救急救命士問題集
33−D31 2歳の男児。6時間前から39℃台の発熱と呼吸促迫を認め、母親が救急要請した。
救急隊到着時観察所見:意識JCS1。呼吸数50/分。脈拍140/分、整。体温40.0℃。児は虚脱状態で、吸気性喘鳴と流涎を認める。
搬送中の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。
1. 酸素投与
2. 口腔内吸引
3. 咽頭の観察
4. 母親に抱かせて観察
5. 頭部後屈あご先拳上
【解説】
急性喉頭蓋炎の病態と処置についての問題。2歳の男児が高熱と吸気性呼吸困難をきたしている。クループ症候群である。発熱が40℃に及び著しい頻呼吸に吸気性の喘鳴と流涎がみられ、全身虚脱もみられるので、緊急性の高い急性喉頭蓋炎である。本疾患はH.インフルエンザB型による感染が最も多く、2〜8歳に多い。仮性クループとは異なり、嗄声や犬吠様咳嗽を伴うことは少ないとされている。呼吸困難が進行すれば、自ら気道を確保するために、坐位で下顎を前方に突出させて、上気道を広げようとする特徴的な体位をとるため、これらの所見をみれば積極的に急性喉頭蓋炎を疑う。急性喉頭蓋炎は上気道狭窄が高度狭窄へと時間と共に急激に進行して行くため呼吸困難の増悪をみる。酸素投与だけだけでは症状が軽快しないことを覚えておく。咽頭の観察はぜひ実施したいが、実施して啼泣をきたせば、下気道の攣縮を招いて十分な呼気が得られないので、呼吸不全が一段と進行することを覚えておく必要がある。口腔内吸引も同様である。気道開通の有無を経時的に継続観察しつつ、男児が最も楽になる体位となるよう母親に抱かせて搬送するのがよい。ときに仰臥位で上気道閉塞を生じることがある。
救命士テキスト第7版P741、742
2)クループ,急性喉頭蓋炎
クループは急性喉頭炎のことである。ジフテリア感染によるものを真性クループと呼び,他のウイルスなどの場合を仮性クループと呼んだ時代があった。最近,ジフテリアをほとんどみなくなったため,ウイルス(とくにRSウイルス,パラインフルエンザウイルス,インフルエンザウイルスなど)で起こることが多く,クループ症候群と呼んでいる。これに対して,インフルエンザ拝菌で起こる急性喉頭炎や喉頭蓋炎はウイルスによるクループ症候群と区別される。区別されるべき類似の疾患として,気道異物,百日咳,気管支喘息などがある。 クループ症候群は喉頭〜声門付近までの上気道粘膜がウイルス感染により腫脹するために起こる吸気性の呼吸困難が主症状であり犬吠様咳嗽が特徴である。 これに対して,インフルエンザ拝菌による急性喉頭蓋炎では,喉頭蓋を中心に強い粘膜腫脹が生じ,クループ症候群よりも強い呼吸困難を呈し,低酸素血症による全身症状が出現することが多い(なお,アレルギー体質の小児が外気温の変化や乾燥などにより,クループ症状を繰り返すことがあり,「痙攣性咳嗽」クループと呼ばれている)。本疾患は感染症であるために,発熱を伴うのが普通である。急性喉頭蓋炎の場合には高熱(40℃ 前後)
を呈することが多い。吸気性呼吸困難と咳嗽,とくに大吠様咳嗽が特徴であり,夜半に増悪することが多く冬季に発生しやすい。患児は呼吸困難のために夜半1人で起坐位になって咳き込んでいることもある。急性喉頭蓋炎では呼吸困難が顕著であり, ときに窒息様に呼吸停上をきたすこともあり,症状が重篤で迅速な対応が必要である。吸気性呼吸困難のために起坐位になりたがる特徴があり,抱っこかファウラー位での搬送が望ましいO Sp02も低下していることが多く,酸素投与が必須となる。急性喉頭蓋炎ではその対応が遅れると,窒息死もしくは低酸素血症による重篤な脳障害を引き起こすことがある。迅速に病院へ搬送し,血液培養による起炎菌の証明と一刻も早い適正な抗生物質の投与が行われなければならない。これに対して,クループ症候群では呼吸困難がある程度強くとも加湿・加温酸素を投与すれば十分に酸素化が得られるために,後遺症が残ることはない。 |
