尿管結石 2
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尿管結石 2 続き
5分で病院についた。タクシーの運転手さんに、750円(歩けば10分)わたして、
車から這い出る。運転手さんも見守ってくれている。
いつもは素通りするその病院が天国の門に見える。
もうまっすぐ立っても座ってもいられない。
下腹部への圧迫を避けるため、ズボンもまともに上げていられない状態だった。
看護婦さんがでてきて、「あ、お電話の方ですね。」
おお天使の看護婦さんが!!早くお救いを!
「では、ここにお名前とご住所をご記入ください」
・・・あくまめ。
震える手で、書きなぐる。だれだ、こんなに画数の多い名前を俺につけたのは!
俺の息子の名前は決まった、「一(はじめ)」だ!
さあ、これでやっと天使のお医者様が、と思っていたら、またその悪魔の看護婦さん。
「ハイでは、これでお熱を測ってください」と悪魔の笑みをうかべて白い棒(体温計)を持ってきた。
その3分間の長かったこと長かったこと。
でもこれで40度ぐらいの高熱なら恰好がつくな、など朦朧とする頭で考えながら、
高周波の悲鳴を上げつつ、暗い待合室で独り耐えること3分。
ピピピ! いざ!
36度2分。
思いっきり平熱である。
なぜかちょっと恥ずかしい。
この看護婦さん、ぼくを辱めるために嫌がらせをしているのだろうか。
(すでに痛みで人格も崩壊し始めていたようだ)
そこへ寝起きのお医者さま登場。
問診をして、レントゲンをと言われたものの、レントゲンのために立っていることも、腹部を伸ばすこともできない。
気がつくと、看護婦さんが3人に増えていた。若い方もいらっしゃるようだが、
人間あそこまで痛いと、本当になりふり構わなくなることが初めて分かった。
少しでも痛みの軽減を求めて、求めるものはすべて言う。
「クーラーを消して!」
「電気まぶしい」
「はきます」
「むりです」
そこでまず強力な鎮痛剤を入れてもらい、少し効いてからレントゲンを撮って、採血、採尿をした。
もしも、全裸になったら、この痛みがほんのちょっとだけ、楽になると言われたら、多分、まったく躊躇せず、脱ぎ捨てていただろう。
診断は、尿管結石。
「食あたりかと思ったのですが、苦しみ方をみてて、多分と思ったら、立派な血尿ですねえ。多分石でしょうねえ。打つ手はないんで、帰って、水をたっぷり飲んでください」と、飄々と説明してくれる。
こちらもやっと鎮痛剤が効いてきて、思考も理性も戻ってきた。
「はあ、っていうことは、まだその石、「いる」んですね」
「ま、そのうち、おしっこの時に『から〜ん』ってでてきますよ」
「いつごろでしょうかねえ。」
「人にもよりますが、ま、出るときゃ、出ますって。安心してください」
「(・・・安心できるか!)出るときは、やっぱまた痛いんでしょうねえ。」
「その時のために、お薬出しておきます。その「コンサート本番」とやらでなったら、あきらめてください」
こんな医者も、有事には天使に見える。
てくてく歩きながら、朝4時過ぎに一人帰宅。
まだ奥のほうで何かがずきずきしているのが分かるが、鎮痛剤のおかげで、
歩くことも考えることもできる。
普通に息ができるって何て素晴らしいんだ、と明けの明星を見ながら幸せを満喫した。
しかしその帰路にいろいろ考えた。
本当に痛かった。だから、本気で求めた。(この場合は、痛み除去だが)
では、はたして僕は、これほど真剣に西南学院で何かを求めているだろうか。
現状にブツブツ言うが、自分の求めることにたどり着けない現実に、「本当に痛みを感じているのだろうか」
本当に痛みを感じている人間の言葉の迫力は、桁が違う。自分でそう思った。
生きるか死ぬか、の瀬戸際で何かを求めることをしなかったら、本当に人には通じないのではないだろうか。
本気である、ということと程遠い自分の現在の安穏とした生活を、心から恥じた。
その後、いろんなところで結石の話をしてみると、実は結構「結石仲間」がいることが分かった。
面白いことに結石さんとは、即座に仲良くなることができる。
あの痛みを共有していることが、なぜかものすごい連帯感を生むのである。
ある結石「未」経験者の一児の母と話をした。
「安積さん、本によると、それって、陣痛に匹敵するほどの痛みらしいですねえ。」
「らしいですねえ。でも、女性はすごいな。あんな痛みを長時間こらえて、産むんですもんね・・・」
「なんてことないですよ。その後に、自分の赤ちゃんをこの手に抱いた時、そんなの忘れちゃいますよ。」
・・・しかし僕の結石はせいぜい『トイレでから〜ん』である・・・割に合わない。
のちに専門医に行ってみてもらった。
すでに石は膀胱に落ちているらしく、尿管には残っていなかった。
その医者もなかなか面白い人物で、
「一度結石ができた、ってことはそういう体質ってことですよ。ま、あきらめて下さい。もちろん予防はできます。でも石がとれなきゃ、アルコールがだめなのか、お肉がだめなのか、分かりませんから。」
「えっ、アルコールか、お肉なんですか?」
「他にもありますよ、」
「もういいです。聞きたくありません。でも2週間後の本番にまた・・、ってことはないですよね。」
「そんなにすぐできることはありません。
安心して下さい。
しっかり水を飲んで、お大事にしてください。
じゃあ、また二年後ぐらいに!」
二度とお会いしたくないものだ、と本気で思った。
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