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ワルター・ジュスキントのコダーイ

ワルター・ジュスキントのコダーイ


CD4
曲目/コダーイ
1.「ハーリ・ヤーノシュ組曲」 4:05 2:28 5:46 4:29 5:36 3:24
2.ガランタ舞曲 18:16
3.マロシュセーク舞曲 14:32

指揮/ワルター・ジュスキント
演奏/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

録音/1977/11/24  キングスウェイホール、ロンドン

P:ブライアン・B・カルバーハウス
E:ケネス・ウィルキンソン

EMI Classics for Pleasure CFP40292  CD 7243 5 72683 2 5

イメージ 1


 日本ではほとんど日の目を見なかった英EMI系のClassics for Pleasureから発売されていたワルター・ジュスキンド(最近はススキンドという表記になっているようです)のコダーイのアルバムです。このレーベルには70年代、このジュスキンドをはじめとして、マッケラス、ロックハートなどが盛んにロンドンフィルと録音をしていました。残念ながら東芝からはほとんど発売されなかったようです。

イメージ 2 当時はイギリスのGramophoneを定期購入していて、「MAILDISC」というところを通じて直輸入した一枚です。ジュスキントの名前は晩年セントルイス交響楽団とVOXに盛んにレコーディングしていましたからその名前を知っていましたが、唐突にこのClassics for Pleasureからこんな魅力的な一枚が発売されたので迷わず買ってしまいました。まあ、当時コダーイの作品に興味を持っていたこともありますがね。この1977年はセントルイス響(1968-1975)を辞任した後で、シンシナティ響(178-1980)に移るまでのフリーの期間に当たります。ジュスキントはセルのアシスタントをしていましたので、音楽の骨格は非常にすっきりとしています。そうそう、小沢征爾が国外では初めてカナダのトロント交響楽団の常任になりますが、その前任者がこのジュスキントでした。メジャーレーベルへの録音は伴奏ものが主だったために殆ど知られていませんが、小生は注目していた一人です。VOXに録音したホルストの「惑星」やドヴォルザークなんか小生のコレクションのベストにはいります。

 このレコード、愛聴盤で今でもたびたび引っ張りだして聴いています。このClassics for Pleasureのカタログは新旧の録音とともに、玉石混淆の内容で宝探し的な楽しみもあるのですが、その中ではピカ一の内容でした。CDのジャケットから表示は消えていますが、LPのジャケットには左下にこの録音のスポンサーとなったW.D.& H.O.Willsの表示があります。イギリスのタバコ会社ですね。そう、このレコードはそこが後援していた一連のLPOの「MASTER Series」の中の一枚なんです。そして、録音も非常にクリアーでバランスがいいし、EMIの録音の中では出色の出来でした。なんと調べてみたら録音エンジニアはケネス・ウィルキンソンが務めているではありませんか。デッカの黄金時代を築いてきた名エンジニアです。なるほど、だからEMI離れした音がしているのかと納得した次第です。

 コダーイの「ハーリ・ヤーノシュ」には民族楽器の「ツィンバロン」が出てきますが、この楽器の音色が絶妙なバランスで収録されています。デッカにはケルテスを始め、ドラティ、デュトワ等の優れた録音がありますがそれらに遜色の無い仕上がりになっています。ロンドン・フィルはこの時期ハイティンクが常任で目覚ましい活躍をしていました。そういう意味では、充実していた時期の録音ということが出来ます。このコダーイの「ハーリ・ヤーノシュ」は独奏楽器がかなり活躍します。それらのソロはクレジットされていませんが、ヴァイオリンといいクラリネットといいなかなか味のあるソロを聴かせています。

 第1曲「前奏曲、お伽噺は始まる」での管弦楽での全奏はくしゃみを模倣していますが、それが終わって隠し味できにピアノが響くところもくっきりと聴こえます。第2曲の「ウィーンの音楽時計」も通常軽やかに2分ちょっとのアップテンポで演奏されるものが多いのですが、ジュスキントは2分半ぐらいかけてじっくりとメロディを聴かせてくれます。このテンポがこの演奏のお気に入りの理由です。反対に第3曲の「歌」はテンシュテットなんかは6分以上かけて演奏しているので眠たくなってしまう演奏なんですが、ジュスキントは
ツィンバロンに重点を置いているのでその音色が生きるテンポで演奏しています。第4曲「戦いとナポレオンの敗北」は音の遠近感がくっきりと捉えられた録音で、秀逸です。アルト・サクソフォンの音も決まっています。続く打楽器の地響きを伴うサウンドもいいですねぇ。最後は、グリッサンドを伴ったトロンボーンのうらぶれた伴奏で、アルト・サクソフォーンがさめざめと(しかしどこか間抜けな)哀しい歌を歌います。まさにおとぎ話の世界の音楽になっています。第5曲の「間奏曲」もツィンバロンの響きが美しいです。オーケストラに決して埋もれないで引き立っています。それでいてバランスは崩れていないのですから、エンジニアリングの勝利でしょう。古い民謡の18−19世紀のヴェルブンコシュという舞曲を使用しています。最後の「皇帝と廷臣たちの入場」は物語の最後を飾るにふさわしいにぎやかな曲です。普通は、オーケストラの聴かせどころですから華々しくならしたいところですが、ジュスキントはおとぎ話という側面をきっちりと捉えていて、コケティッシュな表現を持たせて演奏しています。そういうところも鮮やかで隠れた名盤といえるのではないでしょうか。

イメージ 3
                 CDではW.D.& H.O.Willsのロゴは消えています。

 レコードではB面にガランタ舞曲とマロシュセーク舞曲が収録されています。特にガランタ舞曲ではクラリネットのソロが大活躍しますが、これが実に魅力的です。ジプシー的なこぶしのきいた節回しが何ともいえません。それをサポートする弦楽の響きもなかなかです。チェロもつややかで味があります。正直言って、このジュスキントの演奏で初めて「ガランタ舞曲」の良さを知りました。この曲には7つの異なる舞曲から構成されていますが、その一つ一つをちゃんと描き分けています。

 「ガランタ」というのはウィーンからブダペストに向かう途中にある村の名前なんですが、現在はこの地域はスロヴァキアに属しています。コダーイは幼少の頃,この付近で過ごしています。そういう思い出をこの曲に詰め込んでいるのかもしれません。「マロシュセーク舞曲」もトランシルヴァニアの民俗舞踊を題材にしています。こちらはフルートが活躍しますが、どちらも親しみやすいメロディがもとになっていますからコダーイを知る上では絶好の曲目ということが出来ます。そして、それらの曲を過不足無く聴かせるこのレコードは彼の代表盤の一枚といってもいいでしょう。ジュスキントはチェコはプラハの生まれです。そういう意味では同根を持つ音楽ということが出来ます。

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