***Mad as a March hare***

問わず語りに、ぼちぼちと・・・

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疑惑の萌芽 その18

 
「このままでよろしいのですか」
 
ユーシスの問いかけにフレッドが笑った。
フィデリオの謹慎期間中と限定して、シアランの近衛騎士団にいたのだ。
少しばかり派手に動いたが、ミシェルを女と疑うような者はもうここにはいないはずだ。
フィデリオが何か言いだすとは思えないが、少なくとも彼の意見に耳を傾けるものはいないだろう。
 
当事者が現れたのなら、もう近衛騎士団に用はない。
これからフレッドがどう動くのか、ユーシスが気にかけるのも無理からぬ話だった。
ユーシスだけに見えるところで不敵な笑いを浮かべると、フレッドが小声でつぶやいた。
 
「心配しなくても僕は動くよ、今度はあっちだ」
 
不思議そうにこちらを見ているランドルフらに笑ってみせると
フレッドは第五師団長に呼ばれているからとテオバルトらを連れてその場を離れた。
途中、フィデリオとのやりとりをジャックへ報告するようテオバルトに命じ、
自分はミレーユの館にいる妹の元へ急ぐのだった。
 
・・・・
 
「フィデリオ様は、男の子がお好きなんですってね。」
 
罪のない笑顔であどけなく問いかける姫の言葉に、フィデリオの顔は引き攣った。
 
久しぶりに彼女に会ったからか、
美しい薔薇色のドレスに身を包んだミレーユ姫は、フィデリオの目には妖艶な美少女に映っていた。
これまでフィデリオの見てきた姫は、稚い脆さを感じさせるところがあった。
下町で育ったと聞いていたので、貴族の世界で生きることになった彼女の危うさを気にしていたのかもしれない。
それが今では所作も見事にこなしている立派な貴族の令嬢だ。
(淑女の作法とやらは、ここに来てから学んでいると聞いたけど・・・)
相当、頑張ったのだろう、エセルのために・・・
そう思うだけで、フィデリオの胸がちりりと痛んだ。
 
ミレーユ姫の発言は、あきらかに深い意味を持たせたものではない。
よくわからないままに口にしたように思える。
それだけに反論しにくいものだがそのまま聞けば限りなく問題発言だ。
お祖母様に変な目で見られて、妻を娶るよう急かされても困る。
まして、目の前の・・このエセルの姫に自分が少年趣味などと思われたくない。
フィデリオは先ほどのミシェルとのこともあって、自分の感情が整理できないままでいた。
 
(ミシェルは本当に男なのか?)
 
この手に触れたミシェルの柔らかさは、絶対に気のせいなどではなかった。
だが、あの場にいた者たちはミシェルと一緒に風呂に入ったとまでいうし・・・
そこまでミシェルと親しくなっている彼らをどこか妬ましく思っている自分にも戸惑う。
そんなことを考えていたので、姫の言葉への反応が遅れてしまったことも災いしてしまった。
 
案の定、目の前の祖母は呆れたようにこちらを見ている。
「ミレーユ。あなた、フィデリオについて何か聞いているの?
確かにこの子は落ち着きのないところがあるし、調子もいいけれど
フィデリオが少年好きだとは、わたくしもさすがに思わなかったわ。」
「やめてくださいよ。お祖母様。それに姫も・・・そんなはずはないでしょう?
どうも、なにか大きな誤解があるようですね。」
「あらっ・・・ごめんなさい。わたしったら・・・
フィデリオ様が、綺麗な男の子を巡って何やら揉めて、その子が怪我をしたとか・・・
そんな噂を耳にしたものですから、勘違いしたのかもしれませんわね。」
 
(可愛いvv)
とんでもない疑いをかけられたというのに・・・
扇で口元を隠しながら優雅に笑んで見せる姫に、思わず身惚れる自分に呆れてしまう。
それでも祖母と姫にこの誤解を解かねばとフィデリオは必死になって言い訳を考え始めた。
まさか目の前のこの“姫”が、“ミシェル”のことを誤解するなど彼は思いもしなかった。
それにもまして、姫がわざわざ祖母に自分の行状を故意にねじ曲げて言いつけている・・などとは
想像すらしていない。
ただ、エセルでなく自分に笑みを向けてくれることに舞い上がって
フィデリオはなんとしても彼女に好印象を与えたいと思い始めていた。
 
「近衛にいる見目のいい少年が怪我をしたのは事実ですし、
私がその場にいて、揉めごとを起こしたと謹慎処分を食らったのも事実です。
でも彼の怪我は偶発的な事故です。
揉めごとと言われたのは、怪我をした彼を運んだせいで周囲の注目を浴びてしまったからだと思います。
騒がせたということなのでしょう。」
「まぁ・・・そうなんですの?」
小首を傾げて、可愛らしく含み笑いをしている姫にじっと見つめられ、
フィデリオの目元がほんのり染まった。
 
「本当ですよ。だからといって、私に少年を愛でる趣味はありません。
いやだなぁ・・・こんなに美しい姫にあらぬ疑いをかけられるなんて・・・ショックだなぁ・・」
フィデリオが軽い調子で笑ってみせると、マージョリーが呆れたようにそこに加わった。
「おや・・では、フィデリオが謹慎処分を受けたというのは事実だったのね。
この一週間、顔を見せないから気になっていたのだけれど・・・
エセルも庇いようもなかったということなわけででしょう?
20歳を過ぎたというのに、相変わらずやんちゃな子だこと。
ミレーユもフィデリオに同情しなくてもいいのよ。」
「まぁ・・・フィデリオ様は“やんちゃ”な方なんですか。」
姫が鷹揚にのんびりとした口調で応えると、フィデリオも演技をするように拗ねてみせる。
 
「やめてくださいよ。お祖母様まで・・・姫の私を見る目が変わってしまいそうです。」
 
ふてくされたように横を向くが、それでもふたりの反応を横目でみている。
“姫”は目を伏せているが、長い睫毛の向こうからフィデリオの様子を観察し
これは“妹”の手に余るヤツだろうと考えていた。
一拍置いて、ゆっくりと口角をあげると、“姫”が優雅に彼に顔を向けた。
 
「でも・・その怪我をした少年はフィデリオ様と仲良しなのでしょう?」
「えっ?」
「だって・・・一緒にいたことで罰を受けられたのですもの。違いますの?」
屈託ない笑顔が眩しくて、フィデリオが目を細めてすがめた。
 
「おや、そうなの?
ミレーユの聞いたという噂を思えば、フィデリオの性癖は困ったモノということになるわねぇ」
「だから・・違いますって。おふたりとも私をお茶うけに楽しんでいらっしゃるでしょう?
お人が悪いなぁ・・・」
「あら?では、特別に仲良しというわけではないのですか?
残念だわ。フィデリオ様にその少年を紹介してもらおうかと思ったのに・・・」
「えっ?」
「わたしと同じくらいの年なのでしょう?
もしかしたらお友達になれるかもしれないと思ったのですが・・・
では、殿下にお願いしてみますわね。」
 
(殿下って・・・・ミシェルはエセルのお気に入りだろう?)
 
やはり何も知らないのか。
フィデリオが目を丸くして、無邪気な笑みを浮かべる姫の顔をじっと見た。
そんなことをして姫が傷ついたりはしないだろうか・・・
怪訝な面持ちで、カップを口に運ぶミレーユ姫の顔を見つめていると
後ろから声がかかった。
 
「遅くなりました。お祖母さま。姫もお待たせしました。」
 
第五師団長を護衛に伴った大公殿下が、部屋に通される。
やってきた従弟を振り返るより先に、フィデリオはミレーユ姫の様子を見ていた。
彼女が嬉しそうな笑顔を真っ直ぐ彼に向けている。
それを見ているだけで、また胸がちりりとした。
エセルは、祖母への手土産にと庭で摘んだ花とたくさんの焼き菓子をクライド夫人に渡しているところだった。
ただそれだけのことなのに、妙に妬ましさを覚えている自分にフィデリオはまたしても戸惑っていた。
 
「エセルや。今日はあなたも一緒にお茶ができるのかしら?
それなら、エルも呼んであげればよかったわ。あの子も退屈しているようだから・・・」
「すみません。それほど時間はとれないのですよ。
ですが・・・ミレーユを館に送るくらいはできるかなと思いまして・・・」
「あらあら・・・婚約者との時間を作るために、わたくしのお茶会を利用したのかしら?
フィデリオだけでなく、エセルもちゃっかりしているところがあるのね。」
「フィデリオもですか?」
扇に隠れて微笑む祖母に、大公が可笑しそうに笑みを見せる。
けれどもフィデリオは気まずそうに目をそむけた。
 
「殿下、フィデリオ様にもお願いしたのですが、噂の少年に合わせてくださいませ。
わたしと年も近いのでしたら、いろいろお話を聞けそうですし・・・」
「ああ・・・ミシェルのことですか?かまいませんよ。
ただし私と一緒の時だけというのが条件ですね。その理由はおわかりでしょう?」
「まぁ・・・殿下///」
「ミシェルはヴィレンス将軍の所属でしたよね。」
二人のやりとりに面食らいながら、それでもジャックが無言で頷く。
 
「では、今からミシェルのところへ行ってみましょうか。」
「ええ・・・会ってみたいわ。かまいませんか?太后殿下」
「よろしくてよ。わたくしも婚約している二人を邪魔したなんて思われたくはありませんからね。
仲良く行ってらっしゃい。」
 
祖母の許しを得たエセルに、あっという間に目の前から姫を連れ出され、
フィデリオはなんとなく気落ちしてしまった。
少年趣味との誤解もまだ解けていないままだ。
姫を守りたいと思っているというのに、自分の思いとは別の方にことが進む。
 
(ミシェルを男装少女と思いこむことで、俺は“エセルの姫”への思いを断ち切ろうとしていたのか?)
 
だんだん口数の少なくなる孫息子に、マージョリーは扇の向こうでため息を堪えるのだった。
 
・・・
 
「これでいいのか、フレッド。俺はまだ気になるが・・・」
 
ミレーユの館内のひと目のない場所まで来ると、
リヒャルトは薔薇色のドレスの“姫”に差し出していた手を外した。
 

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こんばんわ(^^♪

男の子がお好き・・・(笑)
知らない誰かが聞いたら誤解しそうな言い方ですね(笑)

フィデリオもミレーユとフレッドを見分けられない時点で見込みはないのに・・・
変な夢とか幻想をいだかれた挙句に好きになられたら厄介ですねー
これでミシェルにちょっかいかけなくなるといいんだけど
じゃないとリヒャルトの心配の種が尽きない(^m^)
本当にいつか禿げちゃいそう(^_-)-☆

2012/1/10(火) 午前 0:33 [ りみあい ]

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☆りみあいさん

こんにちは(#^.^#)

フレッドのはわざとですね(笑)
誤解されたくなかったら、ミシェルに近づくなと案に警告している。
気づくかどうかかは別ですが・・・

ミシェルが好きなのか、ミシェル=ミレーユと気づいているのか
まだ、わかりませんからね。
アンドリューにそそのかされて、ミレーユに惚れてしまいそうだけど・・・

リヒャルト禿げるかも説・・・りみあいさんも好きですね(笑)
まぁ・・・ありえそうだし(笑)

マージョリー様やアリス様が、
ハロルドさんはこんな人って描いてくれればわかるのに・・・(^_^.)

2012/1/10(火) 午後 0:51 [ 三月うさぎ ]

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☆nemunemuさん

こんにちは(*^_^*)

きのうはくしゃみ連発のまま・・・夜中にも目覚めました(p_-)
縄跳びの二重跳びを繰り返して跳んだ気分←なんじゃ、そりゃな感じよ

殿方を軽くかわせるような役はフレッド向きでしょう(笑)
そうした世間ずれ?していないこともミレーユの魅力でしょうからね(笑)
それに反してフィデリオの方は軽くあしらうのが上手なタイプかも・・

ミレーユに本気になったら、あれよあれよという間にどうにかなってしまいそうよ。
それだけに、リヒャルトは近づけたくないでしょう。
本人が気づかないうちに、すでに気に入られていますものね。

避けて通れればいいのですが、アルテマリスまでついてきた彼のこと
です。
新刊ではどう描かれるのか・・・楽しみです(*^。^*)

2012/1/10(火) 午後 0:58 [ 三月うさぎ ]

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開設日: 2010/4/13(火)


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