●北京の足音● 北京に住んで、見たまま感じたまま

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小林さゆりさんに、彼女が渾身の力を込めて翻訳した「中国人によって中国人のために書かれた日本および日本人の解説書」をいただいて、これは興味深かったので読破しました。

これが日本人だ! 如此日本人

(作)王志強 (訳)小林さゆり

本の帯に書かれているのは、次の言葉。
読んで首肯するか、立腹するか!
「中国人の対日意識を知るための必読書」
本書は特定の政治的立場を有すナショナリストによって書かれたものではなく、滞日年数も長いごく普通の教養ある知日派中国市民が中国人に向けて書き下ろした日本論である。
著者の王志強氏については、実のところよくわからない。裏表紙にも生まれた年代や、80年代に訪日して日本との関係は20年で、現在は日中経済協力のコンサルタントだという謎めいた経歴。グーグルで検索しても、この本以外は出てきません。

でも...ひょっとしたら僕の会社と関係の深い、あの会社のあの方かもしれない。

さて読後感。まず総論。

日本の文明や歴史から紐解き、よく調べ上げて書かれていて楽しめました。
これはいわゆる文学作品ではなく、よく出来た雑誌の"日本特集号”といった感じです。

つまり、いろんな諸説をしっかり説明して、日本や日本人を説き起こしていますが、いわゆる”著者の視点”や”新たな日本論”の提示は特にありません。
だから「日本人論」ではなく各方面の論点を集約した「日本人解説書」だと言ってよいでしょう。

しかしだからといって、内容が誤解や偏見に満ちたレベルの低いものではありません。本の帯の言葉にあるように、ナショナリズムや特定の立場に立って記述はかなり抑制されて書かれています。
日本における天皇の位置づけに関する記述や、日本人の働き方など、関心する解説も多くありました。

では、ちょっと本文から、気になる表現をピックアップすると...

日本人の並外れた欧米志向は、実際には片思いに過ぎなかった。「脱亜」こそ成功したかにみえたが、「入欧」については結局のところ、人種、文化、伝統、生活、思考様式、いずれをとっても欧米には受け入れられなかった。実際、欧米人からはエコノミック・アニマル、利己主義、奇怪、偏狭、閉鎖的などといわれ、様々な理由から未だに蔑視されている。
ダーシーさんもご自身のブログで書かれているように、これは現代中国人の日本評の典型的な思考回路です。裏を返せば、ここに書かれていることは、中国人が日本人について、こう思いたいというコンプレックスのようなものが凝縮された考え方だと言えます。
しかし幸いというか、今日の中国の崛起によって、いわゆる欧米の人たちからは、日本人が相対的に見直され、受け入れられてきているという事実があり、逆に日本人はこう思われなくなってきたということです。

日本人は物事を学ぶ時に現象だけを知り原理を知ろうとはしない。他国の先進的な技術と文化を利用して改良を加えるだけで、その原理や背景といった根源的なものに興味を持たない。根本的な「何故」を熟慮しないのである。

模倣と学習によって自らを発展させるやり方は、最も容易であり、コストを節約でき、スピーディな方法論であり、日本文化の神髄である。そして、このようなやり方を採用するのは世界史上でも日本という国家と民族以外におそらくないであろう。
これが中国人による日本人論であるとしたら、反論するのには大変骨が折れます。
僕の拙い経験から言えば、この言葉はそっくり現代の中国人に向けてお返ししたいと思います。

確かに日本人の発明はそれほど多くはない。その生産能力や開発の結果、経済の実力と比べると、単なる不釣合い以上のものがある。世界の隅々にまで蔓延る日本の製品であるが、その基本原理や理論、技術が日本人の発明によるものは極めて少ない。
この著書が”特集号”に過ぎないとある意味酷評したのは、こういう箇所が原因かもしれません。これも典型的な"思いたい症候群”に属する中国人の考え方だと思います。
実際、世界の核心理論や技術で日本人の発明によるものは、決して少なくありません。ノーベル賞の受賞者や原理特許の数からもそのことがわかります。

日本人は、自分達をドイツ人と比べるのが好きだ。第二次世界大戦における同じ敗戦国であり、廃墟の中で瞬く間に再興を遂げた国同士である。また戦前の日本はドイツの統治システムおよび教育制度を真似ており、ドイツに対しては今でも強い親近感を抱いているようだ。
う〜ん。誰から教えられたのだろうか。普通の日本人から見ると、ドイツは遠い存在。こんなことはあまり感じませんが。

1998年11月、中国の江○民国家主席が日本を訪問した時、日本の戦争責任について、ただ口頭で謝るだけで共同声明に謝罪を書き込まないという日本側のやり方に不満を示した。天皇主催の宮中晩餐会等、様々な場面で江○民主席は日本の戦争責任について強調し、「前事を忘れず、後事の師とする」と述べて、日本人に正しい歴史認識を促した。それに対して、日本のあるテレビ局のアナウンサーは、ニュース解説で「あれは中華思想的な表現だ」と叱責した。
これも著者が中国のニュースを見て、そう理解してきたことの典型だと思います。僕もあの時、テレビを見て感じたことを思い出す。こういう解釈をして中国人には伝えられていたのかと。僕が映像を通じて見たこと、それは彼の礼を失した頑なな態度であり、これは日本人の反中感情の原点にもなった象徴的な出来事だったのではないかと思い出されます。

日本人は、欧米人が彼等をどう見るかに関心があり、身近で歴史・文化の関係が深い中国人や朝鮮人の日本に対する見方については無関心である、という印象を受ける。
そんなことはないです。日本人は中国人や朝鮮人が日本をどう見てるか、についてはものすごく関心があります。ただこれまで理性的、客観的に書かれたものがあまりに少なかったのです。
そういう意味では、この本は初めてといって良いぐらい、ほぼ理性的に書かれていると思います。

日本には、自らが中国(漢字)文化圏の一員であることを認めたくない人々がいるが、それはどのみち変えられない現実である。日本人は、自らの文明が普遍的な意義のある文明だという証拠を出すことができない。

日本がその自尊心を保ち、自らの文化と民族の優越性を主張する時、まず中国文化が日本文化の発展に影響した事を否定する。
これも不思議な意見です。大多数の日本人は認めているのではないでしょうか。また日本の文明が普遍的な意義のある文明だと証明したい、なんてこともあまり考えたことがないと思いますが。

その歴史を振り返ると、日本には先進的文明はなかった。古来、日本は自然との交流や外からの文化伝来を通じて、世界の中で自立してきた。決して合理的とは言えない手段で天皇が世界最高位であると神格化し、鎖国政策により外来文明の侵入を防ぎ止めた。富国強兵を掲げ、武力による大東亜共栄圏の実現を目指し、アジアひいては世界を征服しようとした。失敗すると今度はカネの王国をつくりあげ、唯一の目標「人から認められ尊敬されたい」という日本人千年の悲願を叶えようとしたのである。
これを読んで、何となく今の中国の願望と重なってみえてくるのは、僕だけでしょうか?
一つだけ言いますと、日本のバブルは決して"カネの王国をつくりあげ”ようとしたのではありません。これは経済発展のひとつの行き着く先なのです。確かに政策の失敗はありましたが、別に国家戦略でも願望でも何でもないのです。
中国も人のことは言ってる場合ではないでしょう。中国経済の近未来が透けて見えます。

経済大国が衰退し、現在日本人には悲壮感や不安、自信喪失が漂っている。心のバランスを失い、焦燥感にかられて第二次世界大戦以来のナショナリズムと保守化の傾向が現れている。そして再び勃興したいと強く願っている。歴史の経験に従えば、四度の変革を引き起こした外部からの強烈な刺激が日本には必要なのだ。
果たして、次なる刺激は何であろうか?
次なる刺激は、これはもう間違いなく、中国という”異型の大国”の崛起です。
日本人には、また強烈なファイトが沸いてくるかもしれません。

繰り返しになりますけど、比較的理性的に書かれています。
大きな発見はありませんが、各方面の論点をまとめた「日本人解説書」として良く書かれていると思います。
もちろん、上に上げたいくつかの点は、賛同できませんが。

この記事に

閉じる コメント(9)

まっこと詳しいブックレビューをありがとうございました! ひろちゃいなさんの「異見&反論」部分を一編にまとめてくださり、とてもわかりやすかったです。このレビューで、本書1冊を読破したような気が……。^^;

著者の「謎めいた経歴」については、原書のプロフィールがそうなっていたからです。もちろん私はもっと詳しい経歴を知っていますが、編集段階で原書のものが採用されたようです。
こんど某大手紙にも取り上げてもらえそうなので、そちらにもご注目くださいネ〜!
それから私めのブログでも“逆紹介”させてください!

改めまして、ありがとうございました!!^^

2009/9/25(金) 午前 3:24 [ sayuしゃおりん ] 返信する

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bihorokato→hirochina:おはようございます!今朝は、北京メディアウオッチに寄り道して、北京の足音で道草しました。「中国人によって中国人のために書かれた日本および日本人の解説書」の総論、見たまま感じたままの率直なご意見に感動しました。同感です。ご健康に留意、もっとがんばれ! 美幌も今が一番、良い季節です。http://twitter.com/bihorokato 削除

2009/9/25(金) 午前 7:40 [ bihorokato ] 返信する

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外国に住んでいると日本人という意識が高まると思えるのですが、実際には日本人ほど自虐意識の強い国民はないと感じます。
日本人の思想的基礎になっているのが儒教と思えるのですが、その思想の発生国である中国人は、役人に限って言わせてもらえば礼節とはほど遠い思想の持ち主のように感じます。
日本人は良いと思う物は西洋東洋に関係なく取り入れると思うのですが、今の中国には見習う何物も無いように思います。

是非、私たちが知らない中国人から見習うようなことを書いてください。

2009/9/25(金) 午後 2:47 ポコペン 返信する

しゃおりんさま
その通り。結構時間がかかりました。
まあ、自分の意見の”記録”でもあるので、ちゃんと書きました。
メディアウォッチでも取り上げていただいて、光栄です。

2009/9/26(土) 午前 2:38 hir**hin*55 返信する

bihorokatoさん
コメントありがとうございます。また時々寄り道をお願いします。
・・・ところで、twitterは中国では見ることができません。

2009/9/26(土) 午前 2:40 hir**hin*55 返信する

とうへんぼくさん
中国人から見習うことも、もちろんたくさんあります。
ただ何かこの20年は、急ぎすぎ、焦りすぎの気がします。

2009/9/26(土) 午前 2:42 hir**hin*55 返信する

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本の内容も、コメントも、中国人のと日本人の考え方を比較として、大変参考になりました。
傑作★ボチです!

2009/9/27(日) 午後 10:32 [ seitaisalonoasis ] 返信する

seitaisalonoasisさん
コメントありがとうございます。
日本を深く理解していると思われる人でも、こういう発想をするかと思うと、ちょっと残念なんです、本音を言えば。

2009/9/28(月) 午前 0:37 hir**hin*55 返信する

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歴史的事実と日本人の本音を知らずに、王氏に中国人のひがみ根性が垣間見えるのみです。残念な気持ちを持ちました。

2013/5/21(火) 午前 10:49 [ - ] 返信する

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