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江國香織著『流しのしたの骨』 を読む

江國香織というと、巧い作家という印象がある。
いや、もちろんプロの作家に対して、素人が「巧い」なんて失礼な言い草なんだけど、やっぱり私の印象としては「巧い」なのだ。

何が巧いって、まずはタイトル。
一番感銘を受けたのは、
『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』
のタイトル。
このタイトルを眺めるだけで、見事というか何というか、ため息が漏れるというか、一本取られたというか、軽く飯3杯はイケルというか・・・。
安全じゃないんだ・・・、適切じゃないんだ・・・、でもこう何だか泳ぎたくなるような、胸の奥からの衝動が込み上げてくるんだ・・・、安全じゃない=危険だと言ってるわけじゃない、そう適切じゃないんだよなあ、そうだよなあ、そういうもんだよなあ・・・。
とまあ、何が何だか分らないでしょうが、いっぱいイメージが広がって、あの時はああだったよなあ、などと自分の人生なんかも軽く振り返ったりしてしまう。
そうこうしているうちに何だか、満腹してしまう。
ってわけで、実はこの本読んでいない。
タイトルだけで、飯3杯喰っちゃったからなあ・・・。

他にも巧いと思うタイトルは色々ある。
『号泣する準備はできていた』 ⇒ 迫力あるなあ・・・。
『雨はコーラが飲めない』 ⇒ 意味が分らないとこがミソ。何事かと手に取ってしまう。
『間宮兄弟』 ⇒ 江國香織さんがやると技ありにみえる。
『薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木』 ⇒ 全部読めた自分が賢く思えてくる。
『絵本を抱えて 部屋のすみへ』⇒ これも巧い。「絵本を抱えて」の多幸感と「部屋のすみへ」の閉じた感じのギャップがいい。
その他、諸々です。

で、今回読んだのは『流しのしたの骨』。
これも、日常的な『流し』という言葉と、ただ事ではなさそうな『骨』という言葉の組み合わせが妙。
何となく小池真理子のサスペンスみたいな気もしますが・・・。

でも、お話は、一風変わった家族の話。
長女は夫と別居、次女は自殺未遂の過去を持ち、三女の私は夜中に散歩する癖のある無職、末の弟はフィギュア・マニア、と身も蓋もない言い方をすると、そういう姉妹弟のお話なんだけど、この人が描くと独特のふんわりとした美しくて儚い世界になってしまう。

思うに、この人は文章に空気を含ませるのが、とっても上手だ。
合間、合間に、綺麗なもの素敵なものを拾い上げるエピソードを差し挟むので、ふわっとした小説世界が出来上がってしまう。
スポンジケーキをふんわり仕上げるには生地に空気をたっぷり含ませること、ってのと同じような気がします。


さてさて、それだけ褒めておいていうのもなんだけど、わたくし、この人の本がちょっと苦手です。
何というか、独特の苦手なムードが漂っているからです。
そのムードのことを私は
「ちょっと他の人とは違う私達って、素敵」ムード
と呼んでいます。

苦手なのなら、読まなきゃ良いのにねえ・・・。
それでも読んでしまうのは、タイトルの巧さと、読み通させてしまうだけの独特の世界を持っているからだと思います。
江國ファンの方、お気を悪くなさらぬよう。

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すみません、『ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ』のコメント返しを読んでいなくて、今ここに来ました。
江國香織さん苦手と書いたけど、まさにゲッコーさんが表現しているように、私もこの方の「巧い」と「ちょっと他の人とは違う私達って、素敵」ムード(いや〜ゲッコーさん、ウマイ(笑))というのが苦手だったのですが、逆にこれを読むと、一度はちゃんと読んでみようかなという気になってくるのが不思議です。
独特の世界に浸りきってみたいと思う時に読みたいです。

ちなみに私、小池真理子さんはけっこう好きなんですよw
彼女はあの時代を生きた女性独特の「私インテリなの」ムードがあって、鼻につくことがありますが、なんとなく気持ちはわかるんです。
そうだったんだろうなあって(笑)
頑張ったんだろうけど、感性がとても庶民的なのに好感が持てます。

2009/2/15(日) 午後 6:12 kiyory

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Kiyoryさん。
懐かしい記事にコメントありがとうございます。
でも、振り返ってみると、この記事、今までコメントなかったんですね。結構、ちゃんと書いたつもりなので、ちょっぴり残念な気がします。
江國さんは、今でも『巧いけど、ちょっと苦手』の印象が続いています。男性作家では、石田衣良という人が、丁度そんな感じです。なんか気に触るとこがあるんですよね。
私も、小池真理子は好きで、直木賞受賞作『恋』から入った口ですが、その次の『欲望』の方がずっと良かったです。直木賞は、賞のやりどころをいつも外してる気がするな・・・。
>感性がとても庶民的なのに好感が持てます
は全く同感で、でも、庶民的でないものに憧れる姿勢のようなものに共感してしまうのかな、なんて思ってます。

2009/2/17(火) 午後 11:11 GECKOO

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良い記事なので僕もコメント残しますよ。
お二人の意見興味深いですね。

2009/4/8(水) 午前 3:38 [ くらげ太郎 ]

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くらげさん、こないだはすみませんでした。
私の江国香織さんのイメージは、こんな感じです。
すごい巧い作家だなあ・・・、というのは皮肉でもなんでもなく、ホントにそう思っています。こんな風に、独特の世界を立ち上げることが出来るなんてスゴイ、と思ってます。
ただ・・・、やっぱりちょっと苦手なんです・・・。

2009/4/8(水) 午後 10:19 GECKOO

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