閃け!棋士に挑むコンピュータ 田中徹・難波美帆/共著
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閃け!棋士に挑むコンピュータ ![]() 昨年10月に、将棋の女子プロと将棋ソフト「あから2010」との間で行われた1番勝負。 普段、将棋にもコンピューターにも余り興味を持っていない方もご存じの方も多いかと思います。 勝負の結果は、「あから2010」の勝利で終わったのですが、本書はその勝負前から、対戦者の清水女流棋士と「あから2010」の開発者たちへのインタビューを重ね、対戦終了後、再度関係者に対して行われたインタビューを基にして書かれた本です。 と言っても、ただ単にインタビューをまとめただけの本ではなく、後半に人工知能やその開発におけるヒューマノイドロボットの必要性、創造物と創造者である人間の想いの関係についての考察が載っており、今後、質的変化を遂げてくるであろう人工知能やロボットなどをどのように受け止めればいいかについて考える、ちょっとした切っ掛けになる本でした。 尚、本書の著者は新聞記者(田中)とその友人の大学院の政治学の准教授(難波)の2人です。 ともに、コンピューターにも将棋にもあまり詳しくない2人ですが、それ故か、かみ砕いた内容となっており、(少なくとも先年10月に行われた勝負に興味をお持ちの方は)リラックスして読める内容ではないでしょうか。 以下、簡単に内容紹介します。 全9章からなり、それぞれ 1章は、将棋ソフト発展の歴史について。 1970年代から始まり、80年代には弱すぎて話にならなかった将棋ソフトが、90年代後半から段々と力をつけてきて、2000年代にはアマ強豪レベル、そして2010年、女子プロとの1番勝負に臨むまでの一連の歴史を簡単に解説。 2章は、将棋ソフトの技術面に対する簡単な解説 ・将棋は勝負している双方の情報が完全に相手側に伝わっている「完全情報ゲーム」。 ・完全情報ゲームは、「ミニマックス定理」によって、必勝方法が存在する事が分かっている。 ・しかし、将棋の必勝方法をコンピューターで探し出そうとしても、莫大な計算時間がかかり、現状、不可能。 ・新しい考えに基づいて作られた将棋ソフト「ボナンザ」が他の将棋ソフトに与えた影響。 3章は、対戦者の女流棋士・清水市代さんについて ・事前に「あから2010」有利と言われていた勝負にどのように臨んだのか ・負けると失うものが多い勝負をどの様に受け止めていたか。 4章は、「あから2010」の技術面に対する簡単な解説 ・4つの将棋ソフトをとりまとめる合議制について 5章は、今回の対戦の簡単な解説 ・解説陣が、いつの間にか「あから2010」がまるで人間であるかの様に、解説し始めた。 6章は、合議制が見せた"揺らぎ"について ・4つのソフトの合議制によって「あから2010」の将棋の指し方に"揺らぎ"が生じた。 ・その"揺らぎ"と1番勝負と言う事により、相手の考えをトレースして戦う「相手モデル検索」を使えない清水棋士 7章は、人工知能開発と将棋ソフトの関係について ・「あから2010」の開発者たちの一部は、「人間の知性」とは何かを研究する題材として棋士の知性を採用し、将棋ソフトの開発を行ってきた。 ・人工知能を人間の知性に近づけるには、人工知能にも人間のように「生きたい」と思う意志が必要。 8章は、ヒューマノイドロボットと人工知能開発の関係 ・「生きたい」と思う意志を持たせる事を目的に、人工知能にヒューマノイドロボットの体を与える。 ・人間は、危険なものが優しい形をしていると不安に思う。 9章は、今回の対戦が棋士、そして日本社会(特に子供たち)に与えた影響について ・清水女流棋士は、これまで悪い手だと思って捨ててきた戦法をきちんと検討するようになった。 ・小学校で今回の対戦が話題に 他にも、既にコンピューターに世界チャンピオンが負けたチェスの事などについても解説されており、「へ〜・・・」と思う内容もありました。 将棋に興味のある方やコンピューターに興味のある方はもちろん、その双方にあまり詳しくないと言う方も「コンピューターが将棋の女子プロに勝ったってニュース、実はこんな意味だったのね」と言う新しい視点を手に入れる事ができますので、一読されては如何でしょうか。 |




