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映画「アメリカを売った男」("Breach")〜ロバート・ハンセンの実話に基づくスパイ事件

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東京地区での上映は終了してしまいましたが、私は最終日の4月上旬に
観にいきました。
クリス・クーパーがKGBに情報を売っていたFBI職員を主演する、事実に基づく映画です。
地味ですが、心理描写などが主体なのでなかなか見ごたえがありました。
原作は"Breach"(違反)。

まず私はこのクリス・クーパーという俳優が大好きです。
一度みたら忘れられないような独特な容貌、そしてカミソリのような視線、
いったい何を考えているのだろうと思わずにはいられない無言の「間」など、
この人が出てくると場面の空気が変わるような気がする。

「アメリカン・ビューティ」「シリアナ」「ボーン・アイデンティティ」などでも
ひときわ印象的な演技でした。
この映画でも信心深い家庭人でありながら、スパイ活動を長年続けた
「アメリカを売った男」という屈折した人物を見事に表現。

実話に基づいているこの映画は、ハンセンが実際に逮捕された際の
ジョン・アシュクロフト司法長官の記者会見での実写コメントから始まります。
("Breach"という単語を聞くことができます)

そして物語はその2ヶ月前にさかのぼって語られます・・・


ハンセンが有罪であることは最初からわかっていますので、その「内偵」を行うために
ハンセンの補佐をするために送り込まれたエリックの心理、そしてその意図を
疑いながら家族づきあいしていゆくハンセンの二人のせめぎ会い、葛藤、そして
エリックが抱く捜査の意義などへの疑問が浮き彫りにされてゆく。

原題の”Breach”というのは「違反」や(情報などの)「漏洩」という意味ですが、
ハンセンは国家への違反の呵責を、家族人、信心深い人間であることによって
釣り合いを取っていたのではないだろうか。

一方のエリックは、国家に忠実であることが、妻に忠実であることと矛盾してゆき、
そこからは彼女へBreachという現象が発生してしまう。

国をとるか、家族をとるのか、というテーマは「グッド・シェパード」でも
描かれていたものと同類のように思えました。

FBIを退職することに決めたエリックが、オフィスを出てエレベーターで
拘束されたハンセンとばったり出くわす。
すっかり悄然としたかつての上司にかける言葉を失っているエリックに、
ハンセンが搾り出すような声で語る最後の場面は、とても印象的でした。

"Pray for me." (私のために祈ってくれ)

"I wil." (そのつもりです)



以下は英語版ウィキペディアで拾った、実際のハンセンのエピソードです。

(ロバート・ハンセン本人〜wikipediaより)
http://farm3.static.flickr.com/2379/2451793072_0dcb7080bf.jpg?v=0

1944年にシカゴで生まれたハンセンは、ノースイースタン大学では歯医者を目指しますが、
途中で進路変更してMBAを取得、会計事務所やシカゴ警察を経て1976年にFBIに入局します。

(ハンセンのスペルはHanssenで、sが二つつきます。スウェーデンなど北欧系の家系なのでしょうか)

ソ連の情報関連データベース構築を担当しましたが、1979年にはすでにソ連のスパイとなっていました。
GRU(ソ連の軍情報部)と接触し、米国内の尾行やソ連のスパイ容疑者リスト、さらには
アメリカに協力しているソ連人スパイの情報などを提供し、総額1億4千万円ほどの報酬を
得たそうです。

映画でも描かれているように、スパイになる上では金以外に大した動機はなかったそうですが、
妻のボニーは1981年に夫がソ連に手紙を書いているのを発見し、教会に告白するようにいったのだとか。

彼の仕事の中には、アメリカに情報提供するソ連のエージェントの真偽を見分けるものもありました。
1985年からはKGBへの情報提供も始めました。

その後もソ連への情報提供を続け、同じくFBIに勤務する親類にも疑義を抱かれながらも捜査は行われませんでした。

1991年から8年間、崩壊したソ連の後継国家であるロシアへのコンタクトはしていませんでしたが、
1999年にSVR(旧KGB)への接触を通じてそれが再開されました。

1998年、CIAの協力者であるブライアン・ケリーという人物がロシアのスパイであるとしてFBIとCIAのスパイ捜査チームが彼を尋問しましたが、ケリーと家族などはすべて否定しました。行き詰まった捜査関係者は、元KGBのエージェントをNYに招き、スパイのデータを彼から買い取ることにします。元エージェントは名前は知らないものの、SVRのファイルとテープを保有しており、テープには「ラモン・ガルシア」というコードネームの人物による肉声が入っているとのことでした。FBIはそれらの資料を700万ドルで買い取りました。

捜査関係者が聞いたテープは1986年に、スパイとKGBの間で交わされた会話でしたが、その声は空きかにブライアン・ケリーではないものの、しかしどこかで聞いたことのある声でした。ある挿話をきっかけに、その声がロバート・ハンセンのものだということが察せられます。

ハンセンがふたたびロシアと接触している動きをつかんだFBIは、彼を重要情報が入手できないような部署に移動させ、アシスタントにエリック・オニールを配します。映画ではここからの部分が描かれています。

ハンセンが2001年2月18日に、ワシントンのフォックスストーン公園で逮捕されたのは映画でも描かれたとおりですが、そのときに「なぜこんなに(逮捕までに)時間がかかったのだ」といいました。

ハンセンは、当局に協力することを引き換えに死刑を逃れ、仮釈放を認めない終身刑に処せられました。
彼の妻と6人の子供たちには、FBIの年金残存分から年間38000ドルが支払われています。
そしてハンセンは現在、コロラドのADXフロレンス刑務所で服役しています。

ハンセンは映画でも描かれているように熱心なカトリック信者でした。司祭には自身のスパイ活動を幾度か「告白」していたそうです。また妻との性交場面を録画する趣味をもっていました。そしてワシントンのストリップクラブのダンサーと懇意になり、香港へ旅行したり、宝石やメルセデスの中古車をプレゼントするなどしましたが、そのストリッパーの証言によると、彼女の誘いにも関わらずハンセンは肉体関係を持たなかったということです。

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初めまして、
つい先ほど「breach」を見た者です。

breachとはそういう2通りの意味が込められていたんですね。
面白い見解ですね!
解説等、楽しく読ませていただきました。 削除

2010/1/11(月) 午前 2:31 [ junko ]

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junkoさん、はじめまして。過去に書いた文章にコメントをくださると「このようなことを書いていたのか」と自ら振り返ることができてうれしいです。ありがとうございます。私も最近、この二か月で50本ほど映画を観たので、そのうちを文章にできればと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。

2010/1/12(火) 午前 7:40 Key

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