ここから本文です
ブログ始めました!

詐欺話法?


先日、某社のコンサルタントが来社しました。

その人は銀行業務の経験者のようなんですが、なんとその8割以上の発言の中に、メガバンクでは、金融庁では、という枕詞が意味なくくっつけられていて、笑えました。そんな自分の経歴が輝かしいものだと思っているのでしょうか。

メガバンクでは普通にやってましまね、まあそれは全部自分がしたんです、メガバンクではみんなこう考えています、金融庁で見てましたとか。資料を見る場所なんて、金融庁で見ようが、スタバで見ようがおなじじゃないかと(笑)。

ここまでくると、詐欺話法と変わりませんよね。

そして、どの発言も枕詞をとると、首を傾げるようなものばかり。いくら業界が違ってもそりゃないだろ的な発言、保険業界の基本すら分かってないんじゃないの的な発言。これって銀行業界の人たちからしたら名誉毀損と思われかねない。メガバンクの人に聞くと、それは全然違うといわれましたし。でも、枕詞があることで、フーンと思ってつい感心してしまってることもあるんです。

会社相手の商売だと、あまり法律によって守られませんので、やはりコンサルを使う側が賢くならないと、こういうのはなかなか淘汰されないのでしょう。

人間、どうしても、これが答だ的なものをつい求めがちですが、リスク管理はそういうものではありませんね。そう分かってでついつい詐欺話法に乗せられそうになりました。

リスク管理業務に携わる上では誰も経験すると思います。みなさんも気をつけましょう。

この記事に

マクロストレステスト


ひと昔前から、マクロストレステストという言葉を良く聞きます。セミナーやらでよく耳にするし、どうやら銀行業界では何かそんなものをやってるらしいから、うちの保険会社でも必要なんじゃないか?こんな疑問をもっているリスク管理関係者が少なからずいるようです。

マクロストレステストに限らず、一般的にストレステストには、当局主導で行うものと、内部管理目的で実施するものがあります。銀行業界でマクロストレステストが導入されているのは、当局主導によるものといえます。

一方、保険会社では、当局はまだマクロストレステストを導入していません。将来的には、導入される可能性はあるにしても、今、すぐ事前に準備しておく必要があるほど喫緊の課題ではないでしょう。

では次に、内部管理目的での必要性についてはどうでしょうか?マクロストレステストは、あくまでシナリオの作り方からみたストレステストの一形態に過ぎません。すなわち、何か特定の目的と結びついたものではなく、あくまでもシナリオ作成のためのツールに過ぎないということです。従って、従来のストレステストを運用していくなかで、これこれの理由でマクロストレスシナリオが必要だという問題意識が生まれて、初めて必要になるものといえます。従来のストレステストとは全く別に、何か新たな目的を考えて、マクロストレステストを導入する必要があるといった類のものではありません。

こう考えると、既存のストレステストのレベルアップを含む、リスク管理高度化に関する様々な課題認識の中で、上記のような必要性に関する問題意識が自発的に生まれたわけでなければ、保険会社でマクロストレステストの導入に向けた検討がただちに必要になるということはまずないと思います。

冷静に考えたらこのようなことはすぐに分かりそうなものなのですが、コンサルによるセミナーや営業活動がそうは思わせないようにしているようです。

私の個人的な印象では、マクロストレステストを前面に押し出しているコンサルは、まずあてになりません。

彼らは、銀行業界では先進的なマクロストレステストが行われているといいます。そして当局が銀行業界でマクロストレステストを導入した背景や活用状況についても詳しく説明してくれます。もちろん、保険監督の分野ではまだ導入されていないので、そんな話が関係ないことは言うまでもありません。

しかし、ここで監督目的で導入された理由を、先進的、高度化という2つの意味不明なキーワードを使って、内部管理目的で必要な理由と混同させてしまうのがミソのようです。このため、マクロストレステストの必要性の部分については、ぼんやりした内容のことを簡単に説明するだけで、すぐにシナリオの作り方とか技術的な話に移ってしまうはずです。こんな高度な手法があるからと、そもそものマクロストレステストの必要性という論点に目を向かせないように。実際は、技術的にみても別に高度でも何でもないんですが、センセーショナルな広告を見せられた時に人間が示してしまう素朴な反応をしてしまう人は意外に多いのです。

そして何やら、銀行でやってるわけだからマクロストレステストが必要そうだ、何よりこんな先進的なものだからと思ってしまったら、もうコンサルの思う壺です。

そうならないためには、やはり原則に立ち返ることです。マクロストレステストはなぜ必要なのか。監督目的でなければ、内部管理目的のはず。内部管理目的で必要なのは、なぜなのか。当社のストレステストに足りない何かを補ってくれるものなのか。それはどの程度重要性のあることなのか。

こう考えながら、コンサルの話をもう一度聞いてみましょう。そして論理立てて質問をしてみましょう。多分、納得のいく説明ができるコンサルはいないと思います。こんな感じです。

A このように、御社のストレステスト高度化の一環として、マクロストレステストを検討してはどうでしょうか?
B 銀行業界でマクロストレステストが行われてるのは、監督当局が行ってるからですよね。保険業界でも必要なんですか?
A 確かにその通りです。しかし、保険業界でもマクロストレステストが導入される可能性はあります。ストレステストの高度化の一環として、検討する価値はあるのではと思います。
B 前者については、保険業界にマクロストレステストが導入されてからで良いと思う。当局も実際に導入する際には、慎重に検討するはずであり、喫緊の課題ではない。
A そうですね。ただ、銀行業界の動向を踏まえれば、全く同じようになるとは言えないにしても、ある程度、マクロストレステストが導入される方向性というのは予想されるかと思います。何より、ERMにとって重要なストレステストの高度化の一環として検討されてはと思います。
B 内部管理目的で検討してはどうかということと理解した。しかし、当社のストレステストの現状を踏まえ、次のステップとして、マクロストレステストの導入が優先課題だと思われますか?私どもとしては、地に足の着いた提案を期待している。
A ストレステストの高度化には、いろんな方法があり、そのようなメニューの中の一つとして検討されてはどうでしょうか。
B マクロストレステストの話はもう良いので、当社のストレステストの現状をどのように認識されており、それに基づき、どのような改善の方向性が考えられるのかを聞かせて欲しい。
A 私は銀行業界の出身なので、保険業界のことはそれほど詳しくないのですが、銀行業界のストレステストの実務は、参考になることもあると思ってます。もちろん、保険業界と銀行業界には違う面も多々ありますので、その点について意見交換させて頂き、ご一緒に考えていけたらと思っています。

どうでしょうか。私であれば、なぜ必要性も分からないマクロストレステストの話を延々としてきたのか、この人は我々に何のバリューを提供できるのか?と不信感を抱かざるを得ないと思います。

マクロストレステストは、銀行業界のノウハウを移植するだけなら銀行業界の経験をそのまま機械的に生かせるので、コンサルの立場からすれば非常に楽なのです。そこで、保険業界の人がなぜかそれが必要な気分になっているということであれば、これを見逃す手はないというのとになるでしょう。だから、保険会社にマクロストレステストが本当に必要かどうかなんて話には興味がないのです。

まあ、営業という面からみれば、お客さん自身が何が必要かはっきり認識していないものを、何が必要かを診断し、その必要性を理解してもらった上で売るというコンサル営業は非常に難しいものです。それよりも、お客さんが何となく必要と思ってるものを、深く考えさせずに売り込む方が楽だと考えれば、以上のような話も納得できるのではないでしょうか。

この記事に

数理ソフトのスピード

数理ソフトの営業の話を聞いていると、◯◯は早いとか、××は遅いとかいう話を良く聞きます。

ただ、会社によって保有契約も違えば、システム環境も違う、インプットのサマリー方法や、出力データ、出力サマリー方法も違うことから、なかなか比較は困難です。その辺の前提を変えてしまえば、遅いとも早いともなんとでも話は作れそうに思います。

この手の計算速度の話は、ほとんど表に出ることがありません。

欧州の大手金融機関は大量のサーバーを持っており、膨大な確率論的計算を行っているという話を聞いたこともあります。ただ、これもどのような計算をしてるのか、データ量やシナリオ数はどの程度なのか、何台で並列処理してるのか、全く分かりません。

このように、どのソフトが早いのかが分からないだけでなく、どの程度のサーバーを用意すれば良いかについても、ベンチマークになるものはありません。

処理サイクルについても、年次なのか四半期なのか月次なのか、その辺もよく分かりません。

ただこの手の話は、担当してる人はかなり関心を持っているように思います。そう思って何か情報が落ちてないかなと探してたら、ちょっと参考になりそうなホームページを見つけました。これは、かなりびっくりしました。

https://www.milliman-aurora.jp/example_aflac.html

保有契約データは5000万超のレコードを超えているにも関わらず、四半期毎に確率論的な計算を行っているそうです。私の感覚からしたらすさまじい速さだと思ったら、大規模なデータセンターを使って運用しているそうです。ソフトの速さだけではさすがに無理ですよね。

こんなシステム環境を整備するためには相当のお金をかけてるんでしょう!日本にもこんなにリスク管理にリソースを投入している会社があるとは驚きです。

きっとリスク管理をかなり重視している会社なんでしょう。どんなリスク管理態勢なのかとディスクロージャー資料を見てみましたか、こちらの方はあまり開示されてませんでした。残念です。

この記事に

リスク管理担当役員

よく、日本の保険会社の役員はローテーションで就任する人が多いので、リスク管理に詳しくないゼネラリストな人がリスク管理担当役員をすることが多く、それがやや問題であるかのように言われることがあります。

あるいは、欧州保険会社のCROにインタビューをしたら、自分の言葉で深い説明ができるのには感動した、我が国もそういう方向に向かって追いつけ、追い越せで頑張るべきだ、という話を聞いたこともあります。

これらの主張は、我が国はERMを今後、高度化していくにあたって、必要な人材
が不足していると言ってるように思われます。

もちろん、リスク管理担当役員なので、リスク管理に詳しいに越したことはないでしょう。いろいろな指示や議論をする際に詳しい知識があることは、当然、望ましいことだと思います。

一方で、ゼネラリスト役員であっても、ボトムアップで上がってくる内容を、素人でも分かるように説明させ、常識的に判断する、関係者を巻き込み強力なリーダーシップを発揮することで、リスク管理の推進を図ることができると考えることも可能という主張もありうるでしょう。

これらはいずれが良いかという二者選択の問題ではありません。いずれであっても、それに応じたスタイルを確立することができれば、かなりの成果が挙げられると思います。

逆に、いずれであっても、適切なスタイルを発揮することができなければ、なかなか成果は上がらないでしょう。

例えば、ゼネラリスト的な役員でよくある失敗は、定量的なことは分からないし、それほどは重要だとは思わないが、(経営者としてごく自然な感覚から、)経営に役立つリスク管理を実現したいというものです。

もちろんゴールはそこにあるのですが、このような役員は、その目的のために必要なことは何なのかをスタッフから良く聞くようにしなければいけません。定量的なところがきちんとできさえすれば、特にフレームワークとかなくても、それを少しづつ使っていけば、それが活用に自然と繋がっていくのに、定量的な話を避けて、まずフレームワークを考えようというワナに陥っている人はかつてよくいました。リスク管理でいろいろな数字がとりあえずでも使えるようにするためには、単に数字が出せるだけでなく、バリデーションや文書化といった、一見とっつきにくい周り道が重要だということを理解できるかがポイントになるでしょう。

逆にリスク管理に詳しい役員の場合、文書化にはこういう要素も必要だとか、細かいミクロなところにばかり目がいってしまう人もよく見かけます。それはそれで大事なのですが、ミクロな話ばかりになってしまうことで、スタッフが逆にそんな細かいことよりも経営への活用が大事なんだといって、必要な周り道を歩かなくなってしまう、という悪循環に陥ってしまう場合もあるようです。

このように、目の前のERM高度化という短期の視点でいえば、我が国のERMを推進するために必要な人材が不足してるとは、必ずしも言えないのではないでしょうか。

ただ、中長期的に見れば、リーダーシップがあるだけのゼネラリストよりも、より専門的な役員候補を育てていくべきという主張はあり得ると思います。

この記事に

ERMに関する情報開示

最近、ERMの開示について充実化を図りたいが、どのような内容を追加すべきか、また説明内容に見直すべき点はないか、といった声を良く聞きます。

このような疑問に対して、欧州におけるソルベンシーIIの開示規制を参考にしたり、開示の充実している海外保険会社の事例を参照し、アドバイスすると、なるほどありがとう!と喜ばれるようです。

ERMに関する開示については、現状、日本の規制や業界ルール等でそれほど事細かい要件は定められていません。一方で、潜在的に開示可能な情報にはかなり多くのものがあります。従ってソルベンシーIIや海外保険会社の事例というのは、非常に参考になるというのはその通りだと思います。

しかし、「ERMについて、このような事項をこのようなレベルで開示すべきである」ということについて、それほど理由も考えず、ただただ先進事例のいうことで真似をする、というやり方には少し疑問を感じずにはいられません。もちろん、“先進事例”なので、大きな方向性として間違ってはいないでしょうし、即座の改善につながるアイデアとしてそれなりに有用であることは認めた上でです。

私は、このような先進事例よりも、ERMの開示を行う上でのプリンシプルは何かという、より原則論的な考え方こそがより重要であると考えています。すなわち、経営の考え方として、ERMの開示に関する方針のようなものを明確化し、これに基づき、どのような内容をどの程度開示するか、またそれらをどのように説明するかといった点を考えるべきだということです。

このようなERM開示方針は、ERMの開示を充実化させる意義・目的をどのように捉えるかに対応するものです。具体的なイメージの例としては、(既存および将来の潜在的な)保険契約者に財務の健全性を訴求する、投資家に対してERMへの取組みを重視していることを示すことにより、(別途開示されている経営戦略とともに)将来の成長性を訴求する、ERMへの取組みにおいて業界をリードする企業というイメージを確立する、といったものが挙げられます。

このような開示方針を明確化することによって、経営の考え方に明示的に沿った形で、充実させるべき開示内容や開示レベル、適切な説明方法等について、検討・評価することが初めて可能になります。

ストレステストの開示を例に、具体的なイメージをもう少し説明します。

保険契約者に財務の健全性を強く訴求するためにERMの開示の充実化を図るという開示方針を掲げている会社の場合、ストレステストが実効性のある形で実行され、その結果に問題がない、あるいは適切な管理が行われていることを説明するという方法の他、より簡潔に(社内のストレステストで用いているシナリオとは別の)開示用の分かりやすい単純なシナリオの結果を示すというアプローチも考えられます。

一方、投資家にERMへの取組みを訴求したい場合には、より具体的に、経営戦略が確実に実行されることを訴求したいのか、将来の不透明な市場環境に対して懸念不要であるのとを訴求したいのかといったより具体的な視点が必要になるでしょう。すなわち、このような検討に当たっては、当たり前ですが、開示方針だけでなく、会社の置かれている経営環境や将来の市場環境の見通し等についても留意する必要があります。これらの視点によって、シナリオの選定方法審議プロセス、テスト結果の具体的な活用方法、あるいはストレステストの限界を適切に認識し、それを踏まえた管理を行っていること等、どのような説明を充実化・改善すべきかが明らかになるでしょう。

このように、ERMの開示方針のようなものを明確化し、ERM委員会等において、当該方針に基づき開示内容を検討した上で実際の開示を行う、という社内プロセスを構築することこそが、ERM開示に関する最も根本的な処方箋であると思います。

最近では、業界セミナー等でもERMの開示について取り上げられることも増えてきているようですが、目先の処方箋に留まっているのか、根本的な処方箋についてのげんきゅうがなされているのか、注意して聴く必要がありそうです。

この記事に

[ すべて表示 ]

本文はここまでですこのページの先頭へ
みんなの更新記事