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「映画・『冷たい熱帯魚』は、『埼玉愛犬家殺人事件』?」

「映画・『冷たい熱帯魚』は、『埼玉愛犬家殺人事件』のパステーシュ?」




 過日、新宿の映画館で、映画『冷たい熱帯魚』を観た。
 何の予備知識も無く、この映画を観た。
 従って、この映画が実際のどんな事件を元にしているか、まったく知らなかった。

 だが、開始早々、寂れた熱帯魚屋の一人娘が、スーパー・マーケットで万引きで捕まり、その両親が駆け付けると、そこには、同業者だという初老の男(でんでん)が居合わせ、その場をどうにか納める。
 そして、『いい若い娘がブラブラしているからこんなことになるンです。私の店で働くようになれば、心身ともに健康になります。そうしている娘さんたちは何人もいます。是非そうしなさい』と言うのを聞いて、“これは!!”と思った。
 これはあの事件をモデルにしているに違いない・・・。
 そして、これは、翌朝、近くに住む娘たちが、隊列を組んででんでんが経営する熱帯魚屋に出勤してくるシーンを目にした時には、確信に変わっていた。
 あの事件でも、幾人もの少女が犬舎の掃除係として雇われていた筈だしな・・・。

 その事件とは、『埼玉愛犬家殺人事件』・・・。

 『大阪愛犬家殺人事件』と、『埼玉愛犬家殺人事件』。
 この二つの事件は犯罪史上に残る事件なのだが、あまり人々の記憶に残っていないのは、この事件が、いずれもあのオウム真理教騒動、報道の渦中にあったためである。

 まずは、『大阪愛犬家殺人事件』。
 これは、非常に分かり易い事件だった。
 大阪在住の自称犬の訓練士という39歳のフリーアルバイターが、知り合いの獣医から犬の安楽死用の筋弛緩剤を手に入れたことからこの連続殺人事件は始まった。
 長野県の塩尻市に犬の訓練センターを作ると言い出し、出資者を募った。
 そして、実際に土地を買ったのだが、その土地は、結局、殺害した5人(出資金を返せと要求した者が4名、整地のアルバイトをさせたが、金を払わず、抗議した者が1名)分の死体を埋める為にしか役立たなかった。
 この犯人は、逮捕されるとあっさりと全面自供、死体も全員分が発見されて、ほどなく死刑確定。

 そしてこの事件の渦中、埼玉県でも、幾人もの人間が不審な失そう事件を起こして消えている愛犬家(ブリーダー)がいると、警察に情報が寄せられた。
 たしかに、これは大変にクサイ状況だった。
 ここに出入りしていて、姿を消した人間が、確かに何人もいた。
 だが、死体が無かった。
 日本の法律では死体が無いと、殺人罪が立件されない場合がほとんである。
 実際にはこの『アフリカ・ケンネル』の経営者とその資産家の妻が、何人もの出資者や、脅そうとした暴力団関係者を殺害していたのである。
 まずは邪魔な相手を犬安楽死用の薬物で殺害し、深夜、風呂場で解体し、血は、大量の湯や水、バスクリンと共に流し、肉は細かく切り刻んで川に流し、骨は肉を徹底的にそぎ落とした(肉や内臓を一緒に焼くと凄まじい悪臭を放つという)後に、薪や廃油と共にに焼いて骨粉にし、道路脇に撒いて済ませていたのである。
 警察の事情聴取を受けても、この経営者とその資産家の妻は、知らぬ存ぜぬを通していたという。
 死体は透明(完全消滅)にしてある、殺人罪で訴えられるものなら訴えてみろ!というつもりだったのだろうが・・・。
 だが、死体処理の手伝いをさせられていた、店の従業員が落ちた。
 経営していた犬舎を倒産させ、家族と別居中のこの男は、商売の基本を学ぶ為に『アフリカ・ケンネル』で働き始めたのだが、死体処理の手伝いばかりさせられ、しかも、やがては自分と家族も透明にさせられるのではないかという怖れを抱き始め、全面自供を始めた・・・。
 その自供内容に従って警察が河川の調査を続け、やがて、被害者のひとりの腕時計と骨の一部を発見、この経営者夫婦の、殺人罪での起訴を決めた。
 その後、この夫婦の死刑が確定、元従業員は死体遺棄罪で収監されるも、三年以内に出所している。

 この映画『冷たい熱帯魚』では、でんでん演じる経営者が、この『透明』手法をそのまま踏襲、リアルに酷薄に、かつ極めてユーモラスに演じている。
 欲を言えば、肉片を骨粉をバラ撒いた後に、大雨を降らせて欲しかった。
『いいかッ。このオレが死体を透明にした後は必ず大雨が降るンだッ。このオレには天運が付いているんだ。だから、絶対に捕まったりはしないッ!』
 そう断言させて欲しかった。

 映画『冷たい熱帯魚』はずっと現実の事件をなぞった作りの内容だったが、ラストが違う。
 ラスト近く、最後の最後のこの店員は反撃し、経営者のでんでんを半殺しにし、その資産家の妻に、夫の殺害と解体を命じ、警察に通報した上で、解体を終えた資産家の妻と、自分の妻を刺殺し、その後、自らの頸動脈を切断して自決する。
 そして、たった一人生き残ったその娘はそんな状況の下で乾いた笑い声を出し、そして、自分の父親の遺体を見降ろしつつ、信じられない一言を言い放つ・・・。
 こんなシュールな終わり方も悪くないのだが、現実の事件にもっと忠実な作りをしても良かったのではないかと思う。
 むろん、ラストは多少変えても構わないのだが・・・。

 そもそも、犬舎を熱帯魚屋に変える必要があったのだろうか?
 これはやはり、ヴェネチアに出品するに際し、愛犬家が多い欧米人の感情を考えて変えたとしか思えない。
 ここは、現実の事件として、殺人狂ブリーダーの事件として、リアルさを前面に押し出して行った方が良かったのかもしれない。
 もし、その手法で正式出品したとすれば、『13人の刺客』が届かなかった賞に届いたかもしれないと思うと残念でならない。 

閉じる コメント(6)

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事実に基づいて作られた映画なのですね。
人間って恐ろしい・・・・。

2011/2/6(日) 午後 2:28 ゆうこ つれづれ日記

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私は 熱帯魚がらみの事件 かな と思ってました 複数の事件の中の一つなのか否か

2011/2/6(日) 午後 10:20 [ sat*a*a914*101*01 ]

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ゆうこ様。
コメント、ありがとうございます。
映画の中で“透明”にされたのは、同業者の中年男性と、ヤクザとその運転手(兼ボディガード)の3人だけですが、実際には中年女性も“透明”にされています。
“透明”にされたのは、延べ34人とも、48人とも、99人とも、148人とも言われています。
日本の犯罪史上、最も凶悪な事件とも、最凶の犯人とも言われています。
この事件のイメージを薄れさせてしまったオウム真理教の罪は大きいと思います。

2011/2/7(月) 午前 9:32 [ iintyou ]

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sat様。
コメント、ありがとうございます。
劇場前の説明には、ある凶悪事件とそれ以外の複数の事件を参考に制作された映画であると書かれていましたが・・・。
委員長(iintyou)の知る限り、80パーセント以上、『埼玉愛犬家連続殺人事件』を基に作られている映画です。
無論、それ以外の事件を参考にしているのかも知れませんが・・・。

2011/2/7(月) 午前 9:44 [ iintyou ]

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こんばんは

これは
事実なんですね
現実にこんなむごい事件があってたなんて
驚き〜

オウム教の陰に隠れていたんですね
事実は
小説より奇なり
とは
良く言ったものだわ〜^^;

傑作ポチ

2011/2/9(水) 午後 8:55 nobu

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nobu様。
コメント&ポチ、ありがとうございます。
確かに、こんな事件が現実の日本であり、しかも、あまり人に知られていないというのは、驚きです。
オウム真理教事件の影響もありますが、この頃から、日本は何でもありの時代に突入してしまったのかもしれません。
ちなみにこの従業員が、無理矢理、仲間に引き入れられたのは、廃業した無人の犬舎が山の中にあり、新しい死体処理場として利用するのに最適の立地条件だったからだそうです。
でも、“透明”にされなくて本当に良かったと思います。

2011/2/10(木) 午前 0:08 [ iintyou ]

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