雑想草庵

Welcome to genkinashun’s hermitage 〜童話やスケッチを気の向くままに〜

幼稚園のおもちつき

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子供の通っている幼稚園では、毎年年末になるとおもちつき大会を開催します。
子供たちと父兄、またおじいちゃんやおばあちゃんも集まって、一緒におもちをついたりダンスや歌を歌って懇親を深めるイベントです。
 
今回も晴天にめぐまれ、地域ボランティアや幼稚園の世話役の方々のお手伝いを得て、にぎやかに実施されました。
かまどに薪を燃やし、もち米をふかし、本格的なおもちつきの催しです。
子供達は、おもちつきの体験が初めての子も多く、目をランランと輝かせて楽しんでいました。
子供用の杵も用意されていて、交代で全園児がおもちつきの体験をすることができました。
 
無事おもちをつき終わった後、全員それぞれの教室に入り、つきたてのおもちをいただくことになりました。
教室に入り、園児たちはめいめいのイスに座り、保護者たちはそのまわりに立っています。
そこに、先生が入ってきて、保護者たちに挨拶をしてから、園児と保護者たちに次のようなお願いをしました。
「今日用事があって、お父さんやお母さんがどうしても出席できないというお友達が何人かいます。今日は、出席くださっているお父さんお母さんにはだれかさんのお父さんお母さんではなくて、みんな全員のお父さんお母さんになってもらいます。ご協力よろしくお願いします」
全員笑顔でうなずきました。
それから、保護者たちは、自分の子供の横ではなく、初めて顔を合わせる園児たちの合間に小さなイスをもっていき、隣になった子に声をかけながら席に着きました。
そして、園児たちは、それぞれ自分の給食セットをバッグから出し、保護者達にはお箸と紙のお皿が配われました。
 
それから、おもちの入った大きなお鍋をもって、世話役の方々が入ってきました。
端のグループから目の前のお皿においしそうなおもちが配られていきます。子供たちは、目を輝かせながらおとなしく座って、自分のところまで来るのを待っています。
「それでは、いただきましょう。いただきます」との先生の声。
全員で「いただきます」と合唱。
お皿の上には、あんこと大根おろし、それからきなこのそれぞれ一口サイズのおもちが3コのっていました。
つきたてのおもちは、やっぱりおいしいね、と隣の子に話しかけながら、パクパクモグモグいただきました。
しかし、私が早食いなのか、小さいおもちなのですぐになくなってしまいました。
そこで、とてもおいしかったということを表現しようと思い、冗談のつもりで、余計なひとことをいってしまったのです。
「このおもち、おいしいから、100コは食べられるね」
すると、それを聞いて、最後の1コを口に入れようとしていた隣の女の子が、急にお箸を止めました。
そして、しばらく考えてから、私のお皿にその1コをそっと置いてくれたのです。
「あれ、どうしたの? 食べないの?」ときくと、「これ、おじさんにあげる」
というのです。
「え?どうして?もうお腹いっぱいなの?」ときくと、コックリとうなずいて「おじさん、お腹が空いていて足りないのでしょう? それ食べていいよ」というのです。
「ありがとう。でも、もういいんだよ。おじさんも本当はお腹がいっぱいなんだ」と慌てて説明しました。女の子は、安心したようにニコッと笑いながら自分の口の中へおもちを入れました。
 
「もっと食べる人は、まだ少しありますよ」と声がかかりました。
すると、隣の女の子と私とふたりが同時に大きな声をあげて「はーい」と手を高くあげました。そして、おかわりのおもちを2コずつお皿にのせてもらいました。
ふたりは顔を見合わせ、込み上げてくるおかしさをお互い抑えながら、2コのおもちを平らげました。
 
その後のお遊戯の時も、どこにいるのかをお互いが探しながら、時々目が合うとなぜかおかしさがこみあげてくるのです。
そして、ふたりで笑いをこらえながら、楽しいひとときを過ごすことができました。
 
帰宅してから子供にきくと、その女の子にはお父さんがいなく、お母さんは仕事で当日参加できなかったのだそうです。
 
偶然出会った天使のような女の子。
今のままの明るくて心やさしいひとに育っていってほしいと心から祈っています。

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どんぐりころころ

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インフルエンザの予防接種のため、近くの病院に行った時のことです。
 
その病院は、院長先生がやさしくて親切なので人気があり、普段から患者があふれるほど混んでいます。
その日もたくさんの患者が、診察の順番を待っていました。
 
そこに、男の赤ちゃんを抱いたお母さんが入ってきました。
受付をすませ、待合室の椅子に座っていましたが、しばらくすると赤ちゃんがぐずりはじめました。
お母さんは一生懸命に赤ちゃんをあやしているのですが、とうとう手足をばたつかせて泣き出してしまいました。お母さんは立ち上がってだっこをし、なんとかなだめようとしているのですが、どうしても泣き止みません。
まわりの雰囲気は、長時間待たされいらいらしているところに、赤ちゃんの泣き声が加わり、暗く沈んだようになりました。
 
すると、幼稚園生らしい女の子が、その赤ちゃんの方に近寄ってきました。
そして、手に持っていた小さなウサギのぬいぐるみを右左に揺らしながら、赤ちゃんに見せようとしています。
お母さんは女の子ににこっと微笑んで、赤ちゃんがぬいぐるみを見えるようにまた椅子に座りました。
「ほら、ウサギさんがいたよ。おねえちゃんが見せてくれるって」
女の子は、さらに大きくぬいぐるみを振りました。
それから、その振りに合わせて、どんぐりころころの歌を歌い始めたのです。
赤ちゃんは、一瞬で泣くことを忘れ、びっくりしたように目をまん丸にして、ぬいぐるみと女の子を見つめています。
そして、歌に合わせて動くウサギのぬいぐるみを見ながら、いつしか笑顔になってしまいました。
「赤ちゃん、わらったよ。よかったね。これ、赤ちゃんにあげる」と女の子が、お母さんにぬいぐるみを渡しました。
お母さんは慌てて「どうもありがとう。でも、このウサギさん、おねえちゃんの大切なお友達でしょう」といって、固辞しました。
すると、遠くから見守っていた女の子の母親が寄ってきて、「だいじょうぶですよ。よかったら、もらってあげてください」と女の子の顔を見て確認しました。
女の子は、笑顔で大きくうなずきました。
赤ちゃんのおかあさんは、込み上げてくる熱いものを抑えるため顔をくしゃくしゃにしながら、何度も感謝の気持ちを伝えていました。
 
女の子と母親が元の席に戻る時には、まわりの患者全員が笑顔になり、女の子に声をかけて、そのやさしさや歌がうまいことを褒めたたえました。

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近くのスーパーで買い物をした後、車で家に向かっていた時のことです。
 
交差点で信号待ちをしていると、下校時間なのでしょう、何人かの小学生グループが交差点をわたろうとしていました。
その子供たちと一緒に、杖をつきながらおばあさんもわたろうとしていました。

ところが、子供たちもおばあさんもまだ交差点の中ほどまでしかいかないうちに、歩行者用の信号が点滅しはじめてしまったのです。
子供たちは、速足で交差点を通過し、あんぜんな歩道へとわたり着きました。
しかし、一緒にわたっていたおばあさんは、歩くのが遅いため、気は急いでいるようなのですが、思うように足が進まない様子なのです。
慌ててころばなければよいが、と思っていると、先にわたり終えた子供たちの中から、一番背の高い3,4年生らしい男の子が交差点に引き返してきました。
そして、おばあさんの横にぴったりと寄り添い、こちらを見て確認しながら、手を挙げておばあさんをエスコートしました。
おばあさんは、その男の子に軽く会釈をしながら足を急がせ、無事交差点をわたりきることができました。
そして、男の子の手をとって感謝しています。
男の子は、少しはずかしがりながら、微笑みました。
それから、男の子は、こちらを見て黄色の帽子をちょっとあげ、イガグリ頭を軽くさげました。
そして、待っていたほかの子供たちのところにもどり、なにもなかったかのように楽しそうに話しながら帰っていきました。
 
イガグリ君、エスコート姿、立派だったよ。
やさしい君に福の風をプレゼント!

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毎日近くの公園へ散歩にいきます。
その日もいつものように公園へいって散策していると、中学生くらいの女の子が子犬をつれて散歩にきていました。
夕方の同じ時間帯にいつも散歩をしているので、よく見かける女の子です。
つれている犬はナナちゃんという名前のかわいいメスの小型犬です。

公園の片隅にベンチがあり、そのベンチにはおじいさんとその娘さんらしい女性が休憩していました。
そのおじいさんも散歩をしていたらしく、横に手押し車がおいてあります。
女の子がナナちゃんとそのベンチ近くまで歩いていくと、突然おじいさんが、ナナちゃんに向かって「ポチ、ポチ」と呼びかけました。
「ポチ、こんなところにいたのか、だめじゃないか、心配したんだぞ」と話しかけながらナナちゃんに近づき、しきりにほおずりを始めました。
女の子もナナちゃんもキョトンとして、しばらくどうしてよいのかわからず、なされるがままの状態でした。
そして、やっと小さな声で「この子はナナちゃんです」と、女の子がつぶやきました。

すると、隣にいた娘さんが「おじいちゃん、そのこはポチじゃないのよ。ナナちゃんっていうんだって。ポチはもう死んでいないでしょ」と、おじいさんの肩に手をかけてやさしく諭しました。
おじいさんはびっくりした様子で、ナナちゃんを確かめるようにしばらくみつめていました。
そして「そうか、ポチじゃないのか」と、もう一度確認するように娘さんを見てから、目にうっすらと涙を浮かべながら、さみしそうな手つきでナナちゃんをなぜました。
娘さんは、女の子に「ごめんね。ポチに似ていたので、おじいちゃん、まちがっちゃったみたい」とあやまりました。
女の子は、にこっと微笑み、だいじょうぶですといって、また散歩を始めました。
 
次の日になり、同じ時間帯に公園へ行くと、昨日の女の子とナナちゃんも散歩にきていました。
そして、おじいさんも娘さんと一緒にベンチに座っていました。
女の子がベンチに近づくと、昨日とまったく同じようにおじいさんがナナちゃんをポチ、ポチと呼んでいます。おじいさんは、昨日のことをまったく忘れてしまっている様子です。
ところが、女の子は一瞬困った様子をしていましたが、ニコニコ笑顔でナナちゃんを「ポチですよ」といって、おじいさんのそばにつれて行きました。
すると、おじいさんは、ナナちゃんにポチとしきりに声をかけながら、うれしそうな顔で頭や背中を愛おしそうになぜ回しました。
しばらくして、娘さんがおじいさんに「ポチも今から散歩に行くから、おじいちゃんもがんばって行ってこようね」と立ち上がらせ、手押し車に手をかけさせました。
おじいさんは、満足そうな笑顔でナナちゃんに手を振り、ゆっくりと散歩を始めました。
娘さんが、女の子に、軽く会釈をしながらありがとうと小声でささやきました。
女の子は、笑顔でうなずきました。
そして、またナナちゃんと散歩にもどりました。
女の子は、ナナちゃんをしきりになでながら、「ナナちゃん、ありがとう、おりこうだったね、またおじいちゃんの前ではポチになってあげてね」とほめてあげていました。
 
そして、次の日、今日はどうなるのかと心にかけながら、同じ時間帯に公園へ行ってみました。
女の子とナナちゃんはいつもの通り公園で散歩をしていました。
しかし、おじいさんと娘さんの姿はありません。
次の日も同じでした。
娘さんが、気をつかって散歩の時間帯をずらしたのかもしれません。

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ツッパリ君のやさしさ

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満員電車の中での出来事
 
以前ほどではなくなったが、通勤時間帯の混雑ぶりは、未だにまさに殺人的。
もうこれ以上乗車するのは無理という状態でも、後ろからぎゅうぎゅう押し込まれる。
自分の腕や足でさえしっかりとガードしておかないと、どこかに持っていかれそうになる。
 
そんなすし詰め以上の状態の電車の中に、黒の喪服を着た80代くらいのお年寄りが押されながら乗ってきた。
そして、ドア近くの壁際に押され着いた。
しかし、後ろから押してくる客とその壁に挟まれ、かなり苦しそうな顔をしている。
電車が走り出すと、揺れに合わせて乗客が揺れ、それに押されてお年寄りも、顔も身体もぺしゃんこになりそうなほど壁に押し付けられる。
お年寄りはつぶされまいと、まわりの壁に腕を張って、必死で身を守ろうとしている。
しかし、特に電車が減速して後ろから大勢の客たちの重みがかかると、歯を食いしばってがんばろうとしても、とても押し返すことはできない。
なんとかしてあげたいとは思ったものの、こちらの方も身動きができず、近づくことはとてもできない状態だった。
 
骨が折れてしまうのではないかと心配しながら垣間見ていると、隣の客が自分の両腕をなんとか上に引き上げて、お年寄りをかばうように壁に腕を突っ張った。
その客は、20代くらいのがっしりとした体格の青年で、頭はスキンヘッドでソリが入っている。
身体全体に力を込めて押し戻し、少しでもお年寄りが押されてくるのを抑えてやろうとがんばっている。
お年寄りは、急に楽になったので、あれっという顔をして後ろを振り返った。
すると、その青年が一生懸命に腕を張って、守ってくれていることに気が付いた。
お年寄りはその青年に後ろ向の背を向けたままの姿勢で、すみません、すみませんと頭を下げて感謝している様子。
 
そんな状態が15分ほど続いた。
そして、大きな乗換駅に電車が止まり、大勢のお客が堰を切ったように降りて行く。
お年寄りはまだ先まで乗っていくようなのだが、青年はここで降りる様子だ。
青年がお年寄りに一言何か声をかけて、降りて行った。
お年寄りは青年に何度も何度も頭を下げお礼をいっている。
青年は、電車から離れていきながら振り返って軽く手をあげ、にこっと笑顔をつくって人ごみの中に消えていった。
振り返った青年の顔や頭には、水をかぶったような大粒の汗が流れていた。
 
ツッパリ君、なかなかやるなぁ。ソリを入れなくても、十分にカッコイイよ!
こみあげてくる熱いものを抑えながら、心の中でつぶやいた。

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