贅沢時間の散歩道

のんびり心豊かに暮らしたいですね!

文楽劇場

 さて、念願の文楽劇場に行き、2時半開演の「夏祭浪花鑑」と「鏡獅子」、7時開演の「夫婦善哉」を見ました。 
劇場売店の柿の葉寿司で夕食。7時から文字久大夫さんの解説と、演出の竹本浩三さんからのお話で始まりました。織田作之助の10歳下の友人石濱恒夫が原作から脚本を起こし、吉本の生みの親ともいうべき竹本氏にお笑いの要素をいれてほしいと頼んだそうです。

 原作を読んだときには、こんな男と一緒にいるのなら、ひとりになったほうがましなのに、と思ったのですが、浄瑠璃で聞くとしみじみと情があって、蝶子の一途さに涙が出そうでした。解説にもありましたが、ぐうたらな男を自分の力でひとかどの男にする、好きな人と添い遂げるというのが大阪女の意地なのですって。

 妻子ある柳吉と芸者蝶子は駆け落ちし、東京に出たものの、関東大震災にあって、大阪に舞い戻り、蝶子はヤトナ(やとわれ仲居の略だそう)として一生懸命働いて倹約して貯金するのに、柳吉はカフェや遊郭で散在し、商売を始めてもすぐ飽き、実家から勘当が解けて財産を分けてもらうのを当てにしている始末。やっと蝶柳というカフェを開いてなんとか軌道にのったけれど、柳吉の父が亡くなったとき、蝶子は来るなといわれてついに自殺を図ってしまいます。命をとりとめ、また柳吉が戻ってきて、ふたりが「めをとぜんざい」から出てきて水掛け不動におまいりをし、柳吉が「やっぱり蝶子が一番や」というと、雪が舞い落ちてくる…で幕。

 英大夫さんと共演するはずだった、作曲者でもある喜左衛門さんが6月に亡くなったのは、悲しいことでした。いつもと様子が違う演目ですが、しみじみとよかったです。どこか懐かしくて。

 人形がハイボールを飲んだり煙草を吸ったりするのは、手品のような工夫がしてあるそうです。普通は女の人形に足はないのですが、今回は下駄を履いた足があります。嶋大夫さんの語りが歌謡曲から始まったのにもびっくり。場内が沸きました。嶋大夫さんと清介さんという、大好きなコンビの義太夫、目新しいところがあっても、やはり名調子で引き込まれました。

 蝶子の両親のさりげなくも深い愛情。
蝶子と抱き合って泣いたこともあった芸者仲間だった金八は、鉱山を当てた男と結婚して経営の才を発揮するようになっていて、、蝶子が困っているのを黙ってみているわけにはいかないとカフェの資金を出してくれたのでした。エゴイズムもあるけれど、人情味も濃い、どこか懐かしい時代。最後の水掛け不動では、ほんものの水掛け不動と同じお線香が使われました。

 駅の近くイルクオーレなんばに泊りました。シングルでも大きいベッドで、ロビーでコーヒーが無料で飲めました。そのつど挽くマシンなので、いい香りが多々寄っていました。近くを走る5車線一方通行の道路にはびっくりしましたが、室内は静かでした。

 翌朝は新歌舞伎座近くの喫茶店でトーストセットの朝食。黒門市場と生国魂神社を散策。台風に備えて履いていった靴で足がすごく痛くなって困ったのですが、黒門市場に某有名スリッパメーカーの嬉しいお値段のサンダルがあったので購入し、そちらに履き替えたのであとは楽々歩けました。生魂国神社横は神社の団地のようで、天満宮の出張所のようなものがあったり、浄瑠璃神社というのがあったり…

 大阪は地下街が発達していて、地上にはアーケードがいくつもあるのですね。スーパーというのはあまり見なかったように思います。黒門市場の魚屋さんの「ちょっと食べてみ」という声が優しくて、スーパーのマニュアルどおりのロボット人間とは違うと感動しました。

 午後三味線弾きさんが語る「福聚会」を聞いてから、文楽の奉納を見に水掛け不動へ。簔助さんのお初をまじかで見ることができました。優美なしぐさで会釈しながら通っていく人形が生きているかのよう。そのあと、通天閣を見に行きました。途中夕陽がきれいだといわれるところを通りました。そんな気もするけれど、もともと夕陽はどこでも綺麗ですよね。でも、もう楽しい旅も終わりに近づいていると思うとちょっとセンチメンタルに。

 通天閣のあたりはなにか懐かしい下町っぽい風情がありました。お土産もキッチュなところが魅力です。子供の頃、少女フレンドかマーガレットで読んだ、余命いくばくもない子供がお父さんに通天閣に連れて行ってもらった話のせいで、大阪といえば通天閣、とずっと思っていたのです。

 台風もそれてお天気に恵まれ、風が適度にあったので死ぬほど暑くもなく、思い残すところがないくらい充実した旅でしたが、ひとつだけ気がかりは、神社にいた黒猫。ニャアといいながら、少し距離を置いてついてきたのに、なにもしてあげられなかった。「無責任に猫に餌をやらないでください」と書いてあったけど、無責任なのは捨てた人。猫に罪はないのに、飢えているのを見て憐憫の情を感じないなんて、そんな宗教があるのか、そりゃあ、近所の人たちから苦情がきたり、わざわざ捨てにこられては困るだろうけれど、とひっかかったのでした。

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