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「――ごめんなさい取り乱して。でも私と貴女の間には、どうやら歩み寄る余地の無い見解の相違があるみたいね。私は、もし貴女が私に私と同じことをお願いしに来たら、喜んで協力する用意があった。でも、そういうことじゃなかった――そういうことでいいのね?」
「右京、ちゃん――」
「そんなの一人でやれ。私は一人でもできる。言うのは簡単よね。その簡単な言葉で、どれだけの人間が地獄に堕ちるのを見捨ててきたの?」
「…」
「私にはできない。私は緋菜ちゃんが地獄に堕ちるのを黙って見てるなんてできない。助けてあげたい。一緒に生きていきたい。でも貴女はそうじゃないのね。国分君が弱い男なら、いてもいなくても構わない!」
「――国分は、弱くないわ」
「…ごきげんよう、如月さん。こんなことで私と貴女の友情が壊れるなんて、私は本当に残念です。貴女はどうだか知らないけど」
「友情ね」
「笑ったわね? ――私は友達の選り好みはしないけど、友達を見捨てるような友達は要りません。一人で生きるのは辛くて大変でしょうけど、せいぜい頑張ってください。どうでもいいけどね」
言うだけ言って、右京は踵を返して出て行った。祐はしばらく呆然と立っていたが、やがて糸が切れたようにベッドに倒れこんだ。
「――祐」
ノックして、母がドアから顔を出した。時間感覚が無くなっていた。今何時だろう。
「何」
「さっきの子、どうしたの?」
「何が」
「すごい声してたじゃない。来た時と帰る時がぜんぜん違うし」
「…ああいう子なのよ」
「喧嘩?」
「野次馬ならいらないわよ」
「そうじゃないけど――ちゃんと仲直りしなさいね」
それだけ言って、母は階下へ降りていった。 「…」 仲直り。できるだろうか。
「…」
笑った。できるわけ無え。右京を本気で怒らせてしまった。しかもあれで右京ちゃん、間違ったことは言ってないのだ。私は右京母を見捨て、国分を見捨てた冷血女、さもなきゃ未亡人を口説く小僧も高校生を口説くババアも許すくされ女というわけだ。いじめられるだろうか。まさか右京に限って、そんな陰湿な手段に訴えることは無いと思うが。しかし話はするだろう。あの女はダメだ。右京にその気は無くても、悪意ある噂がいじめに変わるのは時間の問題だ。ごめんね国分。もう私、助けてあげられないかもしれない。
――一回ぐらい、名前で呼びたかった。
「…」
ベッドに身を起こし、足を床につけ、立ち上がる。まだだ。まだやることが残ってる。感傷に浸ってる場合じゃない。
生贄は、その命を捧げなければ意味が無いのだ。
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