January 26, 2012
アメリカ、カリフォルニア州サンフランシスコとコロンビア西部の県都メデリン(メデジン)が、交通開発政策研究所(ITDP)の2012年度「持続可能な交通賞」を受賞した。起伏が多い両都市は、丘陵地帯の交通システムにケーブルカーやロープウェイを活用している。
サンフランシスコとメデリンは、革新的な交通システムが整備された都市として確固たる地位を得た。国際NPOのITDPは、世界中の都市と連携して温室効果ガスの削減と都市生活の改善に取り組んでおり、特に優秀な都市に「持続可能な交通賞」を毎年授与している。8年目となる今年は、アルゼンチンのブエノスアイレスと南アフリカのケープタウンも最終候補に名を連ねていた。審査員は、ラテンアメリカ大気浄化研究所(Clean Air Institute for Latin America)、ドイツ国際協力公社(GIZ)、世界資源研究所の持続可能な交通センター(EMBARQ:The World Resources Institute Center for Sustainable Transport)の専門家などが担当した。
受賞した2つの都市の景観には多くの共通点があるが、それぞれの交通システムに特徴がある。
1873年からケーブルカーを導入しているサンフランシスコは、車両が“カンカンカン”という音を立てながら市中心部のパウエルストリートを進んでいく。地下のケーブルに引っ張られて、鉄の軌道の上を走る仕組みになっている。主に観光客が利用し、時速はおよそ15キロ。市内の公共交通機関の中では比較的速度が遅く、運賃も高めだ。
メデリンは、ゴンドラ型のロープウェイを2006年から導入している。アブラ渓谷内の市中央部を見下ろすように運行し、貧困地区に住む人々の生活と仕事に欠かせない。電動式でエネルギー効率に優れており、運賃も安く、市内の鉄道システムやバス・ラピッド・トランジット(BRT:専用レーンが整備されたバス)とも連携している。メデリンでは交通機関の世代交代が進んでおり、その一環として整備された。
1月24日に発表された今回の賞について、EMBARQの責任者を務めるホルガー・ダークマン(Holger Dalkmann)氏は、「メデリンは丘陵地の貧困地区に住む人々の交通手段として、ロープウェイを導入した。片道1時間あたりの輸送量(PPHPD)は3000人になる」と話している。
国連のクリーン開発メカニズム(CDM)でまとめられた2006年のレポートによると、空中に架けたロープを引くゴンドラ型のロープウェイが大量輸送機関として導入される例はきわめて稀で、ラテンアメリカでは初の試みだったという。環境面でもメリットは大きい。市内の起伏が激しく幅の狭い道路で「管理が行き届いていない旧型のバス」の運行数が減り、粒子状物質や一酸化炭素、温室効果ガスなどの汚染物質の排出量が減少した。
また、メデリンは、コロンビア国内では初となる自転車の公共貸し出しサービスも開始した。「EnCicla」と呼び、昨年10月から試験的に導入。3カ月間に145台の自転車が大学生に貸し出された。1月には市内の一般居住者にも開放される予定だ。
自転車の利用はサンフランシスコでも奨励されている。同市は2020年を目処に移動手段の20%を自転車に転換する目標を設定しており、2011年には自転車用レーンの拡充を開始した。
しかしITDPによると、サンフランシスコが2011年に取り組んだ交通改革の中で特に効果が高いのは、駐車スペースの整備だという。例えば、時間帯やリアルタイムの利用状況に合わせて駐車料金が変動するシステムを導入。「道路を公園に(Pavement to Parks)」という取り組みの一環として、左右一車線ずつ設けられている駐車スペースを、利用率の低い場合は人々がくつろぐための公共スペース(Parklet=パークレット)に振り替えるプロジェクトも開始した。
「駐車スペースの有効利用は、渋滞緩和や気候変動対策の決め手となり、都市構造に変化をもたらす」とITDPの代表を務めるウォルター・フック氏は述べる。「“持続可能な交通賞”で駐車スペースの有効利用が評価されたのは、今年がはじめてだ」。
自転車の専用レーンや貸し出しサービス、バスの運行システムが、市内の鉄道網とうまく連動している点は、昨年同賞を受賞した中国の広東省広州にも当てはまる。
受賞に値する交通システムを評価する際には「持続可能性」が重視されるが、ITDPのシニア・プログラム・ディレクター、ジェシカ・モリス氏によると、単に環境に配慮しているだけでは不十分だという。同氏は昨年、ナショナルジオグラフィック ニュースに対し次のように語っている。「広東省広州の交通網は環境と経済の両方に配慮したシステムになっており、所得の高低に関係なく、すべての居住者が平等に利用できる。それが受賞の決め手となった」。
Photograph by Kike Calvo, National Geographic