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※アニメ2期第4話「かたい、はやい、ものすご〜い」のIF後日談です。
シャリシャリ……
ただひたすらにジャガイモの皮が剥かれる音――静かになったハンガーには夕日が差し込み、ただその音だけが嫌に響く。
ジェットストライカーの一件で大量に送られたジャガイモを、バルクホルンはただ一人、ナイフを片手に無心で剥いていた。
「お、まだやってたのか」
閑静としたハンガーにシャーリーが現れる。どうやらバルクホルンの様子を見に来たようだった。
「……なんだ、お前か」
「なんだよその言い方は〜。……あ、さては宮藤に来てほしかったんだな?」
「ちがっ……! ど、どうしてそこで宮藤が出てくるんだ!」
「おっ、意外と図星みたいだな」
「っ……というよりいきなり現れて何だお前は! わざわざからかいに来たのか?」
「はははっ、悪い悪い、そんなんじゃないって」
シャーリーはそう笑ってごまかすと、バルクホルンと向かいの椅子に腰を下ろした。
「そういえば、礼を言うのを忘れてた、って思ってね」
「礼……何のことだ?」
「何って、あたしのこと助けてくれたじゃないか。規則まで破ってさ」
一瞬、バルクホルンの手が止まる。しかしすぐにまた、ナイフを動かし始めた。
「……別に助けたわけじゃない。あれはネウロイを倒すためだ」
「ははっ……あんたならそう言うと思ったよ。でも、ちゃんと礼は言っておく。ありがとうな」
「……そうか」
そう呟くと、またバルクホルンの手が止まった。そして、剥いている間ずっと傾けていた首をようやく上げて、微笑を携えてシャーリーと目を合わせた。
夕日のせいなのか、お互いの頬は薄く赤い色が浮かんでいる。普段よりも柔らかい表情に、シャーリーは少しドキッとしてしまった。身構えていたものがふっと解かれる。
「あの時は、その……助かった。お前がいなければ、どうなっていたか分からなかった」
「な、なんだよ急に、改まって……らしくもない」
「私の暴走を止めてくれたのは、お前なのだろう? ギリギリだったと聞いている」
「まぁ、確かに止めたけどさ……」
「だったら、私だってちゃんとお礼を言いたいのだ! だから、その……言わせろ」
「い、いいっていいって。あたしら、仲間だろ?」
「私は、感謝すべきことにはちゃんと感謝する人間だ。……素直に受け取れ」
「はは、なんだか照れるな……」
恥ずかしくて頭に手をやるシャーリー。ごまかすように話を逸らす。
「あ、あたしに感謝するのも別にいいけどさ、宮藤にもちゃんと言っておけよ。あいつ、相当心配してたみたいだし」
「ああ、そうだな。宮藤にも後でちゃんと礼は言っておく。だがお前には今回、特に迷惑をかけたようだしな」
「べ、別に迷惑だなんて――」
「命に関わることだったんだ。だからお前には感謝したい。ありがとう、シャーリー」
「バルクホルン……」
素直に感謝の言葉を受け、余計にシャーリーの照れが増す。言ったバルクホルンも恥ずかしいのか、目を合わせられない。
いつもは顔を合わせるだけで口論になる2人だったが、ようやく互いを認め合った瞬間にも見えた。
「へへっ……やっと、呼んでくれたな」
「……何のことだ?」
「あたしのこと、『シャーリー』ってさ」
「あ……」
指摘された途端、バルクホルンの顔が紅潮する。まさかそこを指摘されるとは思っていなかったようだ。
「べ、別に深い意味はない! ただ……いつまでも『リベリアン』ではなんだと思ってだな……」
「ははっ、嬉しいよ。ようやく名前で呼んでくれてさ」
「そ、そんなに嬉しいことか……?」
「ああ、そうさ。あたしも、今度から『トゥルーデ』って呼んでやろうか?」
「なっ……! それはミーナやエーリカが使ってる呼び方でだな……」
「いいじゃんか、あたしらの仲だろ?」
「ちょ、調子に乗るな、リベリアン!」
「おい、呼び方戻ってるじゃんか! せっかく名前で呼んでくれたのによぉ〜」
「う、うるさい! もう行け!」
そう言ってまたバルクホルンは皮を剥き始めてしまった。その反応がおかしくて、シャーリーはただ笑ってしまう。そして笑いながら、自分の上着のポケットを探った。
「……なんだ。まだ何か用か?」
「へへっ、手伝うよ」
シャーリーはそう言うと、初めから手伝うつもりで持ってきていたのか、ポケットからナイフを取り出す。
ウィンクしながら「ばっちり用意してきたぜ!」とでも言いたそうな表情に、思わずバルクホルンも笑みがこぼれた。
「また宮藤の肉じゃがも食べたいしな」
「……好きにしろ」
――静かになったハンガーに、シャリシャリと皮の剥かれる音が響く。
そこでは2人の大尉が、ただひたすらに、グロッキーになりそうなくらい、大量のジャガイモの皮を剥いていた。
「おいシャーリー、剥き方が雑だぞ」
「いいじゃんか、お腹に入ればどれも一緒だ」
「適当すぎる! だいたいどんな剥き方をすればこんな形になるんだ!」
「ははっ、また始まったよ……」
そこでは2人の大尉が、いつもと変わらずに口論を繰り広げているのだった。
どうもPAXです。読んでくれた皆様、ありがとうございます。
ほんの少ない文章ですけども、何かストパンで書いてみようかなぁ、と思って書いてみました。女の子同士で書くのって実は初めてなんですよね・・・。
冒頭にも記したとおり、2期第4話の軽い後日談みたいな感じです。実は小説版にも同じような時間の話があるのですが、まぁ二次創作なのでこれはこれでいいのかなと。
個人的に、2期第7話でお姉ちゃんが「ところでシャーリー」というように、シャーリーのことを名前で呼んでいたのが気になり、ここで書いてみた次第です。
ちょっとお姉ちゃんがツンデレすぎたかな・・・でも誰もいないところでは、これくらいデレっとしちゃうのかな〜とか思ったり。そういえば、劇場版もデレデレでしたね(笑)。
また小さいネタが思いつけば書こうかな、と思ってます。
よろしければ、またお付き合いくださいませ。
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