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著者:リチャード・フォーティ著/渡辺 政隆訳
本体価格: \2,400
出版:草思社
サイズ:四六判 / 493p
ISBN:4-7942-1189-9
発行年月:2003.3.10(9刷 2003.5.28)
●本の厚さが苦にならない、良質の科学エッセー
「原始スープ」から生命が誕生し、ヒトに至るまでの、壮大な生命の伝記である。著者は、大英自然史博物館主席研究員で、元英国古生物学会会長。全編を貫く独自の新説の展開などはないが、30億年前の先カンブリア時代のストロマトライトに始まり(もちろん、それ以前の生命の誕生のメカニズムから解き明かしてくれるのだが)、人類の誕生までの地球の歴史を、主要な学説を紹介しながら概観させてくれる。
しかし、著者によれば、「私が語るのは不完全な物語である」。「なぜなら(本書は)歴史の中間部分だけで、その前後が欠落しているから」である。地球以前の宇宙の初期の歴史は「天文学者や理論物理学者の領域」であり、人類誕生後、有史時代になると「考古学者や歴史学者にバトンを渡すことになる」からだ。
日本語版480頁にもおよぶ大作を称して「不完全な物語」とするところに、かえって、本書に対する著者の意気込みが感じられる。十分に濃い内容で、読みごたえのある一冊だ。
しかし、「生物学の教科書」あるいは「学術書」として肩肘張って読む必要はない。生命の歴史に関する長文のエッセーとして、気軽に(!)読み始めればよい。きっと、著者の該博な知識は、心地よく知的好奇心を刺激してくれるだろう。古生物学という学問の成果および研究者にまつわるエピソードは、文学的な修飾を施され、黴臭くはあるが人間的な古生物学という世界への逍遥を堪能させてくれる。
タイトルが示すとおり、著者の意図するところは、年代順に生物の進化の歴史をたどることである。しかし、書かれた内容を通史として頭の中に入れることにこだわらず、良質な科学エッセーとして楽しんでもらいたい。古生物学について知識を得るというより、著者の語り口を楽しむことに快感がある。
<抄細>
・ストロマトライト……先カンブリア時代の光合成細菌の化石。
・バージェス動物群……カナダのブリティッシュ・コロンビア州で発掘されたバージェス頁岩中に見つかった動物群。カンブリア紀の化石で、現存しない生物を多く含む。
・カンブリア紀の「爆発的」進化……〔生態学的関係に競争が導入され、動物たちは互いに競いあう活気あふれる生活を送るようになり、適応度を高めていった。〕(p150)
・コノドント……脊椎動物の仲間。体の一部(歯?)しか発見されず、長い間、謎の生物であった。〔コノドントの発見により、われわれが属する動物門(脊索動物)の起源は、その他すべての動物門ともどもカンブリア紀までさかのぼるらしいということになった。〕(p177)
・K・T境界……白亜紀(Cretaceous)と第三紀(Tertiary)との境界のこと。白亜紀末の大量絶滅を指して、K・T事件と呼ぶ。恐竜の終焉。
・哺乳類の繁栄……〔哺乳類は、名家の遠い親戚のように、広大な領地の隅に寄寓しながら、当主が世代交代に失敗して自分の出番がまわってくるのを待たなければならなかった。〕(p389)
・適応放散……哺乳類は、「空っぽ」の生態的空間をうめるかたちで多様化をとげた。
(03/7/19)【蔵】
<この本の詳細>
http://www.bk1.co.jp/product/2293213/p-gotoy52446
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