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経済

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パラシュートも外れた不動産市況

パラシュートも外れた不動産市況

2008年11月26日 日経ビジネスオンライン さくら事務所取締役会長 長嶋 修氏

 不動産市場は長期の下落トレンドに突入した。下げ止まりの時期や下値などまったく見えない、長い長いトンネルに突入したのだ。

 バブルを警戒する金融庁による、2007年からの不動産市場への融資規制、そこへさらにサブプライム問題が一気に押し寄せたため、雪崩を打って市況が崩壊している最中である。そして、これから加速度を増すであろう実態経済の悪化をも大きくかぶることになるだろう。

 11月にはいくつかの機関から、不動産に関する指標が公表されている。まずはこれらを順に見ていこう。

 国土交通省の「土地投資動向調査」は、上場企業や資本金10億円以上の非上場企業を対象として、半期ごとに調査を行っているものだ。11月21日発表した同調査(平成20年9月調査)によると、現在の土地取引の状況について、「活発」との回答が

  東京2.7%(前回20.1%)、大阪1.5%(同11.9%)、その他地域1.4%(同11.2%)

となり、前回調査(3月)より大幅に減少。一方で「不活発である」は、

  東京58.7%(前回16.7%)、大阪67.6%(同21.9%)、その他地域56.8%(同26.6%)

で、大幅に増加している。「1年後の土地取引状況」についても、「不活発」との回答が「活発」を大きく上回っている。

 同じく国土交通省が発表した「主要都市の高度利用地地価動向報告 ― 地価LOOKレポート ― 」は、地域の不動産鑑定士による主要都市の高度利用地における四半期地価動向の報告を集約したものだが、地価の下落傾向を鮮明にする結果になっている。平成20年第3四半期(7月1日から10月1日)の主要都市の高度利用地の地価は、ついに上昇地区がゼロとなり、すべての地区で横ばい、または下落となった。三大都市圏では、ほとんどの地区で下落となり、大阪圏および名古屋圏では、大半の地区で3%以上の下落だ。地方圏では、横ばいの地区と下落の地区がほぼ同数、福岡、仙台では全地区で下落という結果になっている。

 財団法人日本不動産研究所が公表した「不動産投資家調査」というものがある。年金基金、生命保険、不動産賃貸、投資銀行、商業銀行・レンダー、開発業、アセットマネジャー、格付機関など204社を対象とし、114社から回答を得ているものだ。これによると、「投資対象不動産の利回り」は、ほとんどの用途・地域で上昇傾向になっていることが分かった。つまり「価格が下落した」ということだ。投資家の「不動産への新規投資意欲」は64%(前回80%、前々回90%超)に下落している。

◇ リーマン破綻後はさらなる下落に

 同研究所の「全国賃料統計」もある。この統計は、不動産鑑定士などが全国主要都市のオフィス76ポイント、共同住宅158ポイントに設定したモデル建物の新規賃料を鑑定評価し、市場規模のウエートを付けて指数化したもの。この統計によれば、全国平均のオフィス賃料は、前回の6.5%上昇から今回は2.5%下落となり、下落に転じた。東京区部が5.4%下落、仙台市が7.7%下落と1年後は下落傾向が拡大して2.7%下落になる見通し。共同住宅賃料は、全国平均が0.2%下落(前年は0.5%上昇)で、同様に下落転換。1年後は下落傾向が拡大して0.5%下落の見通しとしている。

 注意しておきたいのは、これらはすべて9月15日の「リーマンショック」前のデータ、あるいは、その影響が加味されていない数字であるということだ。リーマン破綻の前と後では、不動産市況はまったく違うものになってしまった。パラシュート付きで落下していたところ、そのパラシュートが外れてしまい、一段の加速度をつけて落ちている、というのが不動産市場の現状である。08年下半期は間違いなく、さらなる大幅下落が鮮明になるだろうし、09年以降数年間はこのトレンドが続くだろう。

 言うまでもなく不動産市場は、世界経済や国内景気、政策との連動性が非常に高い。よって今後の不動産市場を決めるのは、外交や財政・金融政策、年金や社会保障をはじめとする国のあり方、つまり政治にかかっている。このところの政治の迷走ぶりは、不動産業界のプレイヤーをいらつかせており、自民党でも民主党でも、誰でもいいからとにかく何とかしてくれというのが本音だ。

 ただし短期的に、不動産市場の下落を止める処方箋はないと、業界人は分かってもいる。根本的にすべての構造が変わらなければどうしようもないのだということを理解している。欲しいものを借金で買う米国人。そしてその債権を複雑な証券にして売る米国金融。限りなくバブル的でありカジノ的であるが、その上に日本や世界の経済は乗っていた。不動産市場がしぼむのは当然だ。

 いずれにせよこの教訓を日本において、今後どう生かすのかということが大切だ。商業不動産と住宅とに分けて、ビジョン構築から始めねばなるまい。とりわけ住宅政策は、これまであまりにもないがしろにされてきただけに改善の余地が大きく、政策効果も高い。

◇ 適切な住宅政策を掲げる政党がいない

 それにしてもこれまで日本国民はよく怒らなかったものだ。海外との競争をまったくしてこなかったコスト高な住宅、そのくせ政策のゆえに25年程度で価値が限りなくゼロになる住宅を「資産」だと信じ込まされて買わされてきたにもかかわらずだ。資産だと思っていた住宅は、実はただの「耐久消費財」であった。さらに、地価が異常に高いために狭い住宅に押し込められてきたのに、大きな声が上がることなく、具体的な手も打たれてこなかったのは謎である。

 こういった「パンドラの箱」がこれから自動的にどんどん開いていき、ハウスメーカーやマンションデベロッパーの大淘汰が始まり、中古住宅市場・リフォーム市場が拡大。放っておいても新築中心から中古住宅中心へと市場は軸足を大きく移すことにる。住宅価格は大幅に下がり、価値が落ちにくい市場ができていく。

 ここで、低所得でも安心して安定した暮らしを営むことができる基盤としての住宅政策を適切に行うことで、そのスピードと完成度がより高まるようにしていただきたい。

 とはいえ現在、各政党のマニフェスト(政策綱領)をみても、どの政党も、住宅の問題について、根本的に理解された上での公約にはなっておらず、わたしは各党の政権公約について非常に不満を持っている。住宅政策が、安定した内需も、国民の資産保全も可能にし、ひいては年金・社会保障問題などの不安を取り除く基盤となることすらできるのに、そこに、適切な形で触れている「マニフェスト(政権公約)」が、見当たらないのだ。

 住宅政策、とりわけ国民が所有する「中古住宅」を取り巻く政策全般を整備することで、国民の生活はもちろん、国のあり方も大きく変わることができる。詳細は過去のコラムをご覧いただきたいが、住宅を国民の資産ととらえ、価値が落ちない仕組みづくりを唱える政党を、わたしは応援したい。

 わたしは決して新築住宅を否定しているのではない。だがやはりハウスメーカーやマンションデベロッパーの数は多すぎる。今の半分くらいでいい。それに何しろ、新築住宅を供給する企業の「ブランド価値」とは、中古住宅市場で評価されてこそだろう。新築のときだけ価値があるかのような売り方をして、実は耐久消費財でした、では、自己矛盾ではないか。

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