甲状腺がん、長期間様子見も 9割は進行緩やか、高い生存率
年に8千人以上が発症する甲状腺がん。
大半は進行がゆっくりで、診断10年後の生存率は9割以上と高い。
がんは一般的に早期発見、早期治療が基本だが、甲状腺がんは、長期間、様子をみることも少なくない。被曝も原因になるため、東京電力福島第一原発事故による影響も心配されている。
●症状、20年間変わらず
埼玉県在住の女性(46)は20歳のころ、のど仏の下にゴロゴロするしこりがあるのに気付いた。
病院を4カ所回り、最後の病院で、甲状腺がんと診断された。
23歳で2センチ弱のがんがある甲状腺の右側を切除した。
左側にも1センチ以下のしこりがあった。
針を刺して細胞をとって調べる「細胞診」では、良性と悪性の判断が難しいタイプだった。
約10年前までは半年に1度ほど超音波検査を受け、年1回は細胞診も受けた。
しこりの大きさに変化はなく、悪性度の診断も「灰色」の状態が続いた。
この10年ほどは超音波検査だけを受けている。結局、20年以上ほとんど変化がない。
甲状腺がんは、亡くなった後に解剖をして初めて、甲状腺がんとわかるケースもあり、高齢女性では2〜3割で見つかるとの報告もある。
患者は女性が男性の3〜5倍も多い。危険因子は肥満と被曝で、それ以外ははっきりしていない。
●手術の不利益、考慮を
甲状腺がんの診断は超音波検査が基本だ。
しこりの形などの特徴をみれば、悪性の疑いがあるか、ほぼ診断がつくという。
甲状腺がんの家族がいる人や、しこりが急に大きくなった場合には、悪性の恐れがあり、詳細な検査が必要になる。
日本内分泌外科学会と日本甲状腺外科学会によると、集団検診などの触診や超音波検査で見つかったしこりのうち悪性の割合は約4〜16%だった。
虎の門病院の宮川めぐみ内分泌代謝科・健康管理室長は「甲状腺のしこりには、たとえ悪性が疑われても、進行が非常にゆっくりな例も多い」と言う。
甲状腺がんの9割を占める乳頭がんで、診断10年後の生存率も約95%と高い。
ただし、甲状腺がんの1〜2%は「未分化がん」と呼ばれ、急激に悪化し、治療成績もよくない。
「他のがんは若いほど進行が早く、悪性度が高くなるが、甲状腺がんは違う。高齢になるほど悪性度が高くなる。未分化がんになるのは50歳以上」と、甲状腺専門の伊藤公一・伊藤病院長。
治療の基本は手術で、がんの場所や大きさにより、甲状腺をすべて摘出したり、部分切除したりする。
周囲のリンパ節も同時に取ることが多い。
「ただし、甲状腺がんは、手術で得られる利益と手術に伴う不利益をよく考慮して、手術の実施や時期を判断する必要がある」と福島県立医大の鈴木真一教授(甲状腺外科)は話す。一般的にがんは早期発見、早期治療が基本だが、甲状腺がんは事情が違う。
手術で甲状腺の近くにある発声に関係する神経を傷つけるなどの合併症が起こる可能性はゼロではなく、甲状腺を全摘すれば、定期的な甲状腺ホルモンの補充も必要になるからだ。
●福島の子ども「検査し見守る」
甲状腺がんは、放射性ヨウ素の被曝でも起こるため、東京電力福島第一原発事故で、福島県は子どもの甲状腺検査を行っている。
被曝で甲状腺がんが発生するのは4〜5年後からだ。
今の検査は、被曝前の現状を把握するためのものだ。
県の中間報告では、福島県立医大で検査した3765人中1086人に2センチ以下の液体の入った袋(嚢胞〈のうほう〉)、82人にしこり(結節)があった。
しこりが5・1ミリ以上の26人は血液検査などを追加で受ける。
結節や嚢胞は甲状腺の組織の形が変化して起こる。
甲状腺の働きには、影響せず、良性のものが多い。
「現時点では福島県民の甲状腺への被曝線量はチェルノブイリよりずっと少ないとみられる。ただ、事故直後の放射性ヨウ素の影響は不明なので、子ども36万人は生涯、甲状腺を検査して見守っていく」と鈴木さんは言う。
出典 朝日新聞 apital 2012.3.13
版権 朝日新聞社
<自遊時間>
太陽と地球は人間でいえば何歳?
太陽は約46億年前にできたとされますが、永遠に輝き続けるわけではありません。
太陽のように自ら輝く恒星のエネルギーは、核融合反応でまかなわれています。
核融合の燃料には限りがあり、太陽にも「寿命」は訪れるのです。
恒星の運命は質量によって異なります。
太陽の約8倍より重く誕生した恒星は、最期にすさまじい超新星爆発を起こし、中性子ばかりの星や、ブラックホールと呼ばれる天体を残します。
一方で8倍より軽い恒星は、超新星爆発の前にエネルギーを使い果たして「白色矮星」という安定した天体となり長く冷え続けます。
太陽もこの仲間です。
最近の研究では、太陽は98億歳ごろに核融合の燃料である中心の水素を使い果たし、半径が35%ほど大きくなり、約2倍の明るさになるとされています。
116億歳ごろには表面温度も下がり、大きさが約2倍になります。
122億歳ごろには大きさ170倍、明るさ2300倍まで急速に増し、赤く輝く「赤色巨星(せきしょくきょせい)」に進化します。
ここに来ると、核融合反応でできたヘリウムが高温高圧になり、今度はヘリウムを燃料とした核融合が始まります。
しかし約1億年で消費され、太陽は白色矮星になるとされています。
これが124億歳くらい。これを「寿命」とすると、いまの太陽は人間の30歳くらいですね。
では、地球は?
地球は太陽が生まれてほどなく生まれたとされていますから、いまが約46億歳。
滅亡するとか爆発するとうわさされますが、科学的にはあり得ません。
太陽が本格的な赤色巨星になる122億歳ころに、太陽にのみ込まれてしまう可能性が高く、それが最期でしょう。
ですから、地球も人間でいえば30歳くらいでしょうね。 (的川泰宣・JAXA名誉教授)
出典 朝日新聞・夕刊 2010.2.27
版権 朝日新聞社
|