森綾のおとなあやや日記

もの書きで歌うたいな森綾のone note samba

正しいダメ出し


さっき、ニュースの特集で、野村萬斎さんが、息子を教える様子をやっていた。

「右から足を出す。なんでそんな簡単なことができない!」

手が出た。

圧倒的なダメ出し。

そして伝統芸というのはまず型だから、それができなかったらどうしようもないんだ、ということを話しておられた。

私は羨ましいなあと思った。

なぜかというと、それは正しいダメ出し、だからである。

そうでなければならない、のである。

新聞記者のとき、あるいは日経BPで定期購読専門誌としての「日経エンタテイメント」を書かせてもらっていたとき、

確かにそういうダメ出しはあった。

あるセオリーのようなものがあって、そこに当てはまらない原稿は100%NGだった。

それは窮屈で自分を消す仕事であったが、

それができればよい、という仕事でもあった。

ただし、何年もそれをやって、ある時点で、そこから自分らしさが出ていくという仕事でもあった。

まったくのフリーで、いろんなものを書き始めると、

もうダメ出しはない。

で、読者がたくさんいればそれでいいのか、買ってもらえればそれでいいのかというと、

そうでもない、と私は思う。

どっかで、自分の標準のようなある一線を越え続けなくてはいけない。

でなければ、同じことをやっていたら、陳腐になっていく。

安定を望んでいたら、安定はできない。

そういえば、ここ数年で、一人だけ「面白くない」と言って電話を切ってくれた人がいたな。

文藝春秋の西川さんだ。

あのときはなんでこんなタダみたいなのにきつい仕事でそこまで言われなくちゃならないんだ、
と、泣いたけど、

あのときの私の文章は確かに面白くなかった。

西川基準が正しいとも限らないけど、

「その場をやりすごす」ような文章をまっすぐ叩きのめしてもらえたことは

今思えばとてもありがたかった。

50代、60代。

仕事はますます攻めていかないとな。

…そんなことをふと思った。

萬斎さんにも感謝である。









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