コーチの森

「負けない自分づくり」を応援するコーチのブログです。

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2006年2月24日

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もっと騒げ!もっと騒げ!!

逆境に立たされた時に人の真価が問われるとよく言われます。
コーチングでも、クライアントが回りの厳しい環境や、回りが見えなくなってしまった時に、希望を見出す気づきや考え方になるようにお手伝いすることは重要な務めです。
人はそれを自分自身の行動で切り抜けて初めてまた新たな目標に向って頑張ろうとする。

そうした意味で私が、よくぞこんな逆境を切り抜けられたものだと感心し、印象深く、今でも尊敬の念すら持って記憶している人物が居ます。

それは、元阪急ブレーブスの足立光宏投手です。
彼は下手投げのピッチャーで、同じ阪急ブレーブスの大エースで下手投げだった山田投手の先輩にあたる選手です。
山田投手が大投手になるきっかけになった「シンカー」と言われる下手投げ独特の落ちるボールを教え、水島新司の野球漫画「ドカベン」の里中投手のモデルとなるほどの無駄な動きのないきれいな下手投げのフォームの持ち主でした。

そんな彼が一番輝いたのは、1976年の日本シリーズ 阪急vs巨人の第7戦です。
この年まで阪急ブレーブスは、ON率いるV9の巨人に5度挑戦し、5回とも敗れ去った屈辱を味わっていました。
5度も敗れながらも足立投手としては、阪急では唯一、巨人から5勝もあげた勝負強い投手でした。

この年は長嶋監督初の日本シリーズ。
あれよあれよと阪急ブレーブスが3連勝し、早々と念願の打倒巨人を達成するかに見えました。
しかし、そこからまさかの3連敗。特に第6戦は、5回を終って、7−0とリードしながら延長戦での逆転負け。
投手もエースの山田、山口を使い果たし、もう足立投手しか残されていない絶体絶命の大ピンチの中で最終戦を迎えることになったのです。

舞台は敵地、後楽園球場。
観衆の5万人は99%巨人ファン。
国民の9割のテレビ視聴者が巨人を応援してたとするならば、彼は5万人+9千万人の人を敵に回しながらマウンドに立ったと言えるのではないか。
そう感じるまでに冷静ではいられないほどの雰囲気がスタジアムにあったということです。

1球ごとに巨人を応援する歓声や罵声が飛び交います。
そして3回、思わぬアクシデントに見舞われます。
巨人の打者淡口選手の内野ゴロのカバーに1塁に入った足立投手は、淡口選手にスパイクされます。

動けない。
明らかに深い傷を負っている。
心配するナインをよそに、ベンチ奥に治療に向う足立投手。
肩越しに投げ置かれたマウンド上のグローブが、彼の続投への強い意志を物語っていました。
何針かを縫い、痛み止めを打っての再登板。
スパイクには血が見えていました。

そして何の因縁か、最大のピンチが6回、また打者・淡口選手のところでやってきます。
その前の打者で打ち取ったと思った内野ゴロをファーストが本塁へ悪送球、巨人が逆転。
そしてバッターは王貞治。その勝負を避けて敬遠し1アウト満塁と自ら退路を絶っての大勝負です。

後楽園球場はもうTVの実況が聞こえないほどのどよめきと歓声。
「そも阪急何者ぞ!!」と書かれた大きな旗が振られ、耳をつんザく大音声は明らかに足立投手にプレッシャーをかけている。

そのとき、足立投手はマウンドで1人自分に確かめるように言葉をつぶやいている。

もっと騒げ!もっと騒げ!!たかが野球じゃないか!


→観衆がもっと騒ぐことで、打者自身にプレッシャーがかかり、自分の方が有利になる。だからもっと騒げ!!
→たかが野球・・・大丈夫!自分は冷静なのだ。

そして打つ気にはやる淡口選手を見透かしたように、やや外角ストライクゾーンからストンと落ちるシンカーをしなやかなフォームから投げ込んだ。
落ちるボールを引っ掛けた淡口選手のボールは、ピッチャーゴロとなり、キャッチャー、ファーストと渡ってダブルプレー。見事ピンチを切り抜けたのでした。

これで流れが変わり、次の回に阪急が逆転2ランホームラン、9回には世界の盗塁王・福本選手が止めのホームランで、足立投手は完投で勝利をもぎ取ったのでした。

巨人ファンには単なる拙い思い出の1つに過ぎないかもしれません。
けど、足掛け10年、5回も敗れ去った屈辱を晴らせた喜びはチームだけでなく、ブレーブスファンの悲願でもあり、私も人目をはばからず号泣したのを覚えています。
もしこの試合負けてたら、ひょっとしたらまた10年巨人には勝てないかもしれない土壇場を切り抜けた感激は私は今も忘れることができません。

その時に思い出されるのが、これほどの究極の逆境の中で耐えた強靭なまでの精神力。

もっと騒げ!もっと騒げ!

窮地に追い込まれてなお、敵の力を味方にしてしまうひたむきさと冷静さ。
(セルフコーチングという言葉が当時あったとするならこれこそがそうではないでしょうか)

私は、足立光宏という投手のあの勇ましい姿を今も思い起こしてしまうのです。
まさしく、勇者(ブレーブス)の中の勇者として、そして逆境に立たされた時の師の1人として私の中に生き続けている気がします。

本日は以上です。

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