|
中仙道・醒ヶ井宿の道端の西洋苧環(おだまき)
苧環や木曽路は水の音の中 蟇目 良雨(ひきめりょうう)
十分に爺(じじい)になってヒコニャンと彦根の城で遊んできたよ
子の怪我は足首靭帯損傷の右か左か聞くのを忘る
真夜中をギター弾く子よ世の中の不眠の者に迷惑至極
夜のテレビ総理が出てきて国民に直(じか)にうったう消費増税
相撲とは不健康なるスポーツの伝統だからと太っていいか
わが履歴最終項目未記入の行き着くところいつの頃やら
鮒寿司を詠って蕪村つつがなし彦根の空を流れる雲に
今週はああしてこうして過ごさんと思えど命仕舞うか知れず
頭(ず)の中は歌文集に占められて入る余地なし恋のことなど
飛ぶように月日は過ぎて早末の二日となりぬ皆既食あり
仏教は人の営みそのものと告げしは誰か答えは道元
留守番を頼むと人語にて告げる犬は分かったような顔して
単純に生きようなんて思うなかれ彦根の城の雲を見に行く
家の奥にちろろと点る灯火に祈る人こそ日本人なれ
侍を一人も見かけぬ城に来て流れる雲は安政の雲
花三輪咲かせてテッセン江戸時代流行し頃のど真ん中に居る
掃除機をかけているとき金沢のどこかで誰かもかけているなり
幾たびか電話かけども誰も出ず大和に何か異変起きたか
三日過ぎ彦根の思い出引きずってあの時見た顔思い出してる
山下さん伊賀の上野の語り部の語る相手の居なく嘆けり
だんじりは城の天守に似ているがそんな気がする彦根の城は
円卓に恥をこらえて隠れなき身の置所なく強張らせおり
醒ヶ井の源近く畔(くろ)に咲く薄紫の苧環の花
三日前彦根の宿に降り立って城を流れる雲を見ていた
醒ヶ井の駅前食堂近江米旨かったのでお代わりをした
六月に運動会の小学校耐震工事が秋にあるので
人々は何を思って石段(いしきだ)を天守へ向かう登りがたきに
春遅く鋼(はがね)のごとき棒の声鶯叫ぶ今を限りと
ふらふらと五月連休街に出て流れる雲に流されており
(2012年5月25日和歌山朝日歌壇入選)
|