橋都浩平のCanopy Walk

みなさんこんにちは。イタリアと自転車と美術を愛する中年(老年?)医師です.

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「リーン・イン」

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いま評判になっているシェリル・サンドバーグ著「リーン・イン:女性,仕事,リーダーへの意欲」日本経済新聞出版社を読みました.ご存じの方も多いかと思いますが,著者のサンドバーグさんはFacebookのCOOで,女性ビジネスパーソンとしてキャリアを登り詰めたアメリカのトップの一人であり,この本はアメリカではアマゾン1位の大ベストセラーになっています.僕は読む前には,著者の経歴から,アメリカ人らしい自慢話半分の本だったら嫌だな,同じくアメリカ人らしい“ポジティブに考えて前進すればすべてがうまく行く”的な本だったら,これまた嫌だな,と思っていたのですが,その心配はじつに見事に,良い方向に打ち砕かれました.

僕がよい意味で予想外と感じた点はいくつかありますが,主なものは下記のような点です.1.個人的な体験だけではなく,できるだけ発表されているデータを用いて,自分の主張をバックアップしようとしていること.そのために巻末の原注が50ページありますが,こうした本でこれだけの原注が付くことは珍しいと思います.2.かつての“いわゆるフェミニスト”たちとは一線を画すことを明確にしており,その事を本人も繰り返して述べています.内容的にも彼女たちのように,社会や男性と全面的に対決することを上手に避けています.3.これは2.とも関連しますが,男性を共同戦線に引き入れようという意図が明確で,その意味では男性が読んでも面白いと思われる点,参考になる点が豊富であること,です.

読み終わっていちばんに感じたのは「サンドバーグさんというのは,本当に賢い人だな」ということです.もちろん彼女の頭がよいことは,学歴,職歴を見ても明らかなのですが,それ以上に世の中を生きて行く知恵を持っていることがよく分かります.世の中では,頭の良さと賢さとが共存することが意外と少なく,そのために苦労している人も少なくありません.この本を読んでみると,どうも彼女の賢さは,彼女よりも半世紀前に生きた母方の祖母に由来しているようです.1917年にニューヨークの貧しいユダヤ人家庭に生まれながら,奨学金を得てカリフォルニア大学バークレー校を卒業し,後には企業家としても成功した祖母を,サンドバーグさんは,今も尊敬していることを表明しています.サンドバーグさんのその祖母譲りの賢さが人によっては鼻についたり,嫌らしいと思ったりするかもしれませんが,僕は生きて行くための知恵,賢さは身につけておいて損はないし,持っているのを恥じることでももちろんないと思っています.

彼女のメッセージは明確です.女性が働きやすい環境を作り,女性の社会進出が進むためには,女性自身がトップの位置につく必要があり,しかも彼女たちが孤立せずに共同戦線を張る必要がある.そのためには,遠慮したりためらったりせずに,ともかくまず一歩を踏み出す(リーン・イン)事を思い切って行いなさいという事です.そしてそのために男性も,企業内でそして家庭内で協力してほしいと繰り返し述べられています.この本には,そうした女性の協力者として男性に行ってほしい事柄が記載されているわけですが,それだけではなく,時間の有効な使い方など,男性・女性に関係なく,一個人,一企業人として役に立つ記述も沢山含まれていますので,女性だけではなく,男性にもぜひ読んでもらいたいと思います.

もちろん批判すべき点は沢山あります.僕の目から見ると,男性と女性の間の生物学的な差を軽視している,あるいはあえてあまり触れないようにしているように思われます.しかしこの本の目的からすれば,それを強調しすぎては論点が明確になりませんし,賢いサンドバーグさんの事ですから,それは十分に承知しながら,あえて話題にするのを避けているのかもしれません.それにしても自分を振り返ってみると,それは時代によるのだと言い訳をしたくはなりますが,女性のキャリアアップという事に関しては,理解が足りなかったなと,今さらのように思い知らされました.

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