スペイン・ロマネスク美術

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石工の印Signos Lapidarios

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写真:Cantero、『ROMANICONo.10』より




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写真Xavier MusqueraOcultismo Medieval』より



 今回はちょっと変わった話題で、石のロマネスク宗教建造物に往々にして密やかに残された、石工たちの印(サイン)について少し思う所を述べてみたいと思います:


 
 私は70歳代前半に集中して、イスパニアの地でかなり多くのロマネスク大聖堂(大聖堂はイスパニア全土で25ある)を含む多くの教会や修道院を訪ねました。

 実際にこう言った石の分厚い建造物を造り上げた石工たち(工匠が主宰する工房に所属)が、往々にして石工個人として自分だけの独特な印(サイン)を目立たぬ場所、例えばアーチの隅っこ、穹窿(天井)の端や内外壁の切石の端などに残しています。

 ではそんなことをする意味はどこにあるのでしょうか。勘ぐるに、“俺がこの仕事をしたのだ”という自負心の証左を残したいという思いもあったことでしょう、画家たちがそうするように。


 


当時は大衆の大半が百姓だった時代で、石工という専門家は案外誇り高い仕事をしているという自負があったことは事実で、既述の仕事を完成したという証拠のみならず、その報酬を受け取るにあたり、監督者の査定を受け報酬額を確定させるための身分証明的、縄張り的な印でもあったようです。


 


またそれらの印に意味論的な解釈をする特殊な学者は、占星術的な魔術のような印であったとも言っています。

別の学者はずっと昔のエジプトやローマ、或いはギリシャ時代の建造物にもこういったアルファベット紛いの印が付帯していると云っています。

ロマネスク時代のものは、この印は形というよりももっと聖なる神秘な暗号みたいなものを感じます(西語でocultismoというべきか)。

また別の専門家たちの間には、“物質と精神”、“超越的なものと個性的()”なものの間にある正に“神聖なものと人間的なもの”という中間的な不思議なものを象徴しているとする考えもあります。

こういった見解は、ユダヤ王国のソロモンの印璽やダビデの用いた二つの三角形が絡んだような印(つまり上と下、天上と地上すべてを意味する)から発想されたものだとする説も存在します。



 堅牢性、耐久性を持つロマネスクの永遠の「石」の魂、そして石工たちの息遣いや汗、また鑿の響きが、これらの印から伝わってくるように感じられます。


2017.03.20



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