙を偶然落としていった。
その手紙は、玉山を捨てて広島の家を出ていった玉山の母親(田中裕子)の
娘からのもので、田中ががんで余命いくばくもないから会いに来てやってくれと
書かれていた。
緒形はそれを読み、玉山の母が、偶然にも実は緒形の幼馴染の女性だったことを
知る。
(注 ここは偶然が2回使われていて、ちょっと苦しいが、お話を作るためには
やむをえまい)
緒形は玉山に手紙と新幹線の切符を渡す。オレも東京に行く予定があるから
一緒に東京に行こうと。玉山は「オレを捨てた母親が死のうと関係ない」と
拒否した。
玉山は広島に父親を訪ねた。父親は、被爆者で体の弱い田中を守り通すつもりで
結婚したが、親戚からのイジメから田中を守り切れなかったこと、
家を出るという田中に、玉山を置いていけと命じたことなどを玉山に話す。
玉山は緒形に同行して上京する。
その新幹線車中、緒形は、自分が田中と結婚して一生面倒をみてやるつもりで
その気持ちは田中に伝えてあったことや、田中が広島に就職して呉を出発するとき、
本当は止めさせて自分と一緒になれと言うつもりだったが、急な仕事が入り、
見送りに行けず、それを言えなかったことを悔いていることを話す。
(注 ここがこの物語の一番の弱点となる。後述)
東京に着いた二人は、田中の現住所を目指すが道に迷ってはぐれ、
まず緒形だけが田中に会う。
緒形は、広島に出発する田中を見送れなかった理由を田中に話す。
田中は「それを聞いてよかった」と答え、緒形の想いを胸に秘めて
頑張って生きてきたことなどを話す。
その後、玉山も来て、田中と二人だけで話す。(その内容は視聴者には
明かされず)
緒形は息子には会わず、玉山と一緒に呉に帰る。
二人の心には「田中と話せてよかった」という満足感が……
緒形に新しい大量注文が入り、緒形は張り切る。
玉山も、監視サービスの仕事に頑張る。
そんな頃、田中が亡くなったという報せが入るのだった。終わり
(感想)
監視サービスという道具立てにより現代性が生まれている。
手紙を落とす所と、玉山の母が緒形の幼馴染であった所、偶然が連発されるが
この偶然の使い方は、お話を作る上ではやむをえない許容範囲か。
このお話の一番の問題点は、緒形はなぜ、田中を見送れなかった時点で
田中への愛をあきらめてしまったのか、説明されていない点である。
田中と緒形の付き合いを考えたら、当然転居先は伝えていたはず。
緒形はなぜ、広島を訪ね、愛を告白しなかったのか。説明されていない。
お話的に、そこが一番苦しい。
見送りに行けなかった後、緒形は老人になるまで田中を想い続けていたのに、
なぜその時はあっさりあきらめてしまったのか???
そこに説得力ある理由付けがないので、釈然としないまま、緒形田中の再会を
見ることになってしまった。
ここがこの物語の欠点といえよう。
この点はおそらく、作り手も検討したと思うが、緒形が見送りに行けなかった
言い訳をしなくてはならず、さらにその後、広島を訪ねなかった言い訳まですると、
緒形の言い訳シーンが長くなってしまうので、うやむやにしたのではないか。
でもここはうやむやにしてはいけない個所だったと思う。
その他は、人間の気持ちの流れが自然で、いいドラマだったと思うが、
物語の肝心かなめの点で弱点があったのが惜しい。
|