無題
神田古書店街の殺人 文野さん、思い出す
枝島さんの言葉に、マスターと夏目さん、わたしは、それぞれの表情を確かめでもするかのように、交
互に見やった。
文野さんは遠い記憶に悲しいことでもあったのだろうか、天井をにらんでため息をひとつつき、やがて
うつむいて言った。
それはほとんど爆弾のようなものだった。
「でもシンゴちゃん、途中から来なくなっちゃったのよ。みんなとは学校で顔を合わせるだけの仲だった
から、よくわからないんだけど。いなくなっちゃたらしいの」
その夜、意見は真っ二つにわかれ、閉店してからも席をボックスに移して、マスターが別に入れてくれ
た、酸味のきいたサントスを飲みながら、議論は白熱した。
枝島さんとわたしは警察に話すべきだと言い、夏目さんは関与しない方が言い
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