硯のこと
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◆多分、誰でも想像する硯といえば、 長方形で、三分の一くらいが窪んで墨液が 溜まるようにできているものを思い浮かべるかもしれない。 もちろん、そんな形の硯たちもいろんな人たちに 活用されている。ごくごく一般的な形、長方形の硯。 ◆一番使っている硯はこれ。 羅紋硯といわれる硯。 羅紋硯のなかでも、この丸い硯は、 ほとんど外で描いている私にとって、 とても便利で使い勝手がよい。 この硯は蓋と注ぎ口がついており、 昼、弁当を食べている間、磨った墨が少しでも 乾いてしまわないように蓋をしておけるし、 特に、夏の暑い時期に日光で硯の表面が カラカラに乾くのを防ぐ役割をしてくれる。 それに少し色味の違う墨を磨るときに便利だ。 ◆そして注ぎ口を使えば、 墨を何回も磨って皿などに移すことも可能だし、 描き終わったら、残った墨を別容器に 移すことも容易にできる。 大小そろえておけば、墨の磨り具合で 濃いもの、淡いものに分けたりもできる。 ◆円い縁に囲まれているから、多少の斜面に置いても 墨液が漏れないのも、気に入っている要因だ! ◆そして家で手紙やちょっとした絵を描く時 使うのが、この師匠からいただいた硯。 どんな種類なのか分からないが、とにかく よく下りる。(墨がよく磨れることを、おりるという) やはり、いいものはイイ。 機能がしっかり働いてくれる。 しっかりと色が出るのです。 ◆書道用品店に行けば、とにかくいろいろな種類の硯が 置いてあるので、指で軽く弾いて、音の感じを つかんでください。 硯によって音が全然違うのです。 硯の名前と音の感じをよく照らし合わせて 憶えておくと、骨董屋さんなどで掘り出し物に 出会うこともあるかもしれない。 ただ、骨董屋で硯を選ぶ場合、 すでに使い果たされた硯は、墨が滑って 下りない場合があるのです。 ちょっと前に買ったことがあるのですが、 スルスル滑っていくら磨っても 濃い色にはなりませんでした。 ◆というわけで軽く指で弾くのと同時に 指の腹でザラザラと細かい研石のような感触 を確かめてください。 ◆中国製の硯 羅紋硯、細羅紋硯、宋坑端渓硯、麻子坑端渓硯 坑仔巌端渓硯、老坑端渓硯 ◆日本製の硯 雨畑硯(=雨端硯は雨畑の中でも元祖である雨宮家が 商標として名づけているもの) ◆硯は使い終わったら、残っている墨を 紙にしみ込ませて捨てるか、別の容器に 移し、その後、布などを使って、 水を何度も入れては拭き、入れては拭きを 繰り返していきます。 ◆墨が残ったままになっていると、 硯の研ぎ目である鋒鋩の間に墨の膠分が こびりつき、目が立たなくなって 墨が下りにくくなるのです。 ◆私の場合、外で描き終わると 墨を洗った水を捨てにくいことがあり、 最初に墨を拭きとったまま持ち帰る ことが多いのですが。 (※写真の硯のように墨がこびりついている) 「墨をするなんてめんどくさい!」 ということを時々、耳にする。 この墨を磨るという行為が大変重要なことなんです。 おろそかにしないで欲しい。 墨を磨っていると、気持ちが落ち着いてくる。 そして墨の下りるのをじっくりと磨りながら待つ。 いろいろ考えないで、ただぼんやりと磨るだけでいい。 そうすると、いきなり墨汁から始めるより 格段に集中力が増すのだ。 下敷きの上に紙をおき、白い画面を見つめながら、 ぼんやりと、そしてじっくり、しっかりと 墨を磨っていく行為が、筆の動きを少しでも スムーズに動かすことにつなげてくれる。 |
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