ジュニア期のバスケットボール指導

子供達のしあわせなスポーツ経験のために

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今回の書籍紹介は、「”動き”のフィジカルトレーニング」(中村考宏、春秋社)です。

骨盤おこしで有名な中村先生が、独自の構造動作理論による身体運用とトレーニングの理論と実践を体系化したものですが、その切り口は斬新で革新的とさえ言えます。一時はAmazonでも在庫切れになっていましたが、それだけ注目されているのかな?!

一言で言えば、教科書に載っているような静的な解剖学ではなく「動きの中の解剖学」に基づき、人間の骨格構造に適した「骨格ポジション(姿勢・構え)」を取ることにより、身体が動くべきところで動くように、筋肉と関節を正常に動かせようとするものです。四肢の末端で踏ん張ったり力んだりすることなく、末端を軽くして体幹の力を伝え易くするのが動作の鉄則だと述べられています。


代表的な帰結として:
・頭は鼻の下と耳の穴を結んだ線が水平になる位置が適切であり、あごを引いてはいけない
・胸は前上方に出し(肩を引いて胸を張り肩甲骨を寄せるのではない)、腕は力こぶが前を指すようにする
・大腿骨(太もも)はやや外旋させ(その結果つま先は若干開く)、頸骨(すね)は垂直に立てて体重を支える
・骨盤が立った状態(骨盤立位)ないし前傾した状態だと、股関節は(ロックされず)フリーに動くようになる
・骨格で体重を支えることで太い脚は不要になるゆえに、トップアスリートは足首(ふくらはぎ)が細い
・ブレーキ筋である大腿四頭筋・大臀筋ではなくハムストリング・骨盤底筋の働きを重視すべき
・足は母趾球接地ではなくフラット接地にすることで、股関節がスムースに使えるようになる
・腹圧をかけることで体幹がまとまり、重心移動が円滑におこなえるようになる
などがあります。

これらは、立ち姿は自然体で伸びやかで、そこからの動きは速くかつしなやかであるという、優れたジュニア・アスリートにも共通にみられる身体ポジション/スタンス・構えであり、私がミニバスケットボールを指導する際に理想としてイメージしているものです。

あくまで私見ですが、筋肉の使い方やトレーニング法に焦点を当てたという点では、『バスケ筋』(梅原淳、スタジオタッククリエイティブ)の三部作や『インナーマッスルを使った動きづくり革命』(森川靖、あほうせん)の二部作を包含したアプローチと言えますが、「動き=重心移動」と捉え、重心が移動しやすい・自分の身体の重み自体がエネルギーになるポジションをとることを重視している点では、古武術系や二軸理論との共通点の方がより強くみられます。

中村先生の言葉をお借りすれば、「筋肉の時代」から「ポジションの時代」への架け橋になるのが、この本の役目なのだと思います。そして、「からだを重くするのではなく、からだが軽くなるようなものが本当の筋トレ」なのだと。


著者の中村考宏先生が2月初頭の藤浪トレーニングマッチ第二弾に参加されていて、懇親会でこの本に関して色々な話をご本人から伺えたのは大きな収穫でした。

先生は開口一番、意味があいまいなスポーツ・トレーニングではなくフィジカル・トレーニングという言葉を使用した、つまり身体トレーニングに関する本であること、そして「運動=重心移動」(運動=筋肉の動きそのもの、ではない)という視点から動きのトレーニング法を構築したことを強調されました。

トレーナー仲間や競技者からは「文字が多すぎる」と言われるそうで、科学的な根拠に基づき、かつ実践的・実戦的な身体運用法やトレーニング法を求める人のための本だと私も思います。逆に言えば、全体自分にしっくり来る部分だけをつまみ食いする人や、即効性のあるノウハウやコツだけに興味ある人には向いていません。


バスケットボールの場合、動きの基盤であるパワー・ポジションの取り方に関してはすでに定説(らしきもの)があります。また、男子の青山学院大や女子の桜花学園高の強さの理由として、筋肉を増やす中で体重を増やすこと、及びそのためのウェイト・トレーニングや食育の重要性がますます指摘されるようになっています。

そんな風潮の中で、身体運用やトレーニングに関してバスケットボールの指導者がこれらと異なるアプローチを追求しようとすれば、周囲の無理解や懐疑的な反応に遭うこともあるでしょう。実際、中村先生の理論には、スキル指導にフォーカスする梅原先生やインナーマッスルを働かせることによる動作改善が中心の森川先生に比べて、既存のやり方を否定する部分が少なからずあります。

本書の前書きには、「ウェイトトレーニングで身体を固めた人、ストレッチで身体を柔らかくした人、それぞれが問題を抱えている」が、これは「筋肉の収縮に意識が行きすぎたウェイトトレーニング、筋肉の伸張に意識が行きすぎたストレッチ」の弊害であり、「自然な生態の生理反応を考慮したトレーニング」が必要だと書かれています。


物議をかもす可能性があるからこそ、この本には価値があると私は考えており、特に「〜は効果がない」・「〜は有害である」・「〜は誤りである」などと述べられている部分には細心の注意を払うようにしています。

結局、指導者は「このやり方で上手くいっている・結果が出ている」というだけでは足りず、「なぜそのやり方が上手くいくのか・ベストだと考えられるのか」に関して、自分の中にそれなりの回答を持っている必要があると考えます。


(以上)

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