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映画『HOME 愛しの座敷わらし』試写会レビュー

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★★★★★
 座敷わらしが登場するからといっても本作はホラーでなく、心暖まるホームドラマでした。東日本震災が起こり、人々の心の絆が叫ばれているとき、「今だからこそホームド。ラマが必要だ」と本作の脚本を読んで主演を快諾したほか、『相棒』組を総動員して企画の実現にも奔走した水谷豊のヒューマンな人柄が溢れている作品でした。
少々ベタなストーリーに、水谷の大げさな演技で予告編だけ見ると退いてしまうかもしれません。でも本編を見ていくうちに、ほのぼのした本作の展開にはそのくらいの大芝居がマッチしていると感じました。何よりもシリアスな方向に持っていくとどうしても杉下右京のキャラと被ってしまいます。その点で、神経質な右京のキャラとは真逆な楽天家で小心な男を演じきったということは、役者として一つのカラを見事に打ち破ることができたと多いに評価したいと思います。
また和泉聖治監督を始め、『相棒』組のサポートで、テイストは異なるものの、音楽と独自の映像美やカット割りで雰囲気は『相棒』を感じさせてくれました。盛岡のイーハトーブの舞台となってた大変ロマンを感じさせる景色を借景に、都会暮らしの中でバラバラになっていた家族の心が一つに繋がっていく姿が感動的に綴られていったのでした。「遠野ふるさと村」に保存されている築200年の古民家はもとより、撮影場所となった岩手県各地の風景にも見ていて心が洗われるようです。

東京から岩手支社に転勤となった高橋晃一(水谷さん)が妻と中学生の娘と小学生の息子、さらに母親を引き連れて引っ越してきたのは、築200年の古民家。盛り下がり気味の家族の空気を、能天気な晃一はなんとか上向きにしようしらじらとした場面が、滑稽でKYな父親像をよく引き出していました。

突然の田舎暮らしで、家族は戸惑いを隠せません。子供たちは、新しい学校に上手く馴染めず、妻の史子は田舎ならではの濃密なご近所づきあいに面喰らってしまいます。史子が広報の配布で近所の担当集落を自転車で廻るとき、泥沼の田んぼに落ちてしまうのです。演技とはいえ、よくやるものだと感心しました。

また通勤で毎朝毎晩一生懸命自転車を漕いでいる姿も印象的。KYながらも何としても家族を守っていくのだという晃一の決意が滲んでいました。

晃一の独断で決めてしまった田舎暮らしに業を煮やした家族は、別居も辞さない構えで、晃一に詰め寄ります。そんな険悪な空気を変えたのが、“座敷わらし”の存在でした
家の中にただならぬ気配を感じさせる“座敷わらし”の悪戯によって、違和感を感じた家族は話し合う機会が倍増。次第にこころを寄せていくことになります。

どうも小地蔵は“座敷わらし”にとても親近感を感じておりました。そしたら“座敷わらし”は、口減らしのため間引かれた赤ん坊の霊が童子の姿をとったものだというでわありませんか。なんだ毎日相手している水子たちの仲間だったんですね。
“座敷わらし”は岩手には今も"出る"旅館があるそうです。そうした悲しい歴史を知り、自分に命があることの尊さに気づいたら、少々つらいことがあっても生きていく勇気が出てくることでしょう。本編に登場する“座敷わらし”も悲惨な過去を微塵を感じさせず、高橋一家に微笑みかけ、一家に幸運をもたらす働きをします。まるでお地蔵さんのそっくりな性格でした。

この家に引っ越すきっかけは、晃一の左遷によるものでした。家族の中で“座敷わらし”を見ることができないほどの無神論者だった晃一でした。しかも職場では上司に対してイエスマンを通してきたのに、ある製品開発を巡って、効率追求ばかりでなく、ある「見えないもの」の大切さを語るシーンは、胸に込み上げるものを感じました。

そんな一家の大黒柱の左遷、本社の上司とのもめごと、妻の不安や更年期障害、娘はいじめに遭い、息子は病気、そして母の認知症の疑いと、どれも深刻な問題だが、それらを座敷わらしという“妖怪”にからめ、ユーモラスにカラリとした雰囲気で描いていくところがいいんですね。 
そんな展開に織り込められたヒューマンな台詞。晃一は妻・史子にときどき「ありがとう」と感謝します。その言葉に妻に対する夫のいたわりが感じられ、見ていて心地よかったです。その史子を演じる安田成美のほんわかとしたコメディエンヌぶりが、本作のシリアスな設定をオブラートに包んでくれました。

さて再度引っ越しになった高橋家。“座敷わらし”ともせっかく親しくなれたのに…。でも、新しい任地に向かう途中で立ち寄ったレストランで、ちょっとしたしたことが起こります。最後のちょっとクスッとなれるオチの仕掛け方にもご注目を。

●Introduction
都会ですれ違いながら暮らしていた家族たちが、田舎の家で座敷わらしと出会い、絆を取り戻していく様子を描いたホームドラマ。原作は2007年に朝日新聞夕刊にて連載されていた荻原浩の「愛しの座敷わらし」。原作を読んだ主演の水谷豊は、その世界観に魅了され、映画化に向けて動き出したという。慣れない土地、不便な家に最初は不満だらけだったバラバラな家族が、開放感のある田舎家で、囲炉裏を囲む昔ながらの日常生活を営むうち“家族らしく”なっていく。“ひとつ屋根の下で暮らす”という言葉の意味を実感させてくれる一作だ。美しい自然や子どもたちの自然な笑顔も心に残る。監督はドラマ「相棒」で長年にわたり水谷豊とタッグを組んでいる和泉聖治。

「相棒」シリーズの和泉聖治監督と水谷豊主演による家族の再生物語。東京から岩手の古民家へ引っ越してきた一家が、その家に宿る座敷わらしに導かれ、家族の絆を取り戻していく姿を描く。共演は「最後の忠臣蔵」の安田成美、「映画 怪物くん」の濱田龍臣、「アバター」の橋本愛、「デンデラ」の草笛光子。原作は萩原浩の小説『愛しの座敷わらし』。

父・晃一(水谷豊)の転勤で、東京から岩手の田舎町へと引っ越してきた高橋一家。晃一がよかれと思って選んだ新しい住まいは、なんと築200年を数える古民家だった。東京での暮らしに馴れていた妻の史子(安田成美)は、突然の田舎暮らしに不安と不満でいっぱい。老人ばかりの近所付き合いにも乗り切れないでいた。中学2年の長女・梓美(橋本愛)にも古民家はただのボロ家にしか見えず、転校先の学校生活を考えると心が落ち着かない。転校前の学園生活でも人間関係で悩んでばかりだったからだ。また、同居する晃一の母親・澄代(草笛光子)は田舎住まいには支障を語らないものの、最近、認知症の症状が始まりつつある様子。唯一、古民家への転居を楽しんでいる小学4年の長男・智也(濱田龍臣)は、治りかけている喘息の持病を今も史子にひどく心配され、サッカーをやりたくてもやれずにいる。五者五様、どこかぎくしゃくしている一家をやんわりとまとめたい晃一だったが、家族の不平不満をなかなかうまく解消することはできず、異動先の支社でも馴れない営業職に悪戦苦闘の毎日だった。そんなある日、不思議な出来事が高橋家に起こり始める。誰もいない場所で物音が聞こえたかと思えば、囲炉裏の自在鉤が勝手に動いたり、掃除機のコンセントがふいに抜けたり、手鏡に見知らぬ着物姿の子どもが映ったり……。どうやらこの家には東北地方の民間伝承で有名な“座敷わらし”が住んでいるようなのだ。一風変わった同居人と共同生活をすることになった高橋家の運命は……。
[2012年4月28日公開]

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