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年収500万円で終わらないためには、どうすればいいのか
(Business Media 誠 - 11月23日 17:31)
日記を読む(488)日記を書く
2週間ほど前、金融機関の人事部に原稿を送った。私が書いた内容に誤りがないかを確認してもらうためである。テーマは「非正社員の正社員化」。この金融機関は、一定の条件を満たしたパートタイマーを対象に試験を行い、それに合格した人を正社員にしている。
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数日後、担当者から電話があった。
「原稿の中に“正社員にしていく”という言葉がある。このニュアンスを弱めてほしい。いまの景気を考えると、正社員にすることはなかなかできない。例えば、“正社員にすることを検討していく”といった具合に……」
会社としては、安易に正社員にはできないということだろう。前回の時事日想(※)でもご紹介したように、いまの労働法や民法のもとでは、正社員を解雇にすることは難しい。おのずと、経営サイドは雇うことに慎重になる。先行き不透明ならば、なおさらだろう。そこで、一定の条件をクリアすれば労働契約を解除できる非正社員を雇うことに重きをおきがちになる。
この金融機関に限らず、多くの企業が非正社員の比率を上げようとしている。
求人広告のアイデム 人と仕事研究所は、「今後の雇用に対するアンケート調査」の結果を発表した。それによると、正規・非正規雇用のバランスを今後どのようにとっていくかという問いに対し、調査対象の約1000社のうち4割近くが「非正社員比率を上げる」と回答している。非正社員の中で比率を上げたい雇用形態としては「パート・アルバイト」、比率を下げたい形態には「派遣社員」が挙げられた。
ここ数年、一部のメディアや政党は、非正社員の存在を格差問題の象徴として大きく取り上げてきた。こうした情緒的で心情的、感覚的な報道により、世論は非正社員の扱いに厳しいものになった。
しかし、経済の最前線にいる経営者の半数近くは依然として、「非正社員の比率を上げる」と答えている。双方の意識の隔たりは大きいが、実は正社員と非正社員の格差問題はこの経営者たちの意識を起点に考えていくべきだろう。そうでないと、問題は解決しない。
※「会社を辞めろ」と言われても……泣き寝入りせずに抵抗する方法
→http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0911/13/news002.html
●非正社員を増やそうとしているのは、労組
そこで、非正社員と正社員のあり方などについて長年にわたり、実証的な研究を続けるリクルート ワークス研究所主任研究員の豊田義博さんに、企業が非正社員の比率を上げようとする背景について尋ねた。まず、豊田さんが指摘したのが経済環境の変化である。
「かつては、日本経済が年を追うごとに成長していく右肩上がりでした。このころは、職場で働く社員の多数が正社員です。基本的には、終身雇用や年功給制度のもと雇用は安定し、賃金は一定のぺースで上がっていたのです。いまは経済全体も、会社の売り上げや利益も上げていくことは難しくなっています」
それを踏まえたうえで、会社員、特にホワイトカラーについて述べた。
「経済が成長し、市場が飽和すると、ホワイトカラーのあり方も変わっていかざるを得なくなるのです。例えば、営業部があり、そこでは部員がスキルによって、初級・中級・上級と3つのレベルに分けられるとします。
成長期には市場にはニーズがたくさんありますから、初級レベルの営業力でも売ることは難しくありません。そして、より多く売るコツを身につけていくことでみんなが上級者になり、やがては管理職になっていきます。
ところが、これがいまのような成熟期になると、簡単に売れるようなモノはネット通販などに限られてきます。あるいは、自らのスキルを売るのではあるならば、コールセンターでの対応くらいになります。中級程度のモノは、代理店の仕事などになります。それぞれのニーズに合わせてソリューションを提供する難易度の高い仕事は、プロフェッショナルの仕事と位置づけられます。
つまり、初級、中級、上級という構造が、以前のようにキャリアパスとしてつながっていないのです。上級な仕事以外は、仕組み化されたりアウトソースされたりしているわけです」
そして今後、ホワイトカラーは2極化していくと説く。
「この動きは早いスピードで、まさに加速度的に進んでいます。今後は、より高いパフォーマンス(実績など)を出すことができる人と、そうでない人とにハッキリと分けられていくでしょう。
前者になる人は、激しい競争により一段とその数は絞られるはずです。後者になる人は、主に単純労働をしていくようになります。これがアウトソーシングされたり、契約社員やパート、派遣社員などに託されることになるのです」
さらに厳しい現実を指摘する。
「後者の人たちを集めるのには、主に2つの方法があります。1つは、アウトソーシングすることです。アウトソース先には正社員もいますが、契約社員、派遣社員などを活用するケースが多く見られます。
もう1つが、 非正規社員の活用です。そこで働く非正社員を正社員化の登用試験などでを経て正社員にしていく方法があります。ただし、これは年収にすると300万円前後で、そこから昇給もさほどしない、いわば、ニュータイプの正社員です 。
このタイプの正社員を増やすことはスムーズには進んでいません。労働組合などが、旧来型の正社員の既得権が侵されることを警戒しているのです。労働組合の中には、非正規社員を組合員化していく動きが一部では見られます。しかし、“従業員の味方である”と言いながら、基本的には正社員雇用を守りたいという前時代的な意識から脱け出すことができていません」
このような背景があり、会社は1つめの方法をとらざるを得ないのだという。ここに、非正社員の比率を上げていく真相がある。このあたりを踏まえることなく、企業に「非正社員を増やすな! 正社員の比率を上げろ!」と叫んでも、それは空しい。
●職場の人とうまく関わる力こそ、養うべき
では、20〜30代のビジネスパーソンは、どのようにして生きていけばいいのだろうか。
まず、前提としておさえるべきは、ホワイトカラーが2極化される以上、ポストも減っていくということだ。
例えば、今後は、課長が“名誉職”になっていくだろう。つまり、部長や役員になる人の数はいっそう、減る。当然、年収は頭打ちになる。年収500万〜600万円でその後は上がることなく、定年を迎えていくことになるだろう。もちろん、それをもとに退職金も決まる。「低収入人生」は、この世代の多くにとって避けられそうにもない。
これらの待遇(ポスト)やそれにともなう収入などを考えると、非正社員とあまり変わらないととらえることもできる。私は1年半ほど前に、『非正社員から正社員になる!』(光文社)という本を書いたが、皮肉なことに今後は、「正社員から非正社員になる!」という流れになるのだろう。
豊田さんにこのあたりを尋ねると、こう答えた。
「ビジネスパーソンの平均値をとると、旧来の正社員のように年功的に給与が上がっていくものから、非正社員のように年齢が上昇しても給与はさほど上がらない可能性もあるでしょう」
最後に、豊田さんが述べたことは意味が深い。20代〜30代のビジネスパーソンには、大いに考えてもらいたい。
「これからは、プロフェッショナルな意識を持ち、仕事に臨むことがより強く求められます。そこで大切なことは、知識を身につけたり技術をマスターすることのみに注意を奪われないことでしょう。いまは、そのような風潮が強いように思います。
それは、先ほど述べたような、“2極化したホワイトカラー”の後者になる方向にアクセルを踏んでいるようなものです。知識や技術の陳腐化のスピードは、どんどん早まっていますし、グローバル化の流れの中で、ある領域の仕事が日本から消え去ってしまうことも起きています。特定分野の高度な知識や技術を持つことが、キャリアリスクを低減させるどころか、リスクを拡大していることにつながりかねないのです。
前者のホワイトカラーになり、高い収入を得ようとするならば、職場の上司や周囲の人とうまく関わる力こそ、養うべきでしょう。それを私は“社会性”と呼んでいます。例えば、ディスカッションやリーダーシップ、コミュニケーションなどが該当します。若い人が苦手としている分野でもあるので、これらの力を身につければ今後、活躍できる可能性が高くなると思います」
これは私の見解だが、職場の上司や周囲の人と関わる力が弱い人は、おそらく出世することは難しいだろう。誰かがその人の前に立ちはだかり、排除していくはずだ。それが、人間社会の縮図である会社というもの。
職場では、上司や周囲はまずは良質なコミュニケーションを求めている。技術や知識ではない。この優先順位を誤ると、あなたの会社員人生はきっと不幸なものになる。【吉田典史】
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